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billboard Hot 100 年間チャート(2021)

まぁ、毎週チャートをチェックしている音楽マニア、洋楽マニア、チャートマニアなら、デュア・リパ“レヴィテイティング”の年間1位獲得に驚きはないと思う。最低でも年間トップ3には入るだろうと予想していた人がほとんどだと思うしね。

というわけで、週間チャートで首位を獲得していない曲の年間チャート1位はライフハウス“ハンギング・バイ・ア・モーメント”(超名曲!)以来20年ぶりの快挙となった。

この“レヴィテイティング”、2020年に最初にリリースされたソロ・バージョンの米国でのリアクションは同じアルバム『フューチャー・ノスタルジア』からのシングルでいえば、“ドント・スタート・ナウ”や“ブレイク・マイ・ハート”ほどのリアクションは得られなかった。

その後、マドンナとミッシー・エリオットをフィーチャーしたリミックス・バージョンを発表したが、米国ではヒットには寄与しなかった。

さらに、そのすぐ直後にダベイビーをフィーチャーしたリミックス・バージョンもリリースされたが、これもすぐには火はつかなかった。去年、ダベイビーはヒット曲を連発していたにもかかわらずだ。
でも、じわじわとチャートを上昇し、気付けば長々と41週間もトップ10内にランクインする超特大ロングヒットになってしまった(トップ10内57週のザ・ウィークエンド“ブラインディング・ライツ”に次ぐ記録)。

この曲が特大ヒットになったのはダベイビーのおかげであることは間違いないと思う。でも、彼の同性愛者差別発言が明らかになってからも、しばらくはダベイビーをフィーチャーしたバージョンでランクインしていたのは納得がいかないよね。

billboard Hot 100は複数バージョンある楽曲の場合、最もポイントを稼いだバージョンをもとにチャート上でのタイトル表記やアーティスト表記を決めるという集計方針を取っている。
つまり、同性愛者差別発言が明らかになってからもしばらくは、米国のラジオがダベイビー・バージョンをかけていたってことなんだよね。

最近の米国はキャンセルカルチャーが蔓延していて、過去の問題的な言動、特に人種とか女性、同性愛者に対する差別的な言動を働いたアーティストや俳優などに関しては、その行為そのものでなく、その人が関わった作品の存在までを無視するという傾向が強まっている。
映画界でいえば、プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン、俳優のケヴィン・スペイシー、監督で俳優のウディ・アレン、監督・プロデューサーのジョン・ラセターなどが亡き者にされてしまった。

音楽界でも、過去にアジア人蔑視とされる言動を行っていたことが明らかになったビリー・アイリッシュの新曲が一時、チャート・アクションがふるわなかった時期があったが、それはおそらく、このキャンセルカルチャーの影響なのだと思う。
2ndアルバムが『ハピアー・ザン・エヴァー』がリリースされて、やっと、そのタイトル曲が久々にヒット曲と呼べるレベルになったけれど、それまでは出す新曲、出す新曲、かつての人気はどこへやら状態だった。

また、黒人に対する差別的発言を行ったカントリー歌手のモーガン・ウォレンはレコード契約を停止され、多くのラジオ局が彼の楽曲のオンエアを中止するようになってしまったのもキャンセルカルチャーの影響だと思う。

それでも、彼の最新アルバム(しかも2枚組作品)が今年度の年間アルバムチャートでは首位になっているということは、リベラルとかフェミといったポリコレ思想が蔓延している今の米エンタメ界に嫌気がさしている人が地方の白人層を中心に多いということなんだろうと思う。“ラジオがかけなくても、フィジカルやダウンロード、ストリーミングで支援してやるぞ”って思いの人が多かったってことなんだろうね。

そりゃ、グラミー賞やアカデミー賞、スーパーボウルなどの大イベントの中継番組の視聴者数が低下するわけだよね。

こうした中、ダベイビーに対するキャンセルカルチャーがなかなか発動されなかったのは彼が黒人であるからという理由に他ならないと思う。
今のポリコレ思想では、黒人のやることは全て正しい、批判する人間は(日本でいうところの)ネトウヨだみたいな扱いになるからね。
確かに過剰かもしれないが、警官による取り締まりで死傷した黒人って、ほとんどが大なり小なり犯罪行為を働いていたのに、それをなかったことにして、警官が悪く黒人が正義みたいにされたり、Black Lives Matterという名目があれば、デモのどさくさで略奪行為を働いても容認されているのもそう。

どんなに悪いことでも、黒人のやることを批判したら人種差別主義者にされてしまう。

だから、なかなかダベイビー排除が進まなかったのだと思う。それでも、最終的にはチャート表記がダベイビーを除いたソロ表記に変わったのは、同性愛者などからの批判の声が強まったからだろうね。

そして、ダベイビー排除とともに、再びソロ・バージョンでプロモーションすることになったが、その際に発表された新たなMVが「セーラームーン」風のアニメーションというのは、女性が活躍できる社会を目指そうというメッセージも込められているのだとは思う。
まぁ、歌詞に♪ムーンライト〜ってあるから、ムーンつながりで選んだだけかもしれないけれどね。

それにしても、“レヴィテイティング”の超特大ロングヒットのおかげで、その後リリースされたデュア・リパのシングルの印象が薄くなってしまったのは残念だよね。
レゲエ調の“ウィー・アー・グッド”、ホワイト・タウン、1997年のヒット曲“ユア・ウーマン”でもサンプリングされていた“マイ・ウーマン”が元ネタの“ラヴ・アゲイン”と良曲を連発していたしね。
“ラヴ・アゲイン”は最初聞いた時、“この既聴感はなんだ?”と思ったが、ホワイト・タウンにたどり着いた時は、“そうだ!そうだ!”ってなったしね。

でも、エルトン・ジョンとのコラボ曲“コールド・ハート”は出足こそスロースタートだったけれど、ヒットしていて何よりだと思う。何しろ、エルトンにとっては22年ぶりの全米トップ40ヒットとなり、もう少しでトップ10入りというところまで来ているからね。
もし、トップ10入りすれば97年から98年にかけて12週間首位を獲得したダイアナ妃追悼の“キャンドル・イン・ザ・ウインド1997”とオリジナル・アルバム収録曲“ユー・ルック・トゥナイト”の両A面シングル以来となるが、是非、トップ10入りして欲しいな。

まぁ、“レヴィテイティング”が特大ヒットになったのは、リリース当時は少なくとも人気アーティストだったダベイビーのおかげだと思うが、エルトンが久々にヒット・チャートに返り咲けたのはデュア・リパのおかげだよね。

ちなみに今年度の集計期間中、最も首位獲得週数が長かったのは、BTSの“Butter”だった。

でも、通算10週間も首位の座に立ちながら年間チャートではトップ10入りすることができなかったんだよね。
それって、特定のファンがせっせと複数アカウントを使ってダウンロード購入してポイント稼ぎをしたおかげで週間チャートでは1位になれたけれど、ストリーミングやラジオでのオンエアは思ったほど伸びず、一般の米国人にはそれほど楽曲の認知度が広まっていなかったから年間では苦戦しているってことだよね。

しかも、BTSは今年度の集計期間には英語曲の“Butter”以外にも、韓国語曲の“Life Goes On”、エド・シーランが楽曲提供した英語曲“Permission to Dance”、コールドプレイとコラボした英語と韓国語をミックスした“マイ・ユニバース”もナンバー1ヒットとなっている。

でも、この3曲は年間チャートの100位内には入っていないんだよね。集計期間にbillboard Hot 100で首位を獲得した曲なんて、前年度から繰り越しの曲を含めてもたったの20曲しかない。しかも、集計期間で最も最新のナンバー1ヒットであるアデルの“イージー・オン・ミー”なんて集計期間内ではたったの4週間しかチャートインしていないから年間チャートには影響しない。

実質19曲しかナンバー1ヒットがなく、しかも、そのうちの4曲がBTSのものなのに、年間チャートではその中の1曲しか100位内に送り込めなかったってのは、組織票で瞬間風速的に上位にランクインしただけで、ストリーミングで聞かれたり、ラジオでオンエアされたりといった一般の米国人の耳に届く領域では全然ヒットしていなかったって言わざるを得ないよね。

4曲もナンバー1 ヒットを放っていながら、そのうちの1曲しか年間チャートに入れなかったなんてハジもいいところだよ。

マックスで7週間くらいしかランクインできないクリスマス・ソング、しかも旧曲だって年間チャートに入っているんだから、いかに一般の米国人にBTSは聞かれていないかが分かるよね。

そして思うんだけれだ、ナンバー1を獲得した曲が4曲もあるのに、“Butter”以外はあっという間にチャートを下降していったのは何故?

一発屋みたいなアーティストなら、その1年間にリリースされた楽曲のうち、特定の1曲だけがヒットするというのはよくあることだけれど、彼等は年間4曲もナンバー1ヒットを放つ人気アイドルだよね?

ひと昔前の洋楽アーティストのように、まずアルバムがあって、そこから何枚もシングルを切っていくという形なら、1st、2nd、3rd、4thと進んでいくうちに、チャートポジションは高位をキープしていても、シングル自体の稼いだポイントはシングルを切っていくごとに減っていくから、後から切られたシングルになればなるほど、年間チャートでの順位は低くなるというのは分かるんだけれど、BTSはそうではないからね。

“Life Goes On”は韓国語アルバムのリード曲。“Butter”は単発のシングル。“Permission to Dance”は“Butter”をCDシングルとしてリリースする際に両A面シングル的な立ち位置で発表された新曲(2曲しか入っていないのにオリコンではシングル・チャートではなく、アルバム・チャートにランクインとなったのは、同時期にリリースされたジャニーズ作品を確実に1位にするための日本的談合だよね。こうすれば、どっちも1位になれるからね)。さらに、“マイ・ユニバース”はコールドプレイのアルバムからの先行シングル(最新アルバムからのシングルとしては2曲目だけれど、アルバム・リリース前に発表されているので先行シングルとなっている)。

要は全部、アルバムの先行シングルみたいなものなのに特定の曲にだけヒットが集中するというのは不自然でしかない。

日本語歌唱曲“Film Out”は坂本九“上を向いて歩こう”以来となる日本語歌唱曲によるbillboard Hot 100チャートイン曲となったと報道された。
同じ坂本九でも“支那の夜”以来だと思うのだが、あれは日本語・英語のチャンポンだから除外なの?だったら?ロス・デル・リオの“恋のマカレナ”だって、英語歌唱による女性ボーカルを取り入れたリミックス・バージョンである“Bayside Boys Mix”でナンバー1になったのだから、非英語曲によるヒット曲から除外となるのでは?ということは、「支那という言葉は中国差別だ」的な理由でなかったことにされているとしか思えないのだが。

話は“Film Out”に戻るが、この曲、全米チャートでは81位に終わっているんだよね。いくら、いかにも邦楽的なダサいバラードとはいえ、人気絶頂期のグループの新曲なんだから、上位に初登場してもおかしくないわけだしね。
実際、ほとんどの米国人には何を言っているか分からない韓国語曲の“Life Goes On”が1位になっているということは、日本語だって米国人は分からないんだから、いくらダサい邦楽バラードだって、トップ10入りくらいはしてもおかしくないんだよね。

つまり、米国でBTS旋風を巻き起こしているのはゼロとは言わないが白人や黒人ではなく、在米韓国人や韓国系米国人が中心であるということがよく分かる。
BTSを敵国・日本の文化と同化させる日本語曲は認めたくないから、韓国語曲のようにプッシュしなかったってことでしょ。

韓国語曲“Life Goes On”が首位獲得後、一気に下降したのは、これまでの多くのBTSの全米チャートにランクインした韓国語曲と同じパターンだから、多分、これが通常運営。
“Permission to Dance”を“Butter”ほどプッシュしなかったのは、おそらく、これがヒットすると楽曲提供した洋楽アーティスト、エド・シーランの手柄になるから。コールドプレイとのコラボ曲“マイ・ユニバース”も同じような理由。

“Butter”はしがらみがない上に英語曲だから、この曲がヒットすれば、米国人に認められたアピールができるってことで、これに組織票が集中したんだろうね。

日本のファンはそもそもK-POPアーティストの日本語曲に興味ないのが多いから、“Film Out”はあっという間にチャートを下降していった。
“Permission to Dance”が全米チャートほど一気に下降しなかったのは、エド・シーランが洋楽不振と呼ばれて久しい日本市場で現在支持されている数少ない洋楽アーティストだからというのはあるのかな。
その一方で、“マイ・ユニバース”はあくまでもコールドプレイがメインだし、音も完全に洋楽だから、そんなに興味を持たれなかったって感じかな。

そうした思惑がうごめく中、今年のヒット曲を差し置いて、昨年度の年間チャートの集計期間の首位獲得曲である“Dynamite”が今年も年間チャートにランクインし、しかも、もう少しでトップ40入りという41位となったのは見事としか言いようがない(ちなみに昨年度の年間チャート順位は38位だから、ほぼ同レベル)。

“Dynamite”に関しては、BTSやK-POPへの興味の有無に関わらず、一般の音楽好きの米国人にアピールした楽曲になったと言えるのではないかと思う。

ビルボードが集計方式を大幅に変えた1991年末以降、その時によって重視する要素はフィジカルのセールスだったり、エアプレイのポイントだったり、ダウンロードのセールスだったり、ストリーミングのポイントだったりと変わっていったが、どのパターンでやっても、ロング・ヒットが出やすい傾向になってしまい、それまではほとんどなかった年間チャートに複数年チャートインするというのが当たり前になった。

勿論、2年連続で年間トップ10入りすることだってある。でも、今年度の年間3位のザ・ウィークエンド“ブラインディング・ライツ”ほどすごい成績を残した曲はないと思う。何しろ、この曲、昨年度の年間ナンバー1 だからね。つまり、2年連続で年間トップ3に入ったことになる。
まぁ、billboard Hot 100に史上最長となる90週間(約1年9ヵ月間)もチャートインしたのだから、2年連続年間チャート上位ランクインも当然なんだけれどね。

ちなみに、この90週間は連続ではない。昨シーズンの年末年始のクリスマス・ソングの大量リエントリー時に押し出されて1週間だけチャート圏外に行ってしまったことがあるんだよね…。惜しい!

ちなみに、ザ・ウィークエンドは年間2位のポジションもゲットしている。こちらに入ったのは、アリアナ・グランデとコラボしたリミックス・バージョンのおかげで息の長いヒットになった“セイヴ・ユア・ティアーズ”だ。前回のグラミー賞では無視されたけれど、一般音楽ファンの支持はしっかりと手にすることができたって感じかな。

オリヴィア・ロドリゴは年間トップ10内に2曲を送り込み、見事、今年を代表するニューカマーとなった。でも、8週連続ナンバー1となった“ドライバーズ・ライセンス”(8位)よりも、“グッド・フォー・ユー”(5位)の方が順位が上というのには驚いた…。“ドライバーズ・ライセンス”なんて年間1位でもおかしくないくらい、今年を代表するヒット曲感があったのにね。

結局、“グッド・フォー・ユー”が1週間しか1位を取れなかったのは、同時期に組織票で首位を独占していたBTSがいたせいで、実際にその期間にエアプレイやストリーミングで人気を集めていた=一般の米国人に聞かれていたのは“グッド・フォー・ユー”だったってことなんだろうね。

それにしても、ブレンダ・リー“ロッキン・アラウンド・ザ・クリスマス・ツリー”が年間チャートに入っているってのは驚きだな(92位)!

年間チャートの集計期間って以前は前年の12月第1週からその年の11月最終週だったけれど、最近は前年の11月下旬からその年の11月中旬に変更されているのって、ビルボードがリカレント・ヒット曲がリエントリーする条件を緩和し、毎年のようにクリスマス・ソングが11月下旬あたりから大量にリエントリーするようになったことも影響しているんだろうね。

つまり、クリスマス・ソングのリエントリーやその年のヒット曲の振り返り再浮上の多い11月下旬から1月上旬のポイントを中途半端に複数年度に分割するよりかは片方にまとめてしまおうということなのかな。

※画像は公式ホームページより

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