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ミュージカル『SPY×FAMILY』3月11日(土) 18:00

日向坂46のメンバーが出ていなければ、おそらく本公演を見ることはなかったと思う。基本的に演劇ファン向けでもオタク向けでもない、リア充向けの公演だからね。実際、会場に来ているのは普段の観劇(歌舞伎含む一般の演劇や、アイドル・2.5次元舞台)では見かけないような客層だしね。日向坂メンバーが出ているのにアウェーな現場に来てしまったような気分だ…。

でも、男子トイレに行くと行列が出来ていた。やっぱり、ドルオタもかなり来ているようだ。本当、ドルオタにしろアニオタにしろオタクって胃腸が弱いのが多いよね。自分もそうだけれど。

と思ったが、混んでいるのは小便器の方ばかりだった。やっぱり、非オタの客ばかりだね。

果たして、2.5次元仕様でないアニメ・コミックの舞台化、ミュージカル化はどうなんだろうかという不安も抱えながらの観劇となった。

出だしは正直なところ、大丈夫かコレと思ってしまった。もしかすると、勘違いした左翼演劇人によって、アニメやコミックの設定だけを流用した別物にされてしまっているのではないかと危惧したりもした。

しかし、それは杞憂に終わった。

「SPY×FAMILY」というコンテンツを大人向けの作品に仕上げていた。要はハリウッドがアメコミを大作映画に仕立てているような感じだ。帝国劇場の上演作品ということで予算もそれなりにあると推測されるからセットや衣装が安っぽくなっていない。そのことが奏功しているのではないかと思う。ドルオタやアニオタから金を搾り取るためだけのアイドルグループ出演系の舞台や2.5次元舞台とは格が違うというのを実感した。

ただ、構成に関してはちょっと難もあるなとは思った。休憩時間を除くと2時間35分の上演時間となっているのは、格式ある帝国劇場の上演作品だし、休憩時間の売店収入も重要な収入源になっているから、アイドル主演舞台や2.5次元舞台でよくある休憩なし2時間公演の構成にはできなかったのではないかと推測する。

話の流れでいけば、アーニャがイーデン校に合格し、お城で合格記念パーティーを開いておしまいにすればスッキリしていたのに、合格発表とパーティーの間に、アニメとは時系列を変えて第1クール後半で描かれるヨルの弟がフォージャー家を訪れるシーンや、第2クールで登場するロイド先輩大好き後輩スパイの話が挟まり、しかも、終盤にはアーニャがイーデン校で模範生になるためのステラ獲得作戦やロイドが校内で開かれる懇親会での大物政治家とのコンタクトをはかるといった今後のミッションを予告的に紹介するミュージカルナンバーが流れたりもする。

結局、ステラ獲得作戦を描くにはイーデン校の描写をしなくてはならない。そして、そのためにはアーニャ以外のモブでない子役も用意しないといけない。また、本作では学園での授業のシーンがないが、それを描かない以上は大物政治家とのコンタクトも描くことはできないという大人の事情で決められたストーリー展開にしか思えないんだよね…。

とはいえ、このミュージカル版が酷い出来だったかというとそうではないんだよね。
特にヨル役の日向坂・佐々木美玲(みーぱん)の演技は良かった。殺陣もしっかりしていたし、かなり女優としての適性があると思った。ミュージカルナンバーの歌唱力も良かったしね。何となく、女優を本業とするために近々、日向坂を卒業してしまうのではないかと思ってしまった。それくらい女優としてのポテンシャルが高かった。生田絵梨花レベルになれると思う。
まぁ、台詞の言い回しはちょっと、アニメ版声優の早見沙織に寄せ過ぎな面があり、それはどうかと思ったが。

あと、アーニャ役の子役もアニメ版の種﨑敦美を意識し過ぎているとは思う。可愛いし、演技力もあるとは思うけれどね。

そして、このミュージカル版を見たことにより、「SPY×FAMILY」のことをスパイ版「クレしん」と呼ぶ人の気持ちがさらに分かるようになった。
確かにアーニャはしんのすけだ。オマセなところもそうだし、間違った言葉遣いをするところもそうだ。アーニャが父親を“チチ”、母親を“ハハ”と呼ぶのも、しんのすけが母親を“みさえ”と名前で呼ぶようなものだと思うしね(最近は滅多に名前呼びをしなくなったが)。

ところで、これは本公演というより、原作やアニメの問題だと思うが、イーデン校ってカレッジなの?カレッジって大学だよね?小学校から大学までエスカレーター式の学校ならそれでもいいが、イーデン校って13学年制だよね?つまり、日本式の教育でいえば小中高一貫校みたいなものでしょ?カレッジってのはおかしいのでは?

日本でいうところの小学生に相当する学年の子どもが児童ではなく生徒と呼ばれるのは一貫校、つまり、最終学年が日本でいえば高校生に相当するので、それを基準にして全学年を生徒呼びしていると好意的に解釈するが、カレッジ呼びは納得いかないな。

あと、受験生と両親揃っての出席を義務付けている面談を三者面談(というか面接だよね)と呼んていることにもちょっと違和感を抱いた。まぁ、人数ではなく、受験生・両親・教職員という括りでの三者なんだろうね。面接の場に教職員は複数いたしね。

それから、男尊女卑的な描写も気になったりもしたが、ロイドなどが時々、妻が料理をしなくてはいけないなんて決まりはない的なことを言ってフォローしていたのでヨシとしよう。
まぁ、架空の国が舞台ではあるが、冷戦時代の東側諸国を描いた作品だから、女性の自由がないのは当然といえば当然だしね。

ところで、やたらと劇場係員が座席に肩をつけて鑑賞し前のめりになるなと観客に言っていたけれど、昭和の大劇場の発想が抜けていない帝国劇場は座席間隔が昭和の日本人体型で作られているから、座席に肩をつけての鑑賞なんて無理でしょ。少なくとも今の65歳以下には。
あと、自分みたいにある程度、脚の長さがある人間だと脚の置き場に困るから、どうしても座席に奥深くぴったりと体をくっつけて座るのが難しいんだよね。客に文句を言う前にスタッフは自分で座ってみろって思う。

あと、これだけの大劇場なのに規制退場をやらないんだね。ノーマスク解禁直前だから、もう、規制退場はやめたの?それとも、本作は例外だけれど、元々は女性客と男は高齢者しか来ないような劇場だから、足のはやい現役世代の男もいないし、規制退場しなくてものんびりと退場してくれるでしょって判断なのかな?でも、本公演って明らかに普段の帝国劇場で上演する作品とは客層が違うよね?

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