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愛なのに

ここ最近、日本映画界を巡る性暴力やパワハラなどの問題が相次いでいる。
そうした問題で糾弾されている監督やプロデューサー、俳優の顔ぶれを見てみると、性的・暴力的な描写で知られる者や、アート性や社会的メッセージの高い作風の者が多い。

性的・暴力的な作品で知られる監督やプロデューサー、俳優は普段からそういう思考の持ち主だし、思想の左右問わず攻撃的なメッセージを投げかける者はカメラの外でも攻撃的だと思われても仕方ないという事態になっている。

なので、本作を見るかどうかも非常に迷っていた。
予告を見た時に面白そうだと思ったが、R15+指定ということは性的な描写があるということだし、いくら、日本ではポリコレ思想が浸透していないとはいえ、中年男性と女子高生のロマンス、しかも、女子高生の方から仕掛けてくる色恋沙汰なんて、フェミ的な人たちからは猛批判されても仕方ない題材だと思うしね。

まぁ、日本のフェミ的な人たちが本作について批判しているように見えないのは、主演男優が瀬戸康史だからだと思う。
日本のフェミって、自分たちが好きなイケメン俳優やジャニーズ絡みの作品だと、明らかにポリコレ的にNGな内容でも絶賛するからね。
結局、日本のフェミって、女性の権利を守るのではなく、自分たちが嫌いなイケメンでないオタクが好きなものを叩いてストレス解消しているだけなんだよね。

そんな不安感を抱かせてしまう原因となっているのは、本作のメガホンをとったのが城定秀夫であるということだ。

城定監督は、ピンク映画やエロVシネ(ピンク映画版Vシネマ)で知られているし、一般公開作品でも「女子高生に殺されたい」のようなアンモラルな作品を撮っている。

文春を中心にしてキャンペーンが貼られている(本来なら、キネマ旬報がやるべきことだが、キネ旬は日本の政治家の批判はしても、日本映画界の批判はしないからね。クソだな!)日本映画界の性暴力・パワハラ問題で名前のあがった者たちと作風の面で共通するようなところもあるので、正直言って、彼の作品を見てしまっていいのだろうかという思いもあるのが正直な気持ちだ。

勿論、「アルプススタンドのはしの方」のような青春映画の傑作もあるが、他作品と見比べるとこれだって、単に夏場の薄着になっている若い女の子を撮りたいという下心で作った作品なのではないかと思えてしまうんだよね。

まぁ、城定作品の現場は園子温や榊英雄らの作品とは違うと信じたいけれどね。

それから、邦画派のシネフィルが絶賛する作品であるということも、本作を見ようかどうか迷う要因の一つだった。

こういう連中って、邦画大手3社の作品やハリウッド映画は全否定するくせに、大手3社以外の邦画に関してはやたらと絶賛するんだよね。しかも、自分が業界の人間にでもなったかのような勘違いをして絶賛する人間が多い。本当、こういう人たちって気持ち悪くて近寄りたくないしね。

とはいえ、今年の日本映画界を語る上で、おそらく城定監督は無視できない存在になる可能性は高いし(夏には、アンモラルな内容でこれまたR15+指定の「ビリーバーズ」が公開予定)、本作はイタリアの第24回ウディネ・ファーイースト映画祭で脚本賞を受賞している(よく知らない映画祭だが)。
そして、GW中ということもあり、映画館に行くタイミングもあった。

なので、恐る恐る鑑賞することにした。

脚本賞受賞作品ということだが、前半は説明台詞が多いのが気になった。
主人公の古書店主に恋する女子高生はいきなり、店の商品を万引きして店主につかまった後で告白したが、その際に告白する前からこの店に通っていたことが明かされた。
また、画面上では2人の会話シーンとしては2度目の場面なのに、そこではどうやら、最初の告白シーンとここまでの間にも告白されていて、その時に店主は“好きな人がいる”という理由で告白にお応えできないと言っていたことが明かされている。

でも、そういうのはきちんと画で見たかったなという気がする。

そして、気になるのはR15+指定となっていることだったが、店主の片思いの相手役さとうほなみと、その片思いの相手の婚約者の浮気相手であるウェディングプランナー役の向里祐香にそれぞれ複数回、ベッドシーンがあり、それぞれ乳首も見せていたが、ほんの短いシーンだし、ピンク映画をR15指定に再編集した作品と比べても全然、濡れ場は物足りないものだった。つまり、成人映画を一般映画にしたのではなく、あくまで、ちょっと性的な描写を含む一般映画として作ったということなのだろう。
それにしても、さとうほなみって、本業はミュージシャンなのに、本作にしろ、Netflix配信映画「彼女」にしろ、堂々と乳首を見せているのだから驚いてしまう。所属しているバンドが「ゲスの極み乙女。」だから、ゲスなことをすることには何の抵抗もないんだろうね。汚れ芸人みたいなものか?

まぁ、さすがに女子高生ヒロイン役の河合優実に濡れ場はなかったけれどね。女子高生の濡れ場なんかを描いたら、R15指定では済まないしね。

ただ、アラサーの古書店主と女子高生の恋愛を容認するような終わり方ってどうなんだろうという気もした。最近のこの手の作品って、「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」とか「恋は雨上がりのように」のようなオタク向け作品ですら、最終的に年上男性と女子高生ヒロインは結ばれないのに(まぁ、はっきりと別離したとは描いてはいないが)、本作はヒロインの両親に押し掛けられ、警察の事情聴取まで受けたのに、告白を受け入れる可能性もあるみたいな感じで終わってしまったからね。それまで、さんざん、告白を無視していたのはなんなんだかなという気がする。

この辺がAV、ピンク映画的発想なんだよね…。AVやピンク映画では嫌いな人ともセックスするのが当たり前だからね…。

というか、この内容で文化庁が支援していることに驚いた。脚本を読んでいないんだろうな。賞を取ったことがある人の名前があるくらいの感覚でOKしたのかな?

まぁ、河合優実に迫られたらそりゃ、好きになっちゃうよね。ショートカット女子に興味ない自分でも、彼女に興味を持ったくらいだしね。

ところで、作中で16歳になったら結婚できるとヒロインが言っていたが、本作の公開中に法律が変わってしまい、女性も18歳になるまでは結婚できなくなったんだよね。
脚本を書いたり撮影したりしていた時にはそこまで考えていなかったんだろうし、公開初日の時点では16歳でも結婚できたんだから、まぁ、仕方ないとは思うが。

あと、低予算の作品だから、エキストラを用意できなかったんだろうけれど、画面に映り込んでいるリアルな通行人はマスクをしているのに、作品側が用意した役者はマスクをしていないというのはちょっと不自然だよね。

とりあえず、本作がイタリアで評価されたのは、勿論、イタリアが恋愛体質の国というのもあるが、一番の要素は後半のキリスト教要素だと思う。ツッコミどころはあるけれどね。あんな開けっ広げな場所で告解、しかも、性的な告白をするなんてありえないとは思うけれどね。

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ちなみに今回、下北沢に1月にオープンしたばかりの駅直結のミニシアター「K2」で本作を鑑賞した。下町民の自分にとっては地方出身のサブカル厨が多い下北沢というのは苦手な町だ(これでも2歳までは世田谷区民だったんだけれどね)。

やっぱり、こういうカフェを併設しているようなサブカル臭のする映画館って苦手だな…。閉館したアップリンク渋谷をこぎれいにしたって感じだしね。だから、パワハラ体質のアップリンクを想起してしまい、良い印象を持てないんだよね。

というか、下北沢の町中って、マスクをしていない外国人があちこち歩いているし、日本人も駅前でビール飲んでいる連中がいるし、やっぱり、この町って好きになれない…。

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