見出し画像

チケット・トゥ・パラダイス

本作は「ベン・イズ・バック」以来、実に3年半ぶりに日本で劇場公開されたジュリア・ロバーツ出演映画となっている。
というか、日本劇場公開が見送られていたわけではなく、この間にはアマプラ配信のドラマシリーズしか出演していないので、単に仕事をセーブしていただけなんだけれどね。

ちなみに自分は1990年12月日本公開の「プリティ・ウーマン」以降全てのジュリア・ロバーツ出演作品をスクリーンで見ている(日本劇場未公開作品、声のみの出演作品、スタッフとしてのみ参加の作品は除く)。
正確に言うと、というか日本公開順で言うと、「プリティ・ウーマン」の日本公開直前の90年9月に88年度作品「ミスティック・ピザ」がやっと日本公開されたので、同作以後の日本公開作品(レギュレーションは前期の注釈参照)を全て見ているということになる。

実に本作がスクリーンで見た42本目のジュリア・ロバーツ出演映画ということになる。

多分、ハリウッド女優でこれだけの本数をスクリーンで見ている女優はいないと思う。

それらの作品にジュリアは主演、ヒロイン役、助演、ゲスト出演、様々なポジションで出演している。大ヒット作もあれば大コケした作品もあるし、「プリティ・ウーマン」や「ノッティングヒルの恋人」のように多くのフォロワーを生み出したような作品や、「エリン・ブロコビッチ」のような賞レースを賑わせた作品もある。その一方で、多くの駄作にも出ている。

90年代前半くらいまでの出演作品は明らかに彼女のルックス目当てで見ていたと思う。でも、その後も見続けるようになった理由はよく分からない。義務感なのかな?

ジュリアのキャリアを語る上で、おそらく最もシネフィルに注目されていた時期は2000年代前半だと思う。
この頃ジュリアは、スティーブン・ソダーバーグ&ジョージ・クルーニー一派と一緒に仕事をすることが多かった。
言うまでもなく、彼女がアカデミー主演女優賞を受賞した2000年の「エリン・ブロコビッチ」はソダーバーグ監督作品だ。
この期間にジュリアはクルーニーと3作品で共演している。ソダーバーグ監督、クルーニー主演の「オーシャンズ11」、「オーシャンズ12」。クルーニー監督・出演、ソダーバーグ製作総指揮の「コンフエッション」がそうだ。
そのほか、ソダーバーグ監督作品では、「フル・フロンタル」に出演しているほか、「ザ・メキシカン」では「オーシャンズ」シリーズで共演したブラッド・ピットとW主演を務めている。

ラブコメとサスペンスを両軸に多くのヒット作を生み出していた90年代は正直なところ、作品として評価できるのは、「プリティ・ウーマン」、「ベスト・フレンズ・ウェディング」、「ノッティングヒルの恋人」くらいだから、この時期の充実ぶりは特筆に値すると思う。

2000年代後半以降、日本では洋画がヒットしにくくなったということもあり、ジュリア・ロバーツ出演映画はほとんど注目されなくなってしまった。
2013年度作品「8月の家族たち」は、彼女がアカデミー助演女優賞にノミネートされたにもかかわらず、日本ではTOHOシネマズ シャンテをメイン館とする、いわゆるミニシアター系公開だった。

2016年度作品「マザーズ・デイ」なんて、ヒューマントラストシネマ渋谷の特集上映企画「未体験ゾーンの映画たち」上映作品になってしまうくらい、日本ではジュリア・ロバーツというのは客を呼べる名前ではなくなってしまったということだ。

この時期の作品でかろうじて、ライトな洋画ファンにアピールできた作品と言っていいのが、ジョディ・フォスター監督、ジョージ・クルーニー主演の「マネーモンスター」(2016年)ではないだろうか。
この作品は、前述した2000年代前半のソダーバーグ、クルーニー一派とつるんでいた時期以来となるクルーニーとの共演作となった。

本作はその「マネーモンスター」以来となるジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニーの共演作だ。

「オーシャンズ11」公開時はクルーニーは40代になったばかり。ジュリアは30代半ばだった。

それが本作公開時では、クルーニーは60代、ジュリアは50代半ばになっているのだから、時の流れを感じずにはいられない。

まぁ、90年代から00年代に2人が演じたキャラが年を重ねたみたいな人物を演じているので、明らかに40代以上の映画ファン向けの作品であることは間違いないと思う。

ストーリーも90年代から00年代によく見かけたラブコメ(ロマコメ)映画のプロットを、初老のオッサンとおばさんでやっているようなものだしね。まぁ、美男美女であることには違いないが。

要は当時、ジュリア・ロバーツやジョージ・クルーニーの出ている映画をリアルタイムで見ていた世代が自分も年を取ったよねということを実感するための作品だった。
日本で言えば、オーバー40で洋画好きの人なら、この作品を見て良かったと思うのでは?
毒にも薬にもならないけれど、久しぶりに王道ラブコメを見たって感じがするから、それだけでも、40代以上にはたまらないのではないかと思う。

というか、ストーリー展開とか設定とか「マンマ・ミーア!」シリーズっぽいと思ったが、本作のメガホンをとったオル・パーカー監督は2作目の「ヒア・ウィー・ゴー」を撮った人だったのか。こういう話が得意なんだろうね。

それにしても、C+C ミュージック・ファクトリー“エヴリバディ・ダンス・ナウ!”とか、ハウス・オブ・ペイン“ジャンプ・アラウンド”といった90年代初頭のヒット曲が懐メロ扱いされる時代になったとはね…。

だったら、エンドロールに流れる“This Old Heart Of Mine”もアイズレー・ブラザーズによるオリジナル・バージョンではなく、90年にヒットしたロッド・スチュワートとロナルド・アイズレーのコラボによるバージョンで流せば良かったのにと思った(かつて、この曲をカバーしたロッドと、オリジナル・アーティスト、アイズレー・ブラザーズのメンバーであるロナルドのコラボによるカバーというかリメイク・バージョン)。

そういえば、予告で流れていたデュア・リパは本編では使われていなかった…。

90年代初頭のヒット曲が懐メロ扱いということは、ジュリア・ロバーツもジョージ・クルーニーも実年齢より若い役を演じているって感じなのかな?

ジュリア・ロバーツ演じる母親が大学卒業してすぐ、ジョージ・クルーニー演じる父親が大学院の頃に娘ができ、結婚したのは25年前と言っていたような気がするから、90年代初頭のヒット曲は彼等が社会人になる前の青春のサウンドトラックってことなんだろうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?