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「娯楽映画の巨匠」リチャード・ドナー監督死去

確かにリチャード・ドナー監督はアカデミー賞の主要部門にノミネートされるような映画は撮っていない。
しかし、SFやアクション、ホラーといった娯楽映画ジャンルを見下すような人とか、洋画を見ない今の若者などを除けば、彼の映画にお世話になったことのない人はいないはずだ。

「オーメン」、「スーパーマン」、「グーニーズ」、「リーサル・ウェポン」、「3人のゴースト」、「陰謀のセオリー」などの監督作品。
「ロストボーイ」、「フリー・ウィリー」、「X-MEN」などのプロデュース作品。

40代以上の映画ファンなら、彼が世に送り出した作品を1本も見たことがないという人はいないのでは?

彼のフィルモグラフィの中で日本で一番人気が高いのは、「グーニーズ」だと思う。
“グーニーズはグッド・イナフ”という、突っ込まずにはいられない邦題の主題歌や、スピルバーグ製作総指揮作品という謳い文句とあわせて、あの映画の持つワクワク感は、今の40〜50代にとってはたまらないものだったからね。

去年、コロナ関連のチャリティと、映画の35周年を兼ねて、スタッフ・キャストがオンラインで開催した“同窓会”の配信ではお元気そうな感じだっただけに、あれから1年ちょっとで亡くなってしまったというのは驚きでしかない。まぁ、91歳だったということを考えれば、亡くなってもおかしくはないのかも知れないが。

ちなみに私が一番好きなリチャード・ドナー監督作品は「3人のゴースト」だ。

「ゴーストバスターズ」のビル・マーレイ主演で、VFXを使った大作だからということで安直な邦題にされてしまったが、これは、チャールズ・ディケンズの名作クリスマス文学「クリスマス・キャロル」の舞台を、80年代の米国テレビ業界に置き換えて映画化した作品だ。

この映画をきっかけにして、原作を読むようにもなったし、ゲスト出演していたマイルス・デイヴィスの音楽への興味も増していった。

そして、何本かの「クリスマス・キャロル」映画化作品を見たが、これより勝る作品はないと個人的には思っている。

本作は、当時の最新VFX、人気アーティストが集結したサウンドトラック(本作からはアニー・レノックスとアル・グリーンのデュエットによる“恋をあなたに”が全米トップ10ヒットに!)、仏頂面を得意とする人気コメディアン、ビル・マーレイといったきらびやかな80年代エンタメらしい要素が満載な作品だった。

その一方で、ホームレス問題が深刻化していた80年代の米国や、家族や友人、恋人との付き合いをなくさなければ成功できないマスコミ人間の悲しさなんてのもきちんと描かれている。

そして、最終的にはハートウォーミングな気持ちになれるという王道クリスマス・ストーリーになっている。

個人的には「グレムリン」や「ダイ・ハード」と並ぶ、80年代を代表するクリスマス映画の傑作だと思う。

私は「3人のゴースト」に特化して言及したが、「グーニーズ」派の人や「リーサル・ウェポン」派、「スーパーマン」派、「オーメン」派の人も同じような思いを持っているのではないだろうか。

そういえば、「オーメン」といえば、月曜ロードショーでテレビ放送された際に、“怖い”という理由で妹にテレビを消されてしまったことを思い出した…。

今の映画に、そこまで、怖がらせる力ってないよね…。

それにしても、リチャード・ドナー監督作品ってサントラが印象的な作品が多いなと改めて思う。

「スーパーマン」のジョン・ウィリアムズのテーマ曲を筆頭に、ジェリー・ゴールドスミスがアカデミー作曲賞を受賞した「オーメン」、毎回、エリック・クラプトンが参加した「リーサル・ウェポン」シリーズ(2作目以降はデイヴィッド・サンボーンも参加、楽曲単位では2作目にザ・ビーチ・ボーイズやジョージ・ハリスン、ランディ・クロフォード、3作目にスティング、エルトン・ジョン、4作目にヴァン・ヘイレンも)なんてのもある。

「グーニーズ」の主題歌“グーニーズはグッド・イナフ”(シンディ・ローパー)、「3人のゴースト」のED曲“恋をあなたに”(アニー・レノックス&アル・グリーン)は全米トップ10ヒットになっている。

「暗殺者」ではザ・ローリング・ストーンズがカバーした「ライク・ア・ローリング・ストーン」、「陰謀のセオリー」ではローリン・ヒルのカバーによる「君の瞳に恋してる」が使われていた。

プロデュース作品でも、「ロストボーイ」や「フリー・ウィリー」シリーズなど、サントラも要注目の作品が多い。

やっぱり、音楽のセンスが良い監督は良い映画を作るんだなというのを実感した。

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