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豆柴の大群『WE MUST CHANGE TOUR FiNAL』

豆柴の大群に関しては惜しいと言わざるを得ないグループだと思う。

固定ファンの複数枚買いで数値が“水増し”されているオリコンのチャートなんて意味はないと思う。ストリーミングやYouTubeの再生回数だって組織票は介在しているがフルコーラスではなくても楽曲が再生されたという事実は残る。
でも、特典目当てとかチャート工作のためだけに大量に購入されたCDなんて、まず再生されない。
再生用のCDはカップリング曲が異なるバージョンならまだしも、同じ収録内容なら1枚持っていれば十分だからね。

なので、オリコンの成績をもとにあるアーティストの人気を語るのはどうなんだろうかとは思う。

でも、ストリーミングやYouTube再生回数がほとんど伸びない女性アイドルグループの場合、ドルオタ以外にどの程度の人気があるかを知ってもらう指標がオリコンのチャートくらいしかないのも現状だ。なので、オリコンでの実績をもとに語らせてもらう。

2019年12月にデビューして以来、この3年間に彼女たちはコラボ曲を含めて8作のCDシングルをリリースしている。
このうち5作がオリコンのトップ10内に入っている。最新シングル“MUST CHANGE”だって初登場3位と健闘している。

同じWACK所属のBiSHの最新CDシングル“脱・既成概念”がトップ10入りを逃していることを考えれば大健闘と言っていいかも知れない。
まぁ、BiSHの場合は解散すると発表してから1年経つのに、いまだに解散する日がアナウンスされないことや、解散発表以降、毎月CDシングルをリリースするといった、いわゆる店じまいセール商法に嫌気を感じる人が増えたというのもあるとは思うが。

豆柴はアルバムだって、ミニアルバム含めた3作品のうち2作がオリコンのアルバムチャートのトップ10入りを果たしている。
アイドルのアルバムは売れないと言われていることを考えれば、かなり支持されていると言えるのではないかと思う。


にもかかわらず、豆柴にはオワコンというイメージがつきまとってしまう。

それは、あまりにもデビュー時のインパクトが強かったせいだと思う。
彼女たちの誕生のきっかけとなったのは人気バラエティ番組「水曜日のダウンタウン」で放送されたクロちゃんがプロデュースするアイドルグループを誕生させるという企画だ。
クロちゃんの公私混同した下心全開のメンバー選びは批判の対象となった。
それでも、デビュー曲“りスタート”はオリコンのシングルチャート初登場1位という幸先の良すぎるスタートを切ることができた。
リリースの少ない年末に発表されたということや、「水ダウ」人気のおかげもあるだろうが、何よりも支持された理由は、ドルオタが興味を持ちやすいアイドルとなっていたことにあるのではないかと思う。

お笑い芸人であるクロちゃんが作詞を担当しているということもあり、豆柴楽曲には変な歌詞がよく出てくる。
また、オーディションでクロちゃんが個人的な恋愛感情を抱いてしまったという理由でカエデを落としたこと自体、“何だそれ?”状態なのに、そのカエデがデビュー直後に正式メンバーとして加入したのも意味不明だった。
それから、ナオの未成年時代の飲酒問題発覚というスキャンダルもあった。

こういう要素だけを捉えれば炎上商法を得意とするいかにもWACK所属アイドルのやりそうなことにも思える。

でも、下品な言動はあっても、アイドルとしての限度はわきまえていて、BiSHのように人前でチ○ポと叫ぶことがカッコいいみたいな勘違いはしていなかった。

そして、歌詞は変でもBiSHのように変にアーティストぶったりするような楽曲もないし、衣装もWACKとは思えないほどカラフルだし、何よりも
ルックスが他のWACK勢とは異なり、きちんとアイドルらしいビジュアルなのも魅力だった。

だから、WACKが苦手なドルオタにも豆柴は受け入れられた。
それは、クロちゃんがゲスい人間ではあるけれど本人がドルオタだから、ドルオタの好みが分かっていて、これ以上ゲスいのはダメというさじ加減を分かっていたからだと思う。

だから、デビュー当初のままやっていれば、豆柴は秋元系、ハロプロ、スタダ以外のアイドルではトップクラスになるポテンシャルはあったと思うんだよね。イコラブだって、デビュー曲でオリコン1位は取れていなかったしね。

でも、その可能性はすぐになくなってしまった。それは、クロちゃんがプロデューサーではなくアドバイザーという立場になってしまったからだ。要はWACK主導になってしまい、クロちゃんらしい要素が減ってしまったということだ。メンバーの未成年時代の飲酒問題なんて掘り返すのはいかにもWACK的炎上商法って気がするしね。

それでも、豆柴が他のWACK勢のような炎上商法、下ネタ路線でいけば、従来のWACKオタには支持され、それなりの人気にはなれていたかも知れない。
しかし、相変わらず作詞はクロちゃんが担当するなど、中途半端にクロちゃん路線は残してしまったので、一般ドルオタから見てもWACKオタから見ても、何か違うなと思われてしまったのではないだろうか。

豆柴とBiSH。豆柴とAKBのユニット、それぞれの対バンライブを見たことがあるが、どちらの現場でも豆柴は浮いていたんだよね。
やっぱり、WACK所属だけれど活動方針は完全にクロちゃんに任せる独自路線にした方が良かったんじゃないかと思う。
立ち位置をWACK寄りにするか、クロちゃん寄りにするか、その判断をきちんとできなかったことが敗因では?

それから、炎上商法大好きなWACKはグループの解散とかメンバーの脱退を単なるネタ扱いしているフシがあるのも問題だと思う。

実際、解散して1ヵ月後に別メンバーで再始動したBiSとか、全メンバーを交換したGO TO THE BEDSとPARADISES、解散したEMPiREメンバーがそのままExWHYZとしてデビューとか、WACK信者でない一般ファンからすればふざけんなとしか言えないことを平気でやっている。

豆柴も新メンバーのオーディションを行い、成長の度合いが低いとみなされた現在のメンバーは新メンバー合宿オーディションに参加させられるという企画をはじめてしまった。

正直なところ、メンバーだってやってられないよね。

そんなわけで、いわくつきで豆柴の正式メンバーとなったカエデですら、本公演をもって、グループから脱退し、WACKも退所することになった。


そのカエデを含む現体制ラストライブとなったのが本公演だが、見ていて違和感を抱きまくってしまった。

まず、入場前に来場者に企画を説明するファン有志の実行委員会の態度が気になった。まるで、オーバー30の観客はうちら若いファンのやることなんて理解していないでしょみたいな見下した感じがしたからだ。

そして、その嫌な感じはそのままライブ本編にも引き継がれてしまった。

オープニングナンバーは最新シングルで現体制ラストシングルでもある“MUST CHANGE”だったが、大サビに入るまでシルエット歌唱というのはどうなのよって思った。
現体制ラストなんだから、現時点でのメンバー全員が揃っている姿を1秒でも長く見せるのがファンサービスなのでは?

まぁ、こういう演出になったのはその後、イントロ部分のちょっとした挨拶や煽りを除けば、40曲ほぼノンストップでパフォーマンスするためだったということがそのうち分かるんだけれどね。

現体制ラストだから1曲でも多くやりたい、できれば全曲やりたいという気持ちはよく分かる。
また、本公演をもって抜けるメンバーがいるんだから、どうしたってMCは湿っぽい話ばかりになってしまい、ライブの勢いを失速させがちになる。
だから、ノンストップで一気にたたみかけようようと思う気持ちも理解できなくはない。

アイドルの卒コンって、一般的に卒業するメンバーの演説と残るメンバーの花向けの言葉が延々と続き、それだけで30分くらい時間を食うこともよくある。
また、卒コンに限らず、アイドルとかアニソン系のライブには3〜4曲歌って、その後、ダラダラとMCという名の雑談や、どうでもいいレクリエーションコーナーが続くパターンが多い。
こうした構成って、ライブの流れを断ち切ってしまっていると思う。

だから、MCの分量を抑えること自体は否定するつもりはない。

でも、長すぎるんだよね。
ぶっちゃけ、この曲で本編を終わらせてカエデの挨拶が入ればきれいに締まるのにと思った瞬間が何度もあった。盛り上がって本編を終わらせる曲、お別れの場に向いている曲、どちらのタイプの曲も何度も出てきたからね。

せめて、洋楽アーティストのちょっと長めの挨拶レベルのMCくらい途中で入っていれば、もう少し緩急がついたのにとは思った。


それから、最後の曲の前に脱退するカエデだけが短く挨拶して、そして、最初の曲である“りスタート”を歌い、その後、記念撮影だけしてアンコールもなしという終盤の流れは良かったのだから、その後に新メンバー発表と新体制での活動情報まで告知する必要はなかったと思う。これは後日、別の場でやるべきだったと思う。

結局、運営は抜けるメンバーやファンのことは考えていないんだよね。ライブの取材に来たマスコミにネタを提供することしか考えていない。

カエデ推しの人にカエデのかわりに入るメンバーが発表される瞬間を長々と見せるのはかなり残酷なことだと思うけれどね。


しかも、この新メンバー2人は明らかに今いるメンバーと見た目に大差がないような人を選んでいるように思えた。
WACKオタはどう思うかは知らないが、一般のドルオタなら好きになりそうな候補者も何人かいたし、WACKオタにも一般のドルオタにも好かれるタイプではないかも知れないが、グループが変わったと印象付けられる候補者もいた。
新メンバー2人のうち、おそらく1人はカエデが抜けた分の穴埋めだろうから、現在のメンバーに近い雰囲気の人を選ぶのは分かる。
でも、そもそも新メンバー募集というのはMUST CHANGE、つまり、変わらなくては豆柴のオワコン的イメージを払拭できないという意図で始まった企画だと思われるので、少なくともカエデの脱退に関係なく選ぶメンバーは現存メンバーとの釣り合いは気にする必要はなかったのではないかと思う。

結局、水ダウ、クロ、WACKが組むとこうなってしまうんだろうね。この組み合わせによる第2のアイドルグループ、都内某所のメンバー選出を巡っても批判の声が出ているしね。

それにしても、豆柴のライブを見たのは約1年ぶりだけれど、豆柴って、いつの間にか人気面でも実力面でもナオ中心のグループになっていたんだね。今回のMUST CHANGEプロジェクトでも、ナオ以外の実力は執行猶予付き的な判断のようだしね。

豆柴は前途多難って感じだな…。

ところで、帰りの際にスタッフが仕切りにエスカレーターを使うなと叫んでいたが、そんなに本公演の会場となったヒューリックホールって、有楽町マリオンの他のテナントから嫌われているのか?まぁ、阪急やルミネ、丸の内ピカデリー、コニカミノルタプラネタリウム、朝日ホールなどとは客層が違うから、そうした施設の客からすればドルオタは来て欲しくない人たちなんだろうね。
ヒューリックホールの至るところにジャンプするなとか書いてあるしね。
じゃ、何故、マリオン内にアイドルを中心としたライブを開催するホールを誘致したんだよって感じだけれどね。

というか、このヒューリックって昔は日本劇場という都内最大級の映画館だったんだよね。
2000年代になって全席指定入替制になったり、23区内にシネコンがオープンするようになったことが影響して閑古鳥が鳴くようになり、最終的には閉館となってしまったけれど、80〜90年代は洋画大作を上映すれば、満員どころか立見も当たり前という大繁盛ぶりだったんだよね。
今回の豆柴のライブは満席だったけれど、映画ファンでもある自分はその光景を見て昔の日劇を思い出してしまった…。

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