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ウーマン・トーキング 私たちの選択

本作「ウーマン・トーキング 私たちの選択」が公開されたことにより、日本では配信オンリーとなった「西部戦線異常なし」以外の全ての第95回アカデミー賞の作品賞ノミネート作品が日本でも劇場公開されたことになる。

そして、本作を鑑賞したことにより、第75回以降のアカデミー作品賞にノミネートされた作品で日本で劇場公開された作品は全て劇場もしくはそれに近い状態(試写会、映画祭など)で見たことになる。ちなみに日本では配信オンリー、Blu-rayスルーとなった候補作品は見ていない。

というわけで今回の作品賞ノミネートのうち日本劇場公開された作品をランク付けするとこんな感じかな。

「トップガン マーヴェリック」(22年5月公開)
「エルヴィス」(22年7月公開)
「フェイブルマンズ」(23年3月公開)
「イニシェリン島の精霊」(23年1月公開)
「逆転のトライアングル」(23年2月公開)
「アバター:ノー・ウェイ・オブ・ウォーター」(22年12月公開)
「TAR/ター」(23年5月公開)
「ウーマン・トーキング 私たちの選択」(23年6月公開)
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(23年3月公開)

本作は下から2番目となってしまった…。
つまらなくはないんだけれど、“で?”って感じなんだよね。タイトルに“トーキング”とあるようにずっと話しているだけ。しかも、ほとんどが納屋みたいなところで議論している場面だからね。舞台を見ているような感じかな。

まぁ、女性の権利がなかなか確立されないのは女性のせい、女の敵は女というのをこれを見て改めて感じたかな。
制作サイドはそういうメッセージは込めておらず、悪いのは男と言いたいんだとは思うけれどね。

結局、これまでのやり方を変えられない女性によって、男尊女卑社会は変わらないんだよね。名誉男性的に男に媚びている女性、たとえば、自民の女性議員なんかもこれに近いのかな。
その一方で、声高に“女性の権利ガー”とか叫び、男のやることを全否定するようなヒステリックなフェミ団体とかColaboみたいな勢力がいるせいで、男女格差をなくすべきと思っている男もどうでもいいや、フェミうぜぇと思ってしまうという面もある。
それから、本作に登場する女性たちは熱心なキリスト教信者だったけれど、結局、宗教って、キリスト教だろうと、仏教だろうと、イスラム教だろうと、それこそ、日本会議や統一教会のようなカルト思想の連中だろうと、男尊女卑的な考えを助長する要因になっているような気がする。本作はそのことを再認識させてくれたと思う。

あと、ツッコミどころもちょいちょいあった。男が怖くて頼みごとができないと言っておきながら、優男の教師には色々と命令しているのはよく分からなかった。あと、LGBTQとか障害者の要素を無理矢理入れ込んでいたのは蛇足だと思う。

まぁ、観客のミスリードの仕方はうまいよねと思った。不穏な空気が漂っているから、M・ナイト・シャマランとか、ジョーダン・ピール、アリ・アスターみたいな感じの作品なのかなと思ったりもしたがそうではなかった。てっきり、そういうオチの作品だから評価されているのかと思ったが違うようだ。というか、ホラー、サスペンス的な要素はほぼなかった。女性たちを暴行した者も出てこなかったしね(存在は言及されていたが)。その年度ごとに、黒人枠とかアジア人枠、反共和党枠、フェミ枠みたいなものがあって、今回のフェミ枠代表として本作が選ばれたみたいな感じなのかな?

ミスリードについて言及しておこう。色味を抑えたモノクロ一歩手前の映像で登場人物たちもクラシックな衣装を着ているから、電気とかガスが普及する前の時代の話かなと思ったりもしたんだよね。登場する女性たちのほとんどが文字の読み書きができなかったから尚更そう見えた。

ところがしばらくすると、登場人物が第二次世界大戦中の話をしだして、ここで、“?”となる。でも、大戦後の話でも田舎ならそうかもねと一旦は納得できた。

ところが、もう少し経つと、モンキーズが1967年にリリースした“デイドリーム・ビリーバー”を大音量で流しながら国勢調査を行う車両が村を通過する。先述した男性教師もこの曲を口ずさんでいる。なので、60年代末の話なのか、ヒッピーか何かの思想に取り憑かれて文明から離れた生活をしているコミュニティの話なのかと解釈し直すことになった。

ところが、その解釈をした瞬間、その国勢調査の車両からは“2010年度の国勢調査を実施しています”のアナウンスが…。

これには驚いた。とても、わずか10年ちょっと前の話には思えなかったからね。しかも、実話が基になっているとは…。
結局、この映画の評価されたポイントって、この衝撃だけなんじゃないかという気がする。

まぁ、それでも「エブエブ」よりは遥かに面白かったけれどね。あの作品を巡っては評価しない奴は映画を見る目がない奴という同調圧力が蔓延していたから、それがないだけ本作はマシってところかな。

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