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ロン 僕のポンコツ・ボット

ディズニー配給のアニメーション映画なのに、ディズニー作品でもピクサー作品でもない。

かつて存在したOVA作品を中心に手掛けていた関連会社トゥーン・スタジオの作品でもない。

ジブリ作品の米国配給を一時期、ディズニーが担当していたようなパターンとも違う。

ティム・バートン関連の一連のストップ・モーション・アニメーションや、ロバート・ゼメキスによるモーション・キャプチャー作品「クリスマス・キャロル」のように他社製作作品の配給を担ったものでもない。

「ライアンを探せ!」なんて、動物キャラクターものだから、いかにもディズニーっぽく見えるけれど、あれも他社製作作品なんだよね。まぁ、音楽の使い方とかは、ディズニーっぽくなかったけれどね。

この「ロン」は冒頭の映画会社ロゴを見れば分かる通り、20世紀スタジオ作品なんだよね。
つまり、旧20世紀フォックスがディズニー傘下に入り20世紀スタジオになったことによって、20世紀スタジオが製作したアニメーション映画もディズニー配給になったということなんだろうね。

旧フォックスはアニメーションスタジオを1994年に始動させていて、その後、CGアニメーションに特化したスタジオのブルースカイに移行したけれど、そのブルースカイもフォックスがディズニー傘下になったことに伴って閉鎖されてしまい、現在はディズニー本隊とは別に、たまにアニメーション映画を製作する程度の存在になってしまったって感じなのかな。

フォックス時代のアニメーション映画というのは、初期の頃はドン・ブルース監督という米国アニメーション界の大物が手掛けた作品「アナスタシア」、「タイタンA.E.」なんてのを公開していたので、日本でのヒットの見込みがなくても何とか公開されていたんだよね。

ブルースカイになってからは、ディズニー(ピクサー含む)以外の海外アニメーション映画はなかなか日本ではヒットしないと言われている中、「アイス・エイジ」がヒットし、その流れで「ロボッツ」や「アイス・エイジ2」も公開された。

しかし、「ロボッツ」や「アイス・エイジ2」が思ったほどの成績を上げられなかったこともあり、世界的に大ヒットした「ホートン」や「アイス・エイジ3」は吹替版のみという規模を縮小しての公開になってしまった。
そして、これによってフォックスの日本側はアニメーション映画を公開しないという方針にシフトしていくことになった。

2011年の「ブルー」以降のフォックスのアニメーション映画はどんなに米国で大ヒットしようと、世界的に人気を集めようと、日本では劇場公開されなくなってしまった。「アイス・エイジ」シリーズの続編ですら公開されなくなった。
唯一の例外として公開されたのは、ピーナッツ(スヌーピー)シリーズ久々の映画作品「I LOVE スヌーピー」だけだ。

また、ドリームワークスのアニメーション映画の配給を2013年からフォックスが担当することになったが、これもフォックスが直接関わっているブルースカイ作品同様、日本での公開は見送られてしまった。
「カンフー・パンダ3」や「ヒックとドラゴン2」といったシリーズものまで劇場公開しないのだから、本当、いい加減にしろよなって感じだった。

その後、ドリームワークス作品は世界的にはユニバーサルが配給を担当することになり、これに伴い日本での配給が東宝東和になったことから(後にギャガとの共同配給に)、2本に1本くらいのペースで日本公開されるようにはなったが。

そして、フォックスがディズニー傘下になったことにより、旧フォックス系のアニメーション映画も日本で劇場公開されるようになった。

「スパイ in デンジャー」は劇場公開を予定していたものの、コロナの影響で配信スルーという形になってしまったが、本作は無事、劇場公開された。ブルースカイというスタジオは閉鎖されてしまったので、そんなに旧フォックス系の流れを組むアニメーション映画の公開はないとは思うが、無条件で劇場公開見送りという異常事態が解消されたことは、まずは歓迎したいと思う。

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作品自体について一言で言ってしまえば、下品になった「E.T.」みたいなストーリーで、異星人のかわりに「ベイマックス」の小型版みたいなロボットと交流するというベタなストーリー展開だから、まぁ、そういう作品なら感動するのは当然だよねといったところだろうか。

それから、下ネタ(しかも、ウンチとかパンツとか)が多かったり、暴力要素が多かったり、人種的なステレオタイプ描写があったりするのは、ディズニーっぽくないって感じはしたかな。
女性教師が胸に主人公の顔を押し付けるシーンなんて、今の米国で描写していいのかって思ったくらいだしね。

あと、主人公の父親と祖母が裏取引でロボット型デバイスのBボットを手にするところなんかも最近のポリコレ至上主義のディズニーからしたら御法度とも呼べる行為だろうしね。
フォックスはブラックユーモアにあふれたテレビシリーズ「シンプソンズ」なんかも作っていたわけだから(劇場版も作られた)、まぁ、このテイストはフォックス路線なんだろうね。

ところで、Bボットを開発した企業における悪役的存在がスティーブ・ジョブズっぽいんだけれど、米国ではアップルって悪の帝国イメージなの?

その一方で、主人公が移民一家だったり、ヒロインが褐色っぽい肌の色だったり、主人公たちと仲良くなる子どもが反ルッキズム的な女子やアジア系男子だったり、さらには主人公の家庭は父子家庭だったり(その母親、つまり主人公の祖母も同居してはいるが)というのは最近のディズニー本隊のポリコレ路線にも通じるものがあったりもするんだよね。

まぁ、実写映画の「フリー・ガイ」とかもそうだけれど、旧フォックス系のレーベルで発表する作品は、どこまでディズニーっぽい雰囲気を出すべきか、あるいは抑えるべきかというのを試しているんだろうね。

それにしても、同級生のほとんどが持っているものを持っていないとクラスで仲間外れになるというのは米国でも同じなんだね。

自分は決して裕福ではない家庭で育ったために、ファミコンを買ってもらえなかったから、小中高の頃は同級生の話についていけず、置いてけぼりになることも多かったが、そういうのをついつい思い出してしまった。

自分の頃はファミコンだったけれど、それが時代によっては、プレステだったり、携帯だったり、スマホだったりに変わるだけで、いつの時代にもそういうものはあり、それが本作ではBボットになったってことなんだろうね。

それと同時に、米国でも結構、友達がいない人って多いんだねというのを実感した。SNSとかで繋がっているだけの友人なんかは本当の友人ではないし、それどころか、主人公のように、形の上だけの友人すらいない子もいる。

結構、米国の児童・生徒・学生も日本と変わらないんだねというのがよく分かる作品だった。

それにしても、ロンが可愛いな!

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