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冬型の塊根植物たちが目覚める季節

こんにちは、金成コーデックスの三浦です。

私の育てている植物の約90%南アフリカ原産の多肉・塊根植物なので、暑い夏は地上部の葉や花は枯れ、土の中でじっと秋を待ちます。秋に動き始め春にかけて花を咲かして種をつけて、夏を迎えるころにまた葉を落とすというサイクルを繰り返します。

枯れた葉の間から葉を出すothonna retrorsa

そのため、このような一連の動きをする植物を「冬型」と表現することがあるんですが、日本の場合は冬の寒さが厳しすぎるので、正確な活動時期は春秋だと思います(※観測地点にもよるが南アフリカは真冬でも東京ほど寒くはならず・・・ゆるぷさんブログが詳しくまとめています↓↓)

若干暑さが落ち着く9月半ばに休眠状態だった冬型植物たちが動き始めるのですが、それを「植物が目覚めた」なんて言います。今年は例年になく暑い日が続いているので、植物たちの目覚めのタイミングが若干遅い気がしますが、ちらほらと新葉を出し始めた植物がでてきました。


1.我が家の植物の多くが「冬型」の理由

花芽を先に出したOthonna euphorbioides

海外の珍しい植物を育て始めてもうずいぶんと経ちますが、自分のモットーが「種から育てる実生栽培(みしょうさいばい)」なので、必然的に栽培鉢数が増えます(※一度に複数個の種をまく → 栽培技術の向上でなかなか枯れない → 鉢上げするたびに鉢数が増える)

管理する鉢の数が増えれば増えるほど置き場所が必要になりますが、冬が氷点下10度近辺まで下がることのある宮城県で栽培するには、無理ない程度に植物自体が栽培環境に適応して生き残ってくれないといけません。

tylecodon reticulatus

そのため、基本的に寒さに強い(と言われている)品種をメインに育てつつ、極力電力などを使わないで越冬~越夏が可能かどうかを自分の環境で試しています。電気代、灯油代を気にしなくていいほど潤沢な資金があれば大規模なハウスで栽培も可能ですが、そうなるともう趣味の範囲ではないですよね。

ただ、いきなり大きく高価な現地産の植物をいきなり購入するより、種から育てることを多くの方におすすめしたいので、どの程度まで寒さ、暑さが耐えられるのか、その管理方法はどのようなものかを、失敗を繰り返しながら私自身が人柱となって試しているわけです。

2.我が家のハウスの栽培環境(冬と夏)

私が育てている冬型の塊根植物といわれるものには、

  • Othonna/オトンナ

  • Tylecodon/チレコドン

  • Monsonia/モンソニア(旧サルコカウロン)

  • Pelargonium/ペラルゴニウム

  • Bulbine/ブルビネ

  • Albuca/アルブカ

  • Eriospermum/エリオスペルマム

  • メセン類

が多いです。これら以外にもたくさん寒い時期に成長する植物があるんですが、多くを占めるのが上記の品種たち。

私はキュレーションサイトとかで「冬は5度以下にならないところに置く」とか「半日陰」とか「夏は完全断水」とか言われても信じないので、自分の環境で試して、枯らして、その枯れた屍の上にのこる経験から判断するようにしています。そのためにたくさん種をまきます。

で、実際に言われているよりも過酷な環境とかにおいてみると、色々わかってくるもんです。

我が家のハウス内の環境は、2023年に限って言えば1番寒かった日と1番暑かった日のデータがしたのグラフです。(※switchbotで記録)

2-1.2023年でハウス内が一番寒かった日(1月27日)

1月末にぐんと冷え込む日があり、その日の最低気温の予報が-13℃でした。実際はハウス内はー9℃まで下がりました。若干寒さに弱いような品種は、霜よけ程度の効果のある暖房を使って寒さをしのぎましたが、毎年このくらいの寒さの日は数日あるので、これに耐えられない植物はあまりそだてられません。

昼間を除いて湿度が90%以上になっているのは、保温のためハウスを完全に締め切ると、ハウス内の温度と外気温の差で結露が発生するからです。

2-2.2023年でハウス内が一番暑かった日(8月19日)

8月20日に最もハウス内が高温になり、最高44℃まで上がっていることがわかります。ハウスはすべて開け放っていますが、やはり朝晩は湿度がかなり高くなっています。

当然、ハウス内よりも外の方が涼しいのですが、私が栽培している植物が自生する南アフリカの真夏の最高気温(ケープタウンやポートエリザベス)が25℃そこそこであることを考えると、日本の夏は暑すぎです。

3.この環境でも生き残る冬型塊根植物たち

結論から言うとこの環境でも冬型塊根植物は生き残りました(※もちろん枯れてしまったのも多数!!泣)

枯れ葉の間から新葉 pelargonium appendiculatum

真夏は50%以上の遮光をし、品種によっては棚下のさらに日光が当たらない場所に移動させました。水やりは2週間に1回程度、夕方の比較的涼しい時間にさらっとかける程度は行っていました。

真冬はハウス内に内張をして、霜よけの「暖太郎」と「YK-2」というハウスヒーターを併用し、天気予報で氷点下5度を下回るときのみ暖太郎を、氷点下8度を下回る予報の時にはYK-2を点火させました。2023年のYK-2の使用回数は3回のみです(燃費が悪く一晩で灯油タンクが空になるからあまり使いたくない)

暖太郎の効果について詳しく知りたい方は、下の私の植物ブログをご覧ください。

3回だけ使ったyk-2

ハウス栽培において植物が枯れたタイミングや原因は、気温よりも高湿度(蒸れ)による根腐れ、雑菌の繁殖、カビ菌や病気の蔓延で、それらの予防&対策が難しいなと感じました。

霜が降りなければ真冬でも用土が一時的に湿っているのは問題ないけど、空気中の水分が多すぎて土が乾かず、成長点から腐っていくことが多かった印象。次の冬(2024年)は、殺菌消毒をしっかりとして、すごく寒い日でもハウス内の換気を十分に行うようにしたいと思います。

もちろんこれは私の栽培環境における課題なので、資金力がある方ならハウス内に空気を循環させる大型のサーキュレーターなどを設置すれば解決するかもしれません。

寒さに耐えきれず、植物体内の水分が凍ったりした場合に多かったのがオトンナ(othonna)のこの症状。

成長点が黒くなったothonna arbuscla
黄色い樹液のようなものが出てる
同様の症状のothonna herrei
やはり成長点から樹液のようなものが出てる

成長点付近からダメージが現れるも、根に近い部分はかっちりとしていてまだ完全に枯れてはいない様子。今年の冬はオトンナでこのやらかしが多かった。

真夏は遮光と用土の配分、水やりのバランスで、細根が完全に死なないように様子を見ながら水やりも行っていけば、完全に枯れてしまうことは少ないように思います。

4.まとめ

寒さにも暑さにもびくともしなかった
othonna euphorbioides

こうやって実験をしつつ、あえて過酷な環境を試してみることでその植物の限界点みたいなものもわかってきます。枯らしてしまうことも多いですが、自分で試行錯誤しながら栽培を楽しむのが好きなので、自生地の環境を調べたり、蓄えられる経験も知識も格段に増えますよね。

ただ、あまり枯らしてしまうと精神衛生上良くなくて、かなり凹んで「もう植物見たくない!」ってなることもしばしばあるので、ほどほどにしようとは思っています。得た経験を無駄にせず、失敗を繰り返さなければいいだけのことだと思いますから。


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