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デュラン・デュラン:ハリウッド・ハイ

多分、この映画は日本の80年代洋楽世代には受けないと思う。
ライブ映画のような宣伝がされていたが、実際はライブパートに入るまでのインタビュー・ドキュメンタリーパートが結構長いから、そこで、つまらないと思ってしまう人も多いのではないかと思う。
まぁ、デビュー40周年を記念したスペシャルライブなんだから、インタビュー・ドキュメンタリーパートがあるのは当然といえば当然なんだけれどね。

また、セットリストも彼等が好むものてはない。
彼等が好きな80年代前半のヒット曲で演奏されたのは、“ハングリー・ライク・ザ・ウルフ”だけだ。
“グラビアの美少女”も“セイヴ・ア・プレイヤー”も、“リオ”も、吉田照美でおなじみの“プリーズ・テル・ミー・ナウ”も、“ザ・リフレックス”も、“ワイルド・ボーイズ”もない。
1985年にロジャー・テイラーとアンディ・テイラーが脱退するまでの期間の楽曲を含めても、これに同年の大ヒット曲“007/美しき獲物たち”が加わるだけだ。 

ちなみに、今回のライブはハリウッドで行われた。だから、オープニング曲が“美しき獲物たち”になっているのは大納得だ。
この曲はタイトルからも分かるように、「007」シリーズの同名作品の主題歌だ。そして、意外かも知れないが、全米チャートで首位を獲得した「007」シリーズ関連楽曲はこの曲しかないんだよね。
そりゃ、映画の都で開催したライブなんだから、映画の主題歌をやるのは当たり前だし、しかも、その曲が彼等のキャリアの中でも、一、二を争う全米大ヒット曲になっているんだから、そりゃ、頭の大盛り上がりソングにするよねって思う。

ちなみに、自分は洋楽を本格的に聞き出したのが1985年ということもあって、デュラン・デュランの好きな曲というのは、85年以降の楽曲に集中している(ザ・パワー・ステーションやアーケイディアを含む)。

というか、今回のライブの様子を見ていると、米国人も85年以降のデュラン・デュランが好きみたいだね。

86年の“ノトーリアス”はラッパー、ザ・ノトーリアス・B.I.G.がサンプリングしたからリアルタイムでない世代にも浸透しているんだろうね。

90年代はオルタナやラップ、ヒップホップ・ソウルの時代となり、80年代的な音楽はダサいとされていたが(その後、復権)、彼等はそんな時期でも、“オーディナリー・ワールド”や“ カム・アンダーン”といったヒット曲を放っている。
日本では、80年代洋楽っぽくない、かといって、90年代のUKロックから比べると(当時で言うと、マニック・ストリート・プリーチヤーズとかスウェード、ブラーあたりかな)ダサいと思われたのか、この辺の楽曲の人気は低いが、個人的には大好きだ。

逆に95年にリリースしたカバーアルバム『サンキュー』からのシングル“ホワイト・ラインズ”は日本のラジオでは人気を集めたけれど、米国ではヒットしなかった。でも、このライブを見ると、結構、米国の観客はこの曲で盛り上がっているんだよね。

ストリーミングで過去曲を普通に聞く人が増えたおかげなのかも知れないが、リリース当初に人気がなかった曲でも、今ではライブで盛り上がる曲になっているということなのかな?

そして、このライブ映像を見て思ったことが2つある。

まずは、デュラン・デュランって、ロックバンドだったんだなということだ。

80年代のデュラン・デュランは、ポップとかダンスというジャンルで語られることが多かった。また、彼等のことをアイドルグループと思っている人も多かった。
でも、こうやって、ライブ映像を見ると、それはロックバンドのパフォーマンスなんだよね。
というか、ほとんど、アレンジを変えずにやっている80年代の曲もきちんと、ロックとして聞こえる。当時は、マスコミとか世間によって作られた枠組みで彼等のことを判断していたんだなということを反省せずにはいられない。

そして、もう1つ気になったことは劣化していないということだ。

まずはビジュアルだ。さすがに、アイドル扱いされていた80年代のままのルックスではない。でも、ボーカルのサイモン・ル・ボンなんて64歳とは思えないほど若々しい。
同じ80年代に人気を集めたバンドで言えば、ガンズ・アンド・ローゼズとかモトリー・クルーなんて完全にオッサンになっている。でも、デュラン・デュランはメンバー全員が、中年太りもしていないし、イケオジって感じなんだよね。

そして、それ以上に感心するのがパフォーマンスが劣化していないことだ。特にボーカルの劣化は酷いからね、ベテランバンドは。ボン・ジョヴィのジョン・ボン・ジョヴィとかデフ・レパードのジョー・エリオットとか怪しくなって久しいしね。というか、U2のボノもかなり怪しい。でも、サイモンは80年代の曲も最近の曲もきちんと声が出ているんだよね。

ということで、このライブドキュメンタリー映画は、デュラン・デュランを再評価できる音楽ファンにとっては非常に価値のある作品だった。

ちなみに自分が好きな彼等の曲のトップ5はこんな感じだ。

①美しき獲物たち
②オーディナリー・ワールド
③ノトーリアス
④ハングリー・ライク・ザ・ウルフ
⑤カム・アンダーン

何と、全て、今回のセトリに入っている!
なので、自分的には見て良かったと思える作品だった。
来日公演が実現したら見に行きたいと思ってしまったくらいだ。

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