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サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~

都内のほとんどの映画館が緊急事態宣言発令により休館となってしまったので、見たい見たいと思っていながら、これまで放置していたアマプラの配信映画「サウンド・オブ・メタル」をやっと見た。

正直なことを言うと、障害を抱えながら音楽活動を続けていくミュージシャンの生き様みたいなものを期待していたので、音楽映画として見ると非常に物足りない作品だと思う。

まぁ、聴覚障害児の子どもと交流する際に滑り台を打楽器のように叩くシーンとか、聴覚障害児たちの通う学校で太鼓の叩き方を教えるシーンとか感動的なシーンはあったので、もっと音楽を全面に出して欲しかったって気はしたかな。

ただ、音響映画としては大傑作だと思った。アカデミー録音賞ノミネートも納得。
主人公の主観で描かれているカットではくぐもった音や無音になり、傍観の時はクリアな音になっているといった音の使い分けは見事。
そして、主人公がインプラント手術を受けて補聴器をつけるようになってからでも、基本はノイジーな音なんだけれど、街中やパーティー会場など人の多いところでは不快な音として描写し、彼女の実家の室内ではノイズはあっても聞き取れる音声になっているとか、本当、音に対するこだわりが素晴らしい。
これは配信オンリーではなく、映画館で見たかったなと思った。たとえ、小さなスクリーンで最新の音響設備を導入していないミニシアターであったとしても、自宅でPCやスマホで見るよりかは遥かに音響効果を味わえると思うしね。

まぁ、ツッコミどころも多い作品だったけれどね。主人公の聴力が悪化しているのに、彼女が主人公にトレーラーを運転させるのはどうなのよって思ったしね。

あと、聴覚障害者の支援団体とか主人公が最初に診察を受けた際の医師とかが、聴覚を復活させる治療を受けることに消極的な姿勢を見せていたことにもモヤモヤしたものを感じた。
それって、ギリギリ健常者の生活をするよりも、障害者として生きた方が支援とかしてもらえるし、安定した生活が送れるよってことなのかな?

トレーラーの話に戻ると、今回のアカデミー作品賞にノミネートされた作品って、本作もそうだし、「ノマドランド」や「ミナリ」もそうだが、トレーラーハウス(キャンピングカー)暮らしの主人公を描いた作品が目立つよね。
「ノマドランド」はリーマンショック後だからオバマ政権時代の話だし、「ミナリ」はレーガン政権時代の話、そして、本作は明確な時代背景は提示されていないが、多分、どの作品もトランプ政権によって米国社会が分断され、女性やマイノリティが経済的苦境に立たされることになったって言いたいんだろうね。「ノマドランド」は女性、「ミナリ」と本作はマイノリティが主人公だしね。

《追記》ところで、ピンク・ジサツって何?

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