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【記事まとめ】組織コミットメント

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組織コミットメント関連の論文・書籍のレビューをまとめてみました。
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2021年11月の記事一覧

【読書メモ】「年齢が高い=組織コミットメントが高い」という神話の虚構:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(5/8)

第5章からは組織コミットメントに関する実証研究が扱われます。本章では、年齢や勤続年数との関連について、先行研究をレビューしながら存続的コミットメントから明らかにしています。 まず本書の執筆年を意識する必要があるでしょう。本書が書かれた2003年は、ネットバブルが崩壊し、日本のIT企業大手を中心にリストラが叫ばれていた時代です。つまり、雇用の流動化が本格的になり、終身雇用が実質的に終わりを迎えたことが多くの社会人にとってなんとなく感じられる時代でした。 こうした時代を念頭に

【読書メモ】組織コミットメントって何と関係するの?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(6/8)

本章では、組織コミットメントが何から影響を受け、何に影響を与えるのかについて、著者が行った定量調査からの分析結果が明らかにされています。社員の帰属意識を表す概念として組織コミットメントを著者は捉えており、「内在化要素、愛着要素、規範的要素、存続的要素で表される、個人の組織への帰属意識」(128頁)として定義しています。 組織コミットメントに影響を与えるもの組織コミットメントに影響を与えるものとして明らかとなったものは職場における人間関係です。本調査では上司との関係性と同僚と

【読書メモ】職種による組織コミットメントの違いとは?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(7/8)

第6章では組織コミットメントに何が影響を与え、何に影響を与えるのかについての考察がなされました。それを承けて第7章では、職種ごとに影響の差異はあるのかについて考察が為されます。 先行要因は職種によって大きな差異あり本章では、一般事務・販売・サービス、製造・加工、技術職、といった多様な職種ごとにどのような差異があるのかを分析しています。それぞれに差異がある状況なのですが、特に興味深いのは技術職において、同僚との人間関係がよくなると愛着要素が低くなるという逆相関が見られている点

【読書メモ】今後の組織コミットメント研究の展望とは!?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(8/8)

最終章では、組織コミットメント研究の今後に向けた展望が語られます。2003年という本書の出版年を鑑みれば、その後の実務面での展開と符合する箇所もありなかなか興味深い内容です。 ここでは三つほど目に留まったものを取り上げてみます。 ①規範的要素を深掘りせよ!?Meyerらの一連の研究によって、組織コミットメントは三次元から構成されるという考え方が一般的になっています。そのうちの規範的コミットメントは組織に居続けなくてはならないという義務感からくるものですが、こうした義務感自

【論文レビュー】日本企業における帰属意識研究のはじまり:関本・花田(1985)

最初の修士時代に院ゼミか学部ゼミで配布されて「ふむふむ」と読んでいた論文を、まさか12年後に真剣に読み返すことになるとは思いませんでした。三色ボールペンで書き散らしてあるものの、28歳の私の理解はそれほど悪くなかったようで、40歳の私は大変助けられています(笑)。 本論文は、日本における組織コミットメントあるいは帰属意識に関する草分け的な存在と言えます。こういう論文を読んでいると、学部時代はゼミ生間でニックネームで花田先生を呼んでいたのに、もはや裏でも先生としか言えなくなる

【論文レビュー】価値観の変化に対する企業人事の対応とは!?:関本・花田(1986)

昨日に続き帰属意識研究に関する古典的論文のレビューです。働く社員の帰属意識の変遷を踏まえて、企業が人事システムとしてどのように対応しているのかをキャリア・トリー法によって明らかにしています。 関本昌秀, & 花田光世. (1986). 11 社 4539 名の調査分析に基づく企業帰属意識の研究 (下). ダイヤモンドハーバードビジネス, 1, 53-62. 昨日のnoteはこちら。 (URL:関本・花田(1985)レビュー) キャリア・トリーから見える昇進昇格制度の運