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楽曲派アイドルの凋落

楽曲派というカテゴリーに括られるアイドルグループ・群青の世界が現体制の終了を発表した。
地下・半地下グループでよく使われる現体制終了という言葉は都合の良い言い方ではある。解散や活動休止を意味することもあれば、大幅なメンバーチェンジ(全員変更の場合も)をするのでその準備が整うまでちょっと休みますの意味だったりすることもあるので、正直なところ今回の発表がどこまでのものかは分からない。

ただ、ここ最近言われていた楽曲派アイドルの凋落の動きは彼女たちの現体制終了で決定的なものとなり、事実上、ムーブメントの終息に向かおうとしているのは間違いないと思う。

個人的には楽曲派という言葉を広めたアイドルはsora tob sakanaだと思っている。彼女たちが2017年にTOKYO IDOL FESTIVALの広報番組「この指と〜まれ!」に出演した際に広くドルオタにこの言葉が認知されたのではないだろうか。その彼女たちはコロナ禍に入った最初の年、2020年の9月に解散している。

ヤなことそっとミュートは2022年に現体制を終了しているし、RYUTistやフィロソフィーのダンス、Task have Funといった辺りもかつてのようなインパクトがなくなっている。広義ではBiSHの解散もこの流れなのかも知れない(まぁ、BiSHのファンは騒ぎたい連中だらけだが)。

本来なら、コロナ禍でライブ時の声出しNGとなった会場で有利なのはその名の通り楽曲を聞かせる楽曲派のはずだった。ところが、オタクは声出しNGの期間に新たな楽しみ方を見出した。

それはクラップと振りコピだ。

アニソン現場では以前から1番のAメロの部分でクラップする慣習があったが、これがアイドル現場にも取り入れられるようになった。

また、振りコピも以前は一部のオタクだけがやっていて、AKB48の“恋するフォーチュンクッキー”など一部の定番曲だけ、みんなで踊るというのがセオリーだった。しかし、コロナ禍になって、見よう見まねで振りコピをする人が増えた。自分もその口だ。

そのため、王道の沸き曲や可愛い系の曲が好まれるようになり、じっくり歌を聞き、踊りを見るタイプの楽曲派の印象は薄くなってしまった。というか、ダンスをきちんと見せる派のアイドルの振り付けなんて簡単にマネできないしね。

そして、ライブ会場での声出しが解禁されたことにより、さらに楽曲派離れは加速した。

ライブハウスでは既に去年の早い時期から収容人数を絞った上で声出しが解禁されていたが、今年はじめに政府が容認の方針を出してからは、ホールクラスでも解禁、ゴールデンウイーク辺りまでには地上アイドルのコンサートでも解禁となった。

コロナ禍に閉じ込められていた反動からか、アイドル現場では、コール・MIXやマサイなどで沸くことが正しい、最低でも振りコピくらいはしろよという風潮になり、ただ、曲を聞きながらリズムを取るくらいでは地蔵扱いされ、盛り下げているからライブに来るなみたいな雰囲気になりつつある。

じっくり見る・聞くタイプの楽曲をやる楽曲派には不利な流れだよね。

それから、TiKTokやInstagramなどSNSでバズる楽曲というのが求められるようになっているのも事実であり、iLiFE!、FRUITS ZIPPER、高嶺のなでしこといった女子人気の高いアイドルはこうしたSNS戦略が功を奏した面が大きいと思う。

でも、楽曲派というのは切り取られたワンフレーズでアピールできるものではない。イントロからアウトロまでの全てが聞きどころ、見どころだからね。

そもそも、楽曲派という呼称はアイドルのくせに曲が良い、バンドやシンガーソングライターよりアイドルの方が格下というニュアンスが含まれているいるので個人的には好きになれない。

一般的にアイドル楽曲はつまらない。オタク受けの良さそうなテンプレ的な沸き曲や可愛い曲ばかり。オタクがコール・MIXをぶち込み、マサイやケチャができるタイミングさえあればいいみたいな感じで作られているというイメージがある。

だから、場合によっては、コール・MIXやマサイ、ケチャをするタイミングがないような曲も多い楽曲派アイドルの楽曲が非アイドル的・非オタク的として評価されているのだろう。

結局、コロナ禍以降、初期は声出しNGで古参が去り、かわりに声出しなしでも楽しめる層が入ってきた。ところが、声出し解禁になると、かつての古参とはタイプの異なる厄介系や最前管理が入ってきた。そして、その声出しなし派とシン・厄介がドルオタのコアな客層となり、コロナ前からドルオタをやっている古参がどちらも違うと感じるようになっているというのが現在のオタク界隈だと思う。

古参は聞く曲、沸く曲のメリハリをつけられていたが、コロナ禍以降に入ってきたオタはゼロか100の思考の者が多い。そして、物販で金を落としてくれるのは厄介寄りの騒ぎたい派の方が多い。だから、楽曲派は集客に苦しみ、解散したり、現体制を終えたりする。そんなところなのかな?

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