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春に散る

橋本環奈は間違いなく現在の20代女優の中で最もヒット作の多い人と言っていいと思う。「暗殺教室」、「銀魂」、「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」、「キングダム」とシリーズ化された作品も多い。

ただ、上記に並べた作品はいずれもコミック・アニメの実写映画化作品だ。これ以外にもシリーズ化されていない多くのコミック・アニメ実写化作品に出ている。

また、テレビドラマの劇場版やコントの延長線上にある福田雄一作品への出演も目立つ。
さらに、シネフィルの99%が酷評するタイプのホラー、サスペンス系作品にもちょいちょい出ている。

同世代の広瀬すずや浜辺美波と比べても明らかに賞レースに参戦するような作品と縁遠い存在となっている。

ハシカンは声が特徴的だし、体型も女優っぽくないからシリアスなドラマには向かないという声もあるが、似たようなタイプの伊藤沙莉は演技派として評価されている。

酒好きを公言していることから、おっさん受けがいいのも共通点だ。

となると、声や体型、性格などは必ずしもキャリアには影響しないということになる。

そう考えると、女優として注目された頃にコミック・アニメの実写化作品に多く出てしまったせいで、そのイメージが定着してしまい、そうしたものへの出演依頼が相次ぐようになってしまったと見るべきなのだろうか。伊藤沙莉は、注目度が一気に上昇したのが朝ドラ「ひよっこ」だったから、すんなり演技派として見てもらえるようになったというところなのかな。

まぁ、ハシカンはアイドル出身ということで批評家やシネフィルから格下に見られているというのもあるとは思うが。

ただ、ハシカンも24歳になった。制服姿が風俗嬢やAV女優のコスプレっぽく見えてくる年齢だ。そろそろ、アイドル女優から脱しなくてはならないということだ。

だから、たとえ、誰が演じてもいいような汎用型キャラであっても、シリアスドラマ系作品に挑戦しようと思うことは良いことだと思う。

そんなわけで実際に本作を見てみたが、やっぱり、ハシカンが演じた役(かつての名ボクサーの姪)は誰が演じてもいい役だった。出番も少ないしね。

ただ、作品自体は想像以上に面白かった。

というか、ベタなスポ根ものだ。
 
若くて才能はあるが粗削りなボクサーがかつての名選手に弟子入りしようとするが最初は断られる。でも、信頼関係が築かれるようになり、強固な絆で結ばれていく。そして、若い選手も強くなっていくというストーリーはありきたりだ。また、嫌味な対戦相手が出てくるのもよくある展開だ。

でも、師弟関係が築かれていく様子の描き方が自然だし、試合のシーンも臨場感があって、想像以上に面白い作品に仕上がっていた。

ただ、ちょっと要素を盛り込み過ぎだとは思った。師匠が心臓の病気を抱え、弟子は失明の危機にあるなんて、師弟そろって難病患者にする必要はない。

さらに、師匠と兄の不仲や兄の死による実家の解体。姪とのぎこちない関係。
弟子と彼を片親で育てた母親との微妙な関係や、彼女にDVを働く彼氏の存在。
師匠のかつての仲間のうちの1人が服役経験者で出所後、師匠と微妙な関係になる展開。
師匠のかつての恩師の娘でボクシングジムを運営する女性との微妙な関係。

まぁ、タイトルがこれだから師匠の病気は必要だとは思うが、それ以外は2時間13分の映画で描くには詰め込み過ぎと言ってもいい要素だと思う。

これを社会派作品のイメージが強い瀬々敬久監督が手掛けているというのはちょっと意外な気もした。

まぁ、都市部と地方の格差、シングルマザー世帯の貧困問題、シングルマザーはDV被害にあいやすい、スポーツ出身者など勉強してこなかった者は犯罪者になりやすいなどといった社会的要素を詰め込み過ぎという点では瀬々敬久らしいのかも知れないが。

ちなみにかつての名ボクサー役は佐藤浩市、ボクシングジム会長は山口智子が演じている。
山口智子演じるキャラが佐藤浩市演じるキャラを“君付け”で呼んでいて違和感を抱いたのだが、演者2人の実年齢を見ると、たったの4歳しか差がないようだ。これなら、“君付け”でもおかしくないか。それだけ、佐藤浩市が実年齢より老けて見え、山口智子が若く見えるってことなんだろうね。






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