この子は邪悪
南沙良って、ブレイクできそうなきっかけがこれまでに何度もあったのに、正直言って、なかなかブレイクしていないよねって思う。
2018年の2本目の出演映画(主演としては初)「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は高い評価を受けて賞レースも賑わせた。これ以降、ミニシアター系作品への出演が相次ぎ、シネフィルからの注目度が増した。
また、この年から始まったグリコ「ポッキー」のCMシリーズでは宮沢りえの娘役で話題となった。
2019年以降は単発ものを中心にテレビドラマへも出演するようになり、特にNHK作品への出演も多いことから、コアなドラマファンにも注目されるようになった。
また、この年の「居眠り磐音」をきっかけに拡大公開系の映画にも出演するようになった。
そして、2021年には性的な描写が話題となった(彼女が脱いだわけではないが)Netflix配信映画「彼女」や民放連ドラ初出演となるTBS日曜劇場「ドラゴン桜」などもあり、露出機会は一気に増えた。
さらに今年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも出演したことから、普段、連ドラや映画を見ない層にも顔と名前を知ってもらう機会を得ている。
そんなわけで注目度が増していることから、今年の出演映画本数は本作を含めて3本もある(オムニバス含む)。
でも、ブレイクした感は全くと言っていいほどないんだよね。
日曜劇場や大河ドラマに出てもブレイクしない。
コンスタントに毎年、出演映画が公開されているのにヒット作と呼べるものがない。
あえて言えば、「志乃ちゃん」がミニシアターレベルでのヒットになったくらいだ。
正直なところ、ミニシアター系映画やNHKドラマでの演技は評価したくなるが、拡大公開作品や民放連ドラでの演技は微妙に思えることもある。その辺がブレイクしきれない要因なのだろうか?通のみぞ知るという存在が彼女には向いているのかな?
というか、出演作品のほとんどで彼女は女子生徒役を演じているんだよね。本作でもそうだ(まぁ、不登校という設定だから制服は着ていないけれど)。まだ20歳だから、あと4〜5年はそういう役を演じられる年齢ではあるけれど、同い年(学年は1つ上)の清原果耶が早々と脱制服演技中心のキャリアになっているのと比べると出遅れている感は抱かずにはいられないと思う。
それにしても、今年の出演映画はオムニバスを除いた2作(「女子高生に殺されたい」と本作)がどちらもスリラー系というのはどうなんだろうか…。「志乃ちゃん」とか、「無限ファンデーション」はたまたま、役柄がハマっただけで、実際にそれ以降の出演作品を見ると、そんなに演技派でもないと思われるようになったということなのだろうか?
そんなわけで、若干の不安を抱えながら本作を見ることになったわけだが、彼女の演技はいつもの南沙良って感じだった。
やっぱり、演技派に見えたのは、たまたま、「志乃」や「無限」という作品が彼女の演技のしかたにハマる内容だったということなのかな。
ただ、精神科医の娘、しかも、精神的なトラブルを抱えて不登校という設定もあって、身につけている清楚な感じの衣装がどれも彼女に合っていて、改めて彼女のファンになってしまった。
ただ、内容自体はほめられたものではないよねとは思った。
「この子は邪悪」というタイトルだから、母親がニセモノだと気付いた主人公(南沙良)が実は被害者ではなく加害者なのか?
それとも、母親同様、ニセモノであることが判明した妹が裏で全てを仕組んでいたのか?
と深読みしてしまったりもしたが、精神科医の父親が“転生”した赤ん坊のことだったのか…。この赤ん坊、最後にしか出てこないのに、このタイトルはないでしょ!
そもそも、この赤ん坊は精神科医の子どもだよね。ワケわからん!
というかこの精神科医、催眠術を使って人を洗脳するだけならまだしも、人間同士のみならず、人とウサギの魂も入れ替えられるって意味不明だ!
スリラーでもホラーでもない。かなり、デタラメな作品だ。
玉木宏が精神科医役のオファーを受けたのが理解できない…。
ツッコミどころ、ご都合主義だらけの、なかなかのクソ映画だった。
それから、老婆の殺害シーンはきちんと見せないのに、児童虐待シーンははっきりと描いているのも(子役が本当に叩かれているように見える)コンプライアンス的にどうなのよって思った。そのくせ、“動物は傷つけていません”といったクレジットは出てくるし、なんだかよく分からない映画だった。
《追記》
何故、このようなスリラーものを見に来るようには思えない小学生女児とその親が来ているんだ?女性客が多いのは何故?と思ったが、ジャニーズが出ていたのか…。
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