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クワイエット・プレイス 破られた沈黙

どこからをコロナ禍とするかは観点によっても異なるだろうが、全米ボックスオフィス的な視点からすれば、2020年2月下旬から3月上旬あたりからだろうか。
2月中旬公開の「ソニック・ザ・ムービー」は全米興収1億4千万ドルを超える大ヒットになっていたので、コロナというものが興行にはっきりと影響するようになったのは、2月下旬から3月上旬あたりだと思う。

日本では2月のアカデミー賞授賞式で韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受賞したことを受けて、その直後にポン・ジュノ監督らが来日記者会見を行ったりしていたが、2月下旬からは一部劇場が休業したり、公開延期作品が相次いだりするようになっているから、日本を含めた世界の映画業界的には2020年2月下旬から3月上旬あたりからがコロナ禍なんだろうなとは思う。

それから、1年3ヵ月ほどが経ったが、本作「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」が遂にコロナ禍になってから公開された作品で初めて、全米興行収入1億ドルを突破した作品となった。

現時点での今年の全米興行収入の上位にランクインしている作品は、2位から7位までがワーナーやディズニーの劇場公開と同時に配信されている作品で占められている。
本作の配給会社パラマウントは、劇場公開の45日後に配信という方針のため(ユニバーサルの17日後よりもウィンドーと呼ばれる劇場公開から配信などを開始するまでの期間が長い)現時点では映画館でしか見られないから、二の足を踏んでいた人たちも劇場に足を運んだのだと思う。

本作のヒットによって、米国の映画興行はほぼ通常モードに戻っていくと思われる。さすがに、興収3億ドル、4億ドルを突破するような作品は少なくとも年内に出ることはないとは思うが、年内の公開待機作品のラインナップを見れば、同時配信しない作品であれば2億ドルくらいなら突破できそうな気はする。

ところで、この邦題は何?
前作は米国産ホラー映画が当たりにくい日本では異例ともいえる興収8億円台というヒットになったのに、2作目であることを隠すような邦題になっているのは何故?
コロナ禍になって、日本では邦画の新作はコンスタントに上映されていても、米国ではワクチンの接種が進むまではハリウッドの新作の公開延期が相次いでいることから、ハリウッド映画は供給されない状態が続いていた。
そのため、ただでさえ“邦高洋低”と呼ばれていた状況が悪化し、洋画のシェアはどんどん悪化している。

昨年度の日本の映画興行で興収10億円を突破した洋画は映連の調べだとたったの4本しかない。しかも、そのうち3本はコロナ前の公開(さらに、そのうち1本は韓国映画)だから、コロナ禍になってから大ヒットと呼べるレベルに達した洋画は「テネット」しかないということになる。

今年なんかはもっと酷い。日本の映画興行では年末公開作品は翌年度のデータに組み込まれるという不透明な慣習のため、上半期というのは5月までとなるが、この上半期ランキングで興収10億円を突破した洋画は「モンスターハンター」しかない。しかも、この作品は日本のゲームを映画化したもので、日本の映画会社・東宝が出資し、山崎紘菜という日本の女優も出演している作品だ。
「ゴジラvsコング」が予定通り5月に公開されていれば、上半期の洋画トップの成績になっていたかもしれないが、これも日本のコンテンツを東宝の出資と日本人俳優の出演で米国で映画化したものだ。
つまり、純粋な洋画というのは全然ヒットしていないということになる。

だから、いくら前作が好成績を上げたといっても、そんなに映画を見ない人でも名前くらいは知っているという作品にはなっていないから、一からプロモーションをやり直さなくてはいけないというかことなのかもしれない。
「ワイスピ」クラスなら、そこまでの心配はいらないのかもしれないけれどね。

そして、実際に劇場で本作を見てみたところ、ガラガラに近い客入りだった。

確実にコロナ禍になって、ハリウッド映画を映画館で見るという行為が忘れ去られつつあるという気がする。まだ、ミニシアター系洋画の方がシェアを何とか保っているような気がするな…。

そして、本作をIMAX上映で鑑賞したが、IMAXで映画を見たのって、超久々だ。でも、鑑賞劇場のT・ジョイPRINCE品川のスクリーンって、全然、IMAXって感情がしないな…。
最前列に座っても、スクリーン外が視界に入るし、字幕もきちんと読めるしね。

シネコンになる前の新宿ピカデリーには、座席数が1000席を超える時代があったけれど、その時なんて、最前列に座ると、画面の両サイドがギリギリ視界に入るくらいだったからね。
しかも、当時は字幕が縦に出ることが多かったから、字幕を読みにくいので、字幕を読まずに何とか言語の台詞を聞き取ろうと頑張って鑑賞したくらいだったしね。
それを考えると、T・ジョイPRINCE品川のIMAXで500円も余計に払うのはぼったくりに近いと思う。

作品自体は前作同様ツッコミどころ満載だったし、いいところでブツっと終わるのも前作同様だった。
終盤の姉弟の絆みたいな感じで両者の活躍シーンをカットバックで見せるところは感動的だったけれどね。

ところで、緊急事態が発生すると、あっさりとスポーツの試合が中止されるという描写があったことには感心した。
日本だったら、絶対、なかなか決断が出されずに、次から次へと被害者が出るよねって思った。
やっぱり、米国の危機管理能力は日本とは違うね。

それにしても、廃線を歩く場面が多いのは、かつて(小学生時代)、鉄オタだった者としては、結構たまらないものがあったな。

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