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SPY×FAMILY(第2クール)

第1クールはかなりのブームを巻き起こしたのに、中3ヵ月で放送された第2クールに対してはネット上では“つまらない”という声が上がるようになってしまった。ツイッターで“スパイファミリー”と検索すると、“つまらない”という言葉がサジェストされるほどだ。

そういう意見が高まってしまった最大の要因は放送の仕方にあるのだと思う。

それは、第2クール2話(Season 1通算では14話)の放送時間が世界卓球の中継の都合で二転三転するというトラブルが発生したことで確信することができた。

勿論、大前提としてテレビ東京の編成に問題があったことは言うまでもない。前週の時点できちんと放送変更の可能性があることを告知していなかったことがそもそも悪いのだが、ニュースやスポーツなど生モノの都合でアニメやドラマなど完パケ作品の放送予定が変わるのは仕方がないことだ。だから、ここまでならテレ東は責められる必要はなかった。

しかし、この後がよろしくなかった。世界卓球の中継が決まったので、「SPY×FAMILY」の放送時間は通常よりも50分遅い23時50分になると告知したのにもかかわらず、試合が予定よりも早く終わってしまったために23時26分から放送してしまったからだ。
ニュースやスポーツの都合で放送開始時間が予定より遅れることはあっても、繰り上がることなんて滅多にないからね。

録画機器だって、オシてスタートする場合には対応できても繰り上がりの場合は対応できないものが多いから、録画に失敗した人が続出し、テレ東に対するクレームが押し寄せる結果となってしまった。

それに23時26分というのは通常の放送時間だと終了4分前だ。そもそも、世界卓球の中継による放送時間の変更を知らない人でなおかつ、EPGから録画予約していない人は(何しろ前週の放送では告知していなかった)通常の放送時間でスタンバイしたままだから、たったの4分間しか録画されていないことになる。

そりゃ、録画視聴派の人からすれば大炎上案件だよね。

普段、ネット民はNHKや他のキー局は反日だのなんだのと言って酷評する一方でテレ東に対してはマンセーしまくりというケースが多いのに、このケースでは酷評が圧倒的多数となってしまった。おそらく、普段のテレ東視聴者とは違う層、つまり、深夜アニメをリアルタイムで見たり、配信で見たりはせずに、録画したものを翌朝、家族みんなで見るような層が「SPY×FAMILY」のコアな視聴者層だということだ。

テレ東がネット民に受けが良い理由は大きくわけて2つだと思う。まずは、ネット民は経済ニュースが好きでテレ東は経済ニュースに特化した報道をしているからだ。そして、もう一つの理由はテレ東にワイドショーがないということだ。ワイドショーがないということは政権批判の場が少ないということだから、ネトウヨ思想にかぶれたネット民からすれば、安心して見られる放送局ということになるしね。


話をファミリー層に戻すが、土曜日23時台の放送というのは現在のアニメの放送形態からすれば一般(非オタ)にかなり歩み寄った時間帯だとは思う。でも、23時15分スタートの「鬼滅の刃 遊郭編」(2021年12月〜22年2月放送)が思ったほど話題にならなかったことからも分かるように、ファミリー層にとって23時台というのはアニメを見る時間ではないんだよね。

やっぱり、ファミリー層向けアニメというのは夕方もしくは土日の午前中に放送すべきだと思う。
そして、この「SPY×FAMILY」というのは内容的にも完全にファミリー層向けなんだよね。

「SPY×FAMILY」についてよく、スパイ版「クレしん」とか、特殊能力者版「クレしん」なんて言う人がいるけれど、本当、その通りだと思う。
基本は、「クレしん」や「ドラえもん」、「まる子」、「サザエ」のように、主人公一家やその友人・知人たちとの日常を楽しむ作品なんだよね。
まぁ、「クレしん」と異なる点は、主人公一家に大きなゴールが定められているということくらいかな。

スパイである父親のロイドが血の繋がらない娘のアーニャを名門校に通わせ、そこでステラと呼ばれる褒賞を8つ獲得してインペリアル・スカラーと呼ばれる特待生となれば、大物政治家との接点を得ることができ、戦争を阻止できるというのが大雑把なゴールだ。

レギュラー陣の日常生活を長々と描きながら、最終的なゴールに近づいていくという点では、「ONE PIECE」や「名探偵コナン」、「ポケットモンスター」に近いと言ってもいいかも知れない。

まぁ、「クレしん」や「ドラえもん」タイプにしろ、「ワンピ」、「コナン」タイプにしろ、クール制ではなく通年で放送されているし、いずれも長寿アニメとなっていることを考えれば、本作もそういう形態で放送すべきだったんだよね。


現在までに原作で発表されているエピソード数が少なすぎるから、アニメオリジナルエピソードでつなぐのにも限界がある。だから、通年放送は難しいというのは分かるんだけれど、やっぱり、分割2クールという深夜アニメ形態での放送は間違っていたのではないかと思う。

最近の深夜アニメは続編が作られるものも多いし、分割放送されたりするものも目立っているとはいえ、1クールで放送を終えるのものがほとんどだ。そのため、1クールの中の12〜13話でストーリーをまとめ、最終的にはオチをつけなくてはいけなくなっている。
そして、そうした放送形態が主流となったため、アニオタの方も考察しながらアニメを見るという習慣がついてしまっている。

でも、「SPY×FAMILY」って本来はそういうコンテンツではないんだよね。

第1クールではうまい具合に、アーニャが最初のステラを獲得し、ロイド・ヨル・アーニャの偽装家族が本当の家族のように絆を深めるところで終わったから、クール制アニメとしても違和感なく見ることができた。

しかし、第2クールでは全体に影響するストーリーとしては、冒頭3話を使って(Season 1の通算では13〜15話)、テロリスト撲滅という重大任務が描かれたりもしたが、それ以降はAパートとBパートで異なる単発のショートストーリーが展開されるパターンが増えてしまった。完全に「クレしん」などの日常系ファミリー層向けアニメの作りになってしまったということだ。

しかも、このクールでアーニャはステラを1つも獲得していない。
完全に考察しながら見るアニメではなくなってしまったんだよね。

一応、最終回(通算では25話)ではロイドが大物政治家と直接会話する場面が描かれ、シリーズ全体のストーリーが止まったわけではないとアピールしてはいたけれど、第2クール全体としては物足りなさを感じた人も多かったのではないだろうか。

15分枠で土曜日の朝あたりに放送すれば、Season 1で描いた分量でも1年分くらいにはなったし、それにアニオリを混ぜれば、もう少し延命できたと思うしね。


結局、ファミリー層に向けた作品なのか、サブカルやアニオタに向けたものなのか、どっちつかずになってしまったことにより、第2クールの評価が下がってしまったって感じなのかな。

というか、自分はアーニャやヨルの出番が少ない回をつまらなく思うようになっていたくらいだから、メインのスパイものストーリーよりも、家族の日常風景の方を楽しみにしている人の方が多いんじゃないかなという気がする。考察系の人はそうではないんだろうけれどね。

まずは何よりアーニャ、そして、その次にヨルの人気で持っているような作品だと思うしね。

順番はどちらが先かはアナウンスされていないけれど、予想通りSeason 2と劇場版が作られると発表された。
まぁ、ブームを終わらせないためにも定期的に続編テレビアニメと劇場版を発表していくことになるんだろうね。テレビは原作準拠で、劇場版はアニオリとかスピンオフみたいな感じでやっていけば延命できそうだしね。


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