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マルセル 靴をはいた小さな貝

実写とアニメーションが混合した映画は実写かアニメーションかという議論がたびたび起きる。

ディズニー映画「ファンタジア」のように冒頭やエンディング、あるいはエピソードの変わり目にちょっとだけ実写パートが出てくる作品というのはほとんどの人がアニメーションと認識していると思う。

このタイプの作品ではあるが、「新世紀エヴァンゲリオン」の旧劇場版「Air/まごころを、君に」のようにドキュメンタリー的な現実世界を映し出した実写パートがあるものや、「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」のように実写部分が現実でこれまで見せてきたアニメ部分は現実ではないと思わせるような夢オチ的・メタ的作品は賛否両論となることが多い。

米国作品では「LEGO® ムービー」シリーズや「ハッピー フィート」シリーズあたりがメタ的に実写パートが登場する作品だ。

「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」に混ぜられている実写部分もこれに近いのかな。

多くの人が実写とアニメの混合として思い浮かべるのは、ライブアクションの俳優とアニメキャラが共演するタイプの作品だろう。

ディズニーはこの手の作品を得意としていて、「メリー・ポピンズ」シリーズや「魔法にかけられて」シリーズ、過度なポリコレのせいで封印されてしまった「南部の唄」、ディズニー本体ではなくタッチストーン作品として発表された「ロジャー・ラビット」など映画史に残る作品を残している。

ワーナーも「スペース・ジャム」シリーズや2021年版の「トムとジェリー」といった作品でこの手法を取り入れている。

また、ディズニーの「ダイナソー」のように背景は実写でキャラクターはアニメーションというハイブリッド作品もある。

ストップモーション・アニメーションは実際に作られた人形や粘土を撮影していることから、日本のアニオタの中にはアニメ扱いしない者もいるようだが、このジャンルの作品の中にもやはり、実写の背景をバックに人形や粘土が動き回るというタイプの作品がある。
さらに、ストップモーション撮影したものをCG処理したりしたことにより、ストップモーションなのか、CGアニメーションなのかパッと見では分からない作品も増えている。

本作はストップモーションのキャラとライブアクションの俳優が共演する上に背景は実写というものだ。
アカデミー長編アニメーション賞の規定では作品の75%以上がアニメーションとなっていれば審査対象になるということだから、靴をはいた貝殻のキャラクター、マルセルがほぼ全編にわたって登場する本作は規定上ではアニメーション映画ということになる。

でも、「ダイナソー」や2021年版「トムとジェリー」よりもアニメーション感は薄いんだよね。

アカデミー長編アニメーション賞の規定では、ロバート・ゼメキス監督が得意とするモーションキャプチャー系の作品は対象外としているが、ぶっちゃけ、本作よりゼメキス作品や実写扱いの「アバター」シリーズの方がアニメーションに近い気がする。

技術的な話はこの辺にしておこう。

本作は元々、短編として発表されたものを長編化した作品だ。短編映画というのはワンテーマ、ワンシチュエーションで一気に見せるものだと個人的には思っている。だから、それを長編化するとどうしても間延びしたものになってしまうんだよね。

睡眠不足や体調不良、酒が残っている状態で見たら、間違いなく睡魔に襲われると思う。

長編ではなく、短編映画を3〜4本集めたオムニバス映画のような作りにしていれば、そうした間延び感は抑えられたような気はする。
もっとも、そうした作りにしていたら賞レースを賑わせる作品にはならなかったと思うけれどね。

というか、本作ってユニバーサル映画だったのか…。本当、ユニバーサル作品の日本での配給権を持っている東宝東和って、アート路線の作品や日本ではヒットしないようなタイプの作品っていとも簡単に手放すよね。


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