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ゴーストバスターズ/アフターライフ

80年代っぽいテイストの作品が目立つようになって久しい。特に「グーニーズ」や「スタンド・バイ・ミー」などのジュブナイルものに通じる作風はホラー映画「IT」シリーズなどにも取り入れられている。

また、80年代に人気を集めた作品のリメイクや続編も目立つ。何度も公開延期となっているが、「トップガン」の続編は当時をリアルタイムで経験した人なら誰もが見たいと思っているのではないだろうか。

そして、その両方の要素をミックスさせたのが1984年からスタートした「ゴーストバスターズ」シリーズの続編となる本作だ。
80年代ジュブナイル映画のテイストだから、舞台もこれまでのニューヨークではなくオクラホマ州になっているし、主人公もオリジナル版の登場人物の孫となっている。

ただ、2016年に公開された女性バージョンの「ゴーストバスターズ」はオリジナル版のメンバーがカメオ出演しているうえに、そのうちの1人、ダン・エイクロイドは製作総指揮も務めていたのになかったことにされ、今回は80年代に作られたオリジナル版キャストによる2作の続編となっている。

最近、こうした評価の低い続編をなかったものにして、こちらが正当な続編みたいな売り方をする作品ってよ目立つよね。
「ターミネーター」シリーズは、最初の2本の人気が高く、3作目以降は作るたびに批判されてきたから、2019年の6作目「ニュー・フェイト」は1991年の「T2」の正当な続編といった扱いになっていたしね。

ところで、本作の監督がオリジナル版キャストによる最初の2本を手掛けたアイヴァン・ライトマン監督の息子、ジェイソン・ライトマン監督だというのも面白いよね。
親子で監督というのもすごいが、親子で同じシリーズを監督するってあまり聞かないよね。
「バトル・ロワイアル」の続編が深作欣二の死去により、途中から息子の健太が引き継いだというのはあるけれどね。

ジェイソン監督といえば、キャリア初期の頃に、「サンキュー・スモーキング」、「JUNO/ジュノ」、「マイレージ、マイライフ」といった賞レースを賑わせた作品を連発したことでも知られている。
「ゴーストバスターズ」シリーズ」や「ツインズ」などで知られる父親とは作風が違うだけに、彼が続編を手掛けたというのは驚きでもある。

実際に本作を見てみると、女性バージョンを含む過去3作品よりはコメディ要素は薄めになっていた。そして、まさかの泣ける作品になっていたので、やはり、監督による作風の違いというのは出ているのだとは思う。

まぁ、若者(というか半分は12歳くらいの子ども)による新生ゴーストバスターズは、主人公が女子でメガネっ子でオタクだから、フェミ的な視線やルッキズム批判の要素も入っている。
さらに、主人公と仲良くなる男子はアジア系だし、主人公の兄と仲が良い(というか恋愛感情を持っている)女子は黒人だ。
黒人メンバーはオリジナル版にもいたし、女性メンバーは女性バージョンで描かれていたけれど、今回はさらにアジア系差別やルッキズム差別にまで踏み込んでいるんだから、本当、「ゴーストバスターズ」シリーズって、元々、ポリコレな作品だったんだなというのを改めて感じた。

そして、カット割りも含めて80年代要素は満載だった。内容なんかは、オリジナルの「ゴーストバスターズ」のみならず、色々な80年代映画を想起させてくれた。
立ち退きを迫られる母子家庭は「グーニーズ」だし、世間からマッド・サイエンティストと呼ばれる博士を信奉する子どもは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だし、オールディーズが次から次へと流れるのは「スタンド・バイ・ミー」や「ダーティ・ダンシング」だ。

過去作品は人気アーティストの新録によるコンピ盤的サントラだったので、オールディーズ中心というのはちょっと物足りない気はするけれどね。

音楽といえば、シリーズ1作目のレイ・パーカーJr.による主題歌「ゴーストバスターズ」は全米ナンバー1 ヒットとなり、アカデミー歌曲賞にもノミネートされた。
この曲が去年のハロウィーン・シーズンにリバイバル・ヒットとなり、37年ぶりに全米トップ40ヒットとなったのには驚いたな…。
まぁ、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」に似ているとして訴訟沙汰にもなったけれどね。

そして、2作目ではRUN DMCによるラップ・バージョンの「ゴーストバスターズ」がサントラに使われた。もっとも、ヒット・チャートではこのラップ・バージョンではなく、当時人気絶頂だったボビー・ブラウンによるオリジナル曲「オン・アワ・オウン」が大ヒット(最高位2位)となったが…。

また、2016年の女性バージョン映画では、ウォーク・ザ・ムーンやフォール・アウト・ボーイ(ミッシー・エリオットとのコラボ)によるカバー・バージョンがサントラ盤に収録された。

今回は、新たなバージョンは作られず、レイ・パーカーJr.のオリジナル主題歌がエンド・タイトルに流れるだけだった(女性バージョンの時も使われていたけれど)。
新たな「ゴーストバスターズ」がないのはちょっと物足りない気はするが、でも、オリジナル版の主要メンバーが集結した感動的なラストやオマケのシーンを考えると、オリジナル版主題歌だけを流すというやり方で良かったのかも知れない。

というか、去年のハロウィーン・シーズンにこの曲がリバイバル・ヒットして全米トップ40入りしたのって、ハロウィーン効果もあるけれど、「アフターライフ」効果もあるのかな?全米公開はハロウィーンの数週間後だったしね。

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