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プロジェクトV

映画館で見たジャッキー・チェン出演映画は日本語版Wikipediaを信用すれば、多分、これがちょうど50本目となる。
おそらく、主演作品の多い俳優に限っていえば、邦画やハリウッド映画も含めて最も劇場で見た長編作品の多い俳優はジャッキーだと思う。
テレビ放送やビデオ・ソフトで見た作品も含めると、これに20本がプラスされるので、助演中心の俳優を含めても断トツでトップだと思う。

だから、自分はジャッキー・ファンと言っていいのかもしれない。でも、そんな自分でも2010年代以降で面白いと思ったジャッキー映画は数えるほどしかない(チョイ役でしか出ていない作品や日本劇場未公開のものは見ていないが…)。
声のみの出演の米国製アニメーション映画を除くと、面白いのは「ベスト・キッド」と「ザ・フォーリナー」くらいしかない。前者はハリウッド映画(米中合作扱い)だし、後者は英中米合作作品だ。要はアジアでというか、中国メインで作った映画にはロクなものがないということだ。

よく、ネトウヨが“中共の手先(犬)になったジャッキーは過去の人”みたいなことを言うが、ネトウヨ思想が大嫌いな自分でもそれには同意せざるをえないと思う。

本作でも、登場人物が“キャプテン・チャイナはキャプテン・アメリカよりすごい”とか言ったりするし、ストーリー自体も、空爆で身内を失った中東のテロリストによる報復でピンチになった米軍を中国人が救うというものだったりする。

さらには、UAEの警察当局の指揮官の妻が中国人だと分かるや否や、ジャッキー扮する主人公が“奥さんは美人でしょ?”とか言ったりする。

しかも、ラスト・シーンの舞台はUAEなのに、旧正月の新年を迎えるところで終わり、登場人物みんなで“新年おめでとう”と言ったりもする。
国策映画以外のなにものでもないと思う。

そして、酷いのは中国共産党のプロパガンダになっていることだけではない。ジャッキー映画の要であるはずのアクション・シーンもかなりのむごさだ…。

そもそも、主演であるはずのジャッキーのアクションが少ない。というか出番自体も多くない。アクションをしているのはほとんどが若手の共演者だ。

しかも、多くのジャッキー・ファンが期待するようなカンフーに根ざしたアクションは少なく、ほとんどがガン・アクションとかワイヤー・アクションだし、延々と演者の顔が見えないカー・チェイスも繰り広げられる。

さらには、ハリウッドで認められだした90年代後半から00年代初頭にはあれほど批判していたグリーン(ブルー)バック合成・CG処理も多用されている。

そして、挙句の果てにクライマックスは、戦闘機の爆破シーンだからね。誰もジャッキー映画にそんなものを求めていないよ。

エンド・クレジットを見ると、本作は中国では世界的に、特に日本では廃れてしまった3Dバージョンで上映されているようだから、スペクタクルなシーンが必要だというのは分かるが、そのために肉弾的なアクションが削られるというのは本末転倒な気がするな。まぁ、思想的にも肉体的にもジャッキーに昔のような映画を作るのは無理なんだろうね。

それにしても長いエンド・クレジットだった。きちんと測定したことはないが、ジャッキー映画史上最長(少なくともアジア製作作品では)なんじゃないかな?

エンド・クレジット中には、「カンフー・ヨガ」でも流れたようなダンサブルな曲、ほとんど演歌なジャッキーの歌うバラード、そして、スコア曲と3曲が流れたけれど、エンド・クレジットの長さもエンド・クレジットに流れる楽曲の数もハリウッド作品みたいだったな。 
それだけ、CGやVFXが多用されているからスタッフ数が多いってことなんだろうけれどね。

文字関連ついでに言うと、日本語字幕も結構酷いな。外国映画に関しては、“さん付け”の台詞ってのは意味があるんだから、それを訳さないのはダメだよ。文字数の都合で省略しているのだとしたら、全部呼び捨てにすればいいものの、所々、“さん付け”のところがあるから整合性が取れなくなってしまうんだよね。字幕翻訳者はそれで、キャラクター設定やストーリー展開を変えてしまっているってことをきちんと理解して仕事して欲しい!

それにしても、ジャッキーとスタンリー・トン監督のコンビというのは香港映画でありながら(全米公開版は再編集されてはいるけれど)、全米興行収入ランキング1位を記録した「レッド・ブロンクス」や米国では「スーパーコップ」のタイトルで公開された「ポリス・ストーリー3」という90年代の作品で伝説を作りあげたけれど、最近はどちらもイマイチって感じだな…。

本作の一番良かったところは、ヒロイン的存在の女優が可愛かったことくらいかな。まぁ、台詞がいかにもアフレコしましたって感じになっているのは気になったけれど。

それにしても、ジャッキー映画だからって、安易に邦題に「プロジェクト」をつけるのはどうかなって思うな。原題(英語)の「ヴァンガード」でいいじゃんって思う。それだと、カードゲームだと思われるとか余計な配慮をしたのか?

「プロジェクトBB」はまだ、中国語原題が「寶貝計劃」で“計画”が入っているからいいんだけれど、今回は無理があるよね。
関係ない内容なのに「ポリス・ストーリー」という邦題がつけられている作品に関していえば、ジャッキーが刑事役だから百歩譲って、容認するけれど、今回の「プロジェクトV」はありえないよね…。

「プロジェクトA」の時計台落下とか自転車チェイスくらいの名シーンがあればまだしも、これといった名シーンもないし、ギャグも冴えないしね…。せめて、ジャッキーが軍人役だったらつけてもいいけれどさ…。特殊な警備組織だからね…。あと、ジャッキーがほとんどスーツ姿ってのも違和感あるな…。


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