最高の教師 1年後、私は生徒に■された
最高の教師 1年後、私は生徒に■された
アイドル界隈(オタク含む)に本作を評価する人が多かったのも納得だ。
基本的にアイドルやオタクというのはスクールカーストの下層に位置する(していた)者がほとんどだ。下手すると、そのピラミッドの中にさえ入れてもらえないことだってある。
だから、問題児が集められたクラスを舞台にスクールカーストやいじめの問題を中心に描くという内容の本作がアイドル界隈で評価されるのも当然ではある。
そして、勉強ができようと、スポーツができようと、イケメンだろうと、可愛いかろうと、美人だろうと、親が金持ちや権力者だろうと、スクールカーストの下層もしくはピラミッド外に追いやられるのが学校社会というものだ。その辺は本作でもきちんと描かれている。
全10話のうち6話までを第一章、以降を第二章とする構成になっていたが、第一章は基本、各話の終盤でいじめの被害にあったり、スクールカーストの下層に追いやられていた者がクラスで権力を握る連中に反旗を翻す長台詞を発する構成で、それが一種のカタルシスになっていたと思う。
中でも、頭の良い理系男子2人組が自分たちに睨みをきかせて言いなりにさせようとするクラスのボス的存在に対して、“自分たちのことをちゃんとハブれ”といった感じで言い返すのは爽快だった。
いじめたり仲間はずれをしたりする連中というのは、何故かいじめていることや仲間はずれにしていることをアピールしたがる。いじめや仲間はずれというのは嫌いな人に対してするものだが、そもそも、嫌いなら関わらなければいいのに、何故、わざわざ、いじめや仲間はずれという形で嫌いな人と絡んでくるのか意味不明だ。自分たちのことが嫌いなら本気でハブれ、関わるなという主張は多くのいじめ被害の経験者やスクールカースト下層出身者の共感を集めた。
こうしたいじめやスクールカーストの描写に関しては日本のテレビドラマでは最上位にあると言っていいほどリアリティのあるものだったと思う。
ただ、それ以外の面では高評価はできないかなとは思う。
まず、主人公の女性教師と一部生徒(はっきりと明示されたのは1人だが疑いのある生徒は他にもいた)がタイムリープして、人生をやり直すことになった理由がきちんと明かされていないのはどうかと思った。
細かいことを言えば、たった1年をやり直すだけで2周目と呼ぶことにも違和感がある。
また、4話までは1エピソードにつき1ヵ月分を描くという構成だったのに、5話以降はそうでなくなってもしまったのも全体の構成のバランスが悪いと思う。
大雑把に言うとこんな感じだ。
1〜4話:各話ごとに1ヵ月分のエピソード
5〜6話:文化祭が開催される9月から女生徒1人が転落死すること10月上旬まで
7〜9話:転落事故の真相解明(ずっと10月前半)
10話:10月後半以降の期間のエピソードにちょっとは触れるものの一気に卒業式が開催される3月の話に
作中で半年(正確には5ヵ月)があっという間に過ぎたと言っていたが、この間の描写をナレーションとインサート映像で済ませるのもなんだかなと思った。
それから、それぞれのキャストも無駄遣いといった感じがした。
同じプロデューサー、監督による「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」は事実上、永野芽郁を中心にストーリーが進んでいく構成だった。だから、出番が少ない生徒役のキャストがいてもそんなに気にはならなかった。
ところが本作は、「3年A組」の永野芽郁的ポジションになるはずだった芦田愛菜が第一章のラストで転落死し、離脱してしまう。
かといって、30人の生徒役全てに全10話で見せ場を作るのは無理だ。特に第一章はラストでその回のメインキャラに大演説させるという構成にしていたので、尚更、各生徒役の印象は薄くなってしまった。
AKB48の本田仁美やHKT48の田中美久なんかは本来なら夏のアイドルフェスやコンサートで忙しいシーズンなのに、本作への出演を優先したことにより、本業のアイドル活動を縮小せざるを得なくなっていた。特にみくりんなんて、HKTを長年支えてきた1期生・本村碧唯の卒業コンサートを欠席してまで、本作のスケジュールを優先していた。でも、きちんとした台詞があったのは数話だし、その回のメインキャラになったことは1回もなかった。近いうちにグループを卒業し、今後は女優業をメインに活動したいというなら下積みとしてありかも知れないが、現時点では卒業を発表していないし、女優志向も明らかにしていないみくりんにとっては何の得にもならない仕事だったと思う。モブキャラに毛がはえた程度の役ではドルオタ以外には認識されないし、自分の所属グループの先輩の卒コンに出ないのではドルオタからは“何様のつもりだ”と思われてしまう。本作に出たのは失敗だったと思う。まぁ、AKB卒業を発表した本田仁美に関しては、ある程度クローズアップされた回もあったし、多少のメリットはあったかも知れないが。金髪で探しやすいというのもあるしね。
そして、本作の一番の問題点は日テレドラマでよくあるHulu商法を懲りもせずにやっていることだ。
フジテレビのFODはまだマシなんだよね。あれは、先に配信があって、それを地上波で放送する際、テレビの放送枠(フォーマット)に合わせて数分カットするというやり方だからね。要は映画を地上波で放送するのと同じだ。
でも、日テレのHulu商法は違う。
最初に地上波で放送しておきながら、これは完全版ではありません。完全版を見たければHuluで見てくださいというやり方だ。これは、完全に地上波の視聴者をなめくさったやり方だ。未完成品を見せているわけだから、やっていることは限りなく詐欺に近い。
しかも、提供ベースにHulu版でしか流れないカットを見せるんだから悪質極まりないと思う。
普通、提供ベースの映像というのは、この後に見ることができる場面の予告編的扱い、もしくは、これまでに提示された場面の振り返りアバン的な存在だが、本作では地上波では流れないカットを見せるんだから、テレビ放送をなめているとしか言えない。
そして、例によって、地上波の最終回では全ての謎が解けない構成になっていて(教師を殺そうとした生徒の動機もよく分からなかったしね)、作品を理解するためにはHuluでしか見られない後日談(エピローグ)を見ろというやり方も相変わらずやっている。本当、いい加減にしろって言いたい。
日テレのドラマは見たくないと思う人が多いのはHulu商法のせいなんだよね。
スピンオフを配信オンリーにするのはOK。でも、後日談を配信オンリーにするのはダメ。
地上波で放送するのをカットされたバージョンにしていいのは先行して配信されている作品のみ。
そのことが日テレの連中には分からないんだよね。
※画像は公式HPより
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