見出し画像

でんぱ組“解散”の衝撃

でんぱ組.incは地下アイドルから地上にのぼり詰めて、それなりのポジションを築いた数少ない成功例の一つである。

勿論、そんなことを言うなら、AKBだって、ももクロだって最初は地下だよねってことになるが。ももクロのキャッチフレーズ“週末ヒロイン”って、よく考えたら、地下アイドルの中には本業(昼職や学業)の都合で土日祝日しか活動しないグループが多いが、それに似たようなものだしね。

その一方で、仮面女子やSAY-LAのようにオリコン上位を獲得しながらも、いつまで経っても地下のカテゴリーで語られるグループだって多い。

また、レコード大賞最優秀新人賞を受賞したFRUITS ZIPPERもそうだし、ふるっぱー同様、ちょくちょく地上波に出演している高嶺のなでしこもそうだけれど、この辺を地下と呼ぶのはどうなんだろうかと思う人も増えていることから、最近では、半地下ならぬ半地上という言葉を使う人も出てきた。
これまでは、地下アイドルにカテゴライズされるけれど、CD売り上げが良かったり、大きな規模のワンマンライブを開催できたりして、ネットニュースに出てくる機会が多いようなグループを半地下と呼んでいたが、さすがにレコ大を受賞したりするグループや、地上波露出の多いグループを半地下とは呼びにくいからね。元々、地下アイドルという言葉には蔑視的・自虐的ニュアンスがあるからね…。

まぁ、AKBやももクロに関しては大物プロデューサーや大手芸能事務所が絡んでいたから、スタートが地下的な活動でも地下扱いされなかったというのはあったと思う。

そういう意味では中途半端な半地下とか半地上と呼ばれることなく、地下から這い上がり地上アイドルになった数少ない成功例としてでんぱ組はあげていいのではないかと思う。でんぱ組以外だとWACKくらいかな、こうしたサクセスストーリーを歩めたのは。

ただ、WACKは稼ぎ頭だったBiSHが解散したことをはじめ、最近の同社所属アイドルに関してはあまり良いニュースはない。

地上アイドルだって、AKBは大量“リストラ”を敢行しているように見えるし、姉妹グループも卒業が相次いでいる。

地下アイドル・半地下アイドルでは現体制終了のニュースが常に出回っている。

そして、やたらと、金のことばかりを言う、正確に言えば、金を使わない奴はファンではないと明言するアイドルや運営が増えている。

アイドル冬の時代に再び突入と言われて久しいが、いよいよ、本格化してきたということだろうか。

おそらく、去年10月に強行スタートとなったインボイスが冬の時代化を加速させたのだと思う。アイドルにしろ、運営スタッフにしろ、年収1000万円を超えている人はほとんどいない。地上だって、そのレベルに達しているのは少数派だと思う。そして、ほとんどの人が個人事業主・業務請負・フリーランスと呼ばれる契約形態だ。

確定申告していない不届者はさておき、きちんとしている者なら、事実上、インボイス登録しないと仕事ができない状態になっている。
現在の経過措置の税率計算だって、かなりの額を徴収されてしまう。そもそも、個人事業主・業務請負・フリーランスと呼ばれる人たちは契約先からギャラをもらう時に源泉徴収されて税金を取られているのに、さらに、税込額に戻って、そこから消費税を取られるというのはおかしな話だ。
個人商店や町工場といった中小企業からきちんと消費税を取るというのは分からないでもないが、個人事業主・業務請負・フリーランスは対象外にすべきだったと思う。
もっとも、アイドルを含むクリエイティブ職の個人事業主・業務請負・フリーランスには何故か、ネトウヨをこじらせているのが多く、野党・リベラル・フェミ憎しの思いで、無条件で自民党を支持していたアホが多いので、こいつらアホかとしか思えないが。

自民なんて、どう見たってクリエイティブ職の味方をするような政党ではないんだよ。あいつらは搾取することしか考えていないんだから。なのに、性的・暴力的・差別的な描写を否定するという理由だけで野党・リベラル・フェミ嫌いを悪化させ、無条件で自民を支持してしまった。その結果がこれなんだよね。

結局、アイドル冬の時代の原因はインボイスを含む増税や物販高などで、アイドル側にもオタク側にも経済的余裕がなくなったことにあるのだと思う。

でんぱ組に関してはよくここまで耐えたというのが正直なところだろうか。

自分たちがオタクである、陰キャであることをうたった2013年リリースの“W.W.D”で注目度が増し、翌2014年には初の武道館公演を実施。
そして、2015年リリースのCDシングル2作“おつかれサマー!”と“あした地球がこなごなになっても”で一気に人気アイドルとなった。

前者ではMステ出演を果たしたし、後者は自己最高位となるオリコン2位を記録している(2018年の“プレシャスサマー!”でも達成)。

2017年はCDシングルも配信シングルもアルバムもリリースされなかったが、この頃からでんぱ組を巡る環境は悪化していたように思う。

2017年にはグループの顔的に思っている人も多かった最上もがが脱退。その後も2019年には夢眠ねむ、2021年には成瀬瑛美と中心メンバーの卒業が相次いだ。

この間に、虹色のコンキスタドールとの兼任という形で加入した根本凪も2022年に両グループを卒業。ARCANA PROJECTと兼任していた空野青空はでんぱ組の方だけを今年卒業。
兼任ではないが空野と同時期に加入した愛川こずえは22年に卒業した。

ほとんどのメンバーが体調もしくはメンタルを理由に脱退・卒業しているだけに運営サイドに問題があったのではないかとしか思えない。特にでんぱ組と虹コンの兼任なんて無理があるよね。

さらに、前身時代から残る唯一のオリジナルメンバーである古川未鈴が産休をとった。現役のアイドルの結婚・出産を批判できない風潮が高まり、表向きは歓迎され、これがでんぱ組よりも知名度の高いももクロメンバーの結婚につながったけれど、そのうちの1人が早々に離婚していることを見ると、やっぱり、既婚、ましてや母親の女性アイドルに金を貢ぐようなお人よしはいないってことだよね。

そんなわけで、でんぱ組は2025年頭(この言い方だと普通に考えれば、どんなに遅くても2月までだと思うが)にエンディングを迎えると発表することになった。解散ではなくエンディングという言い方をしているのは、最近の流行りなのだろう。少しでもネガティブな印象を持たせない戦略でしかないと思う。いくらグループ名は残るとは言っても、メンバーが全員卒業し、運営体制も変わるchuLaを現体制終了なんて言うのは無理があるように、エンディングというのも何だかなという気がする。

まぁ、BiSHの東京ドームでの解散ライブも全然チケットを取れなかったから、でんぱ組のラストツアーもチケット争奪戦になるんだろうね。元々、FCとかに入っていないとなかなか当選できなかったしね。

アイドルシーンの流れがこれからどう変わるのかを予測するという意味でもでんぱ組が解散するまでの3四半期くらいがアイドル業界にとっての過渡期になりそうだ。

金銭的な理由が一番大きいと思うが、昔のような根性論は通じなくなったってことだよね。そもそも、でんぱ組は地下出身だし、地下アイドルにはオタクや陰キャが多いからね。

現時点ではふるっぱーのようなフロアーでわかないファン、というかオタク臭の少ないファンが多いグループが生き残っているようだ。

昔ながらのオタクや運営はコロナ前を取り戻せ、取り戻せない現場はすぐに滅びるとしきりに言っているが(9時間1500円の運営とか)、現状を見ると、chuLaなどフリーク系もそうだけれど、中途半端にコロナ禍に非オタに寄り添ったところが自滅しているだけで、ふるっぱーとかiLiFE!のように、コロナ禍になって出てきた、ブレイクしたグループはそうでもないんだよね。というか、ファンを増やしている。

自然淘汰ってやつではないかと思う。

でんぱ組も確かに2015年に出したCDシングル2作は神曲だったけれど、あのレベルを維持するのは難しかったし、逆に初期の電波ソングのりが好きな人はこの2曲辺りは裏切られた感覚なのかも知れないが…。でも、古参をどこまで切るか、どこまで新規を優遇するか、そういうバランスがうまく取れなかったのが、でんぱ組が伸び悩んだ要因ではないかと思う。

他のアイドルにおけるコロナ禍でファンを取り込めたか否か、その時に取り込んだファンを優遇するか否かも同じことだと思う。

やっぱり、ターゲット層を明確にして思い切って切るというのも大事なのかもね。イコラブは元々、プロデューサーの指原莉乃経由で入ってきた老害ネトウヨオタクが中心だったけれど、今は彼等の居場所はタダ働きの広報カメラマンをさせられるカメコ席にしかない。ある意味、生き残り戦略としては正解なのだろう。

そうした取捨選択ができなかったグループが地上にしろ地下にしろ、コロナや物価高、インボイスなどといったここ4年ほどの世の中の動きについていけなくなっているんだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?