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Re:ゼロから始める異世界生活 劇場型悪意

テレビアニメの先行上映というと、リメイク版「宇宙戦艦ヤマト」シリーズや「アイドルマスター」シリーズのように1クールなり2クールなりで放送されるアニメを何話かずつに分割して全⚫︎章という形で上映するいわゆるイベント上映のパターンが多い。

このほか、一般の劇場公開はしない試写会のような形で冒頭の数話を上映するイベント(紛らわしいがイベント上映とは別もの)というのもよく開かれている。

さらに、その期の全話を先行上映するわけではないが、冒頭の何話かだけをまとめたものを劇場公開するというケースもある。「鬼滅の刃」の1期“竈門炭治郎 立志編”や「甲鉄城のカバネリ」などがそのパターンだ。

そして、最近増えているのが枠を拡大して放送される初回スペシャルのみを先行上映するケースだ。
「鬼滅の刃」の“刀鍛冶の里編”と“柱稽古編”は前シリーズのラストと合わせて上映された。
さらに、初回拡大SPの中には映画と同レベルの本編尺90分前後の長尺のものもあるため、映画のようなイメージを打ち出して公開されるものもある。このパターンで話題となったのが「【推しの子】」だ(かっこの付け方がタイトル表記のせいで変…)。

同作は人気アイドルのアイが主人公のように思わせておきながら、実は隠れて妊娠出産した彼女の担当医で彼女の子どもとして生まれ変わったアクア(医師時代の名前は吾郎)が主人公だ。

同作の初回SPはストーカー的なファンに殺されて絶命したアイの殺され方に疑問を持ったアクアが真相の究明を決意するところで終わる。
そこまでに必要な尺がエンドロール含めて84分となる(テレビ放送版はこれよりエンドロールが短くなっている)。
毎回流れるオープニングやエンディングを除いた約80分というのはテレビシリーズ4話分だ。1クールのアニメで5話目から主人公が変わるというのはかなりリスキーなことだ。だから、1話を長編SPにして、ここで初代の主人公を退場させた方がその後のシリーズ展開がやりやすいと思ったのだろう。なので、同作の初回SP作戦は成功を収めた。

その後、「葬送のフリーレン」や「薬屋のひとりごと」は先行上映こそしなかったが、初回の放送枠を拡大した。「フリーレン」は120分枠、「薬屋」は90分枠となったが、前者は1〜4話、後者は1〜3話をまとめて放送しただけで、「【推しの子】」のように90分枠で1つのエピソードという構成にはなっていなかった。



今回の「Re:ゼロから始める異世界生活 劇場型悪意」は「【推しの子】」パターンで作られている。途中でここにCMを入れるのかなというような箇所を感じたりもしたが、基本は90分で1つのエピソードとなっている。しかも、「【推しの子】」は90分枠でCMタイミングを調整すれば何とか入る80分ちょっとの尺だったが、本作はエンドロールを含めた本編尺が90分だ。つまり、CMが入る民放では90分枠では放送できない。どの局で放送されるのか、CM込みの放送枠は実際はどのくらいなのかは現時点ではアナウンスされていないが、「【推しの子】」以上に劇場公開を意識していることは間違いないと思う。80分だと、“これで普通の映画と同じ金を取るのかよ”って文句を言いたくなるが、90分なら満足できるしね。

ただ、出来は「【推しの子】」に比べると遥かに低レベルだった。ダラダラと尺をのばしているって感じで正直、見ていてあくびも出てしまった。
それに、「【推しの子】」は区切りの良いところで終わっていたので、きちんと同作だけでも映画のような作りになっていたが、本作は新たな問題が発生しクリフハンガー状態となったところで終わってしまう。本作だけを見れば尻切れトンボの何がなんだか分からない作品だ。なので、これはここ最近の初回放送枠拡大や初回SP劇場公開の“ブーム”に乗って作られた粗悪な作品と言わざるを得ないと思う。

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