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ツッコミどころだらけの「君が落とした青空」

一時期、ラノベと一般的な小説(文学)の中間のようなタイプの小説を買い漁っている時期があった。
はっきりと期間は覚えていないが、2010年代半ばあたりから2020年春に緊急事態宣言が発令されるまでの期間だと思う。

何故、買うのをやめたのかというと、買うだけ買って、どんどんたまっていき、積ん読状態も限界になるほどに自宅のスペースが奪われていったからだ。

どうしても、小説とかコミックというのは積ん読状態になってしまう。
これは、DVD/Blu-rayやCDにも言えることだけれど、パッケージとして手元にある作品はいつでも読む・見る・聞くことができるので、ついその作品に接するのを後回しにしてしまうからだ。

映画館で見る作品は上映期間に限りがあるし、演劇やコンサートのチケットはその日しか見られないものがほとんどだ。
また、テレビ放送を録画したものはレコーダーの容量がいっぱいになれば消さなくてはならないし、配信は動画だろうと、音源だろうと、いつ削除されるか分からない。
だから、どうしてもそういったものを優先することになってしまう。

すると、いつの間にかパッケージ化された商品は手をつけないままでどんどんたまっていってしまう。

2020年春の緊急事態宣言の時は国内のほぼ全ての映画館が休業となり、演劇やコンサートも中止・延期となった。美術館だって休館となった。
テレビドラマもコロナの影響で撮影が中断となり、放送休止になったものもある。そのため、時間に余裕ができて、積ん読状態だったものを整理してブックオフに売り払おうということを思いついてしまった。

そして、この時、積ん読状態だった小説のほぼ全てとこの時点で完結していたコミックを放出することにした。
その後、2021年春の緊急事態宣言時には残りの小説を、年末には積ん読状態のコミック全てを売り払った。
そして、これ以降、ムックや写真集、それから、ブックオフの買い取りの対象にはならない雑誌を除けば書籍は一切買わなくなってしまった。

5年くらい前までは一応、趣味の一つにひっそりと読書を入れていたが、さすがにそれを主張するのは無理になっていたと実感している。本はやたらと買うけれど、全然読んでいないのに趣味と言っていいのだろうかという気はしたしね。

話を戻すが、約2年前に小説を大量に売り払った際に一番多かったジャンル(と言っていいのか分からないが、というか自分以外にこういう言い方をしている人をあまり見かけないが)が、ラノベと文学の中間的なポジションの作品だ。

具体的にはどんな作品かというと、主な特徴はこんな感じだ。

●基本は青春小説で中高生が主人公のことが多い。大学生や社会人が主人公の場合や、アラサー・アラフォー辺りがかつてを思い出すとかタイムリープしたりするようなものもある

●ファンタジー要素、ホラー要素を含むものが多い。でも、ラノベに比べるとスケールは小さい。異世界ではなく日常生活を送る実社会が舞台。現在の世界以外が描かれても、せいぜい、過去や未来といった程度

●主人公は基本、スクールカースト下層の人物であることが多い。社会人なら職場に居場所がない人。中年なら冴えない人生を送っている人

●主人公もしくはヒロインなど主要人物に死期が迫っている。あるいは自殺願望があるなど、死生観を描いたものが多い

●「君の膵臓をたべたい」などで知られる住野よる作品など単行本として出た後に文庫本化される作品もあるが、最初から文庫本で出されるものが多い

●表紙がアニメ風のイラスト。でも、ラノベのような萌え要素は抑えめ

●裏表紙や帯の作品解説に“泣ける”とか、“衝撃の結末”みたいな文言が書かれることが多いことから分かるように、ハートウォーミングなストーリーとどんでん返しが特徴

なので、スクールカースト上位に立ったこともなく、社会人になっても勝ち組になれたこともない。それでいてオタク気質はある。そんな自分の“もし、あの時ああしていれば”という後悔の念を代弁してくれるような内容の作品が多いのでついひかれてしまうなんだよね。

だから、表紙の絵柄と、裏表紙や帯の説明文を読んで、これは自分好みだと判断したら、次から次へと買っていたんだよね。

まぁ、この手の作品ってツッコミどころ満載な作品が多いけれどね。

ラノベに比べるとスケールの小さな話が多いので予算がかからないことから、この手の作品はちょくちょく実写映画化されている。

一番有名なのは、浜辺美波がヒロイン役を務めた「君の膵臓をたべたい」だと思うが、この手の作品は基本的には根暗ピープルの話なので、同じ学園ものでも、少女漫画を実写映画化したキラキラ系に比べるとヒット作は少ないのが実情だったりもする。「キミスイ」は例外かな?永野芽郁は「君は月夜に光り輝く」に出ているけれど、この作品はそんなにヒットしていないしね。

本作も広義ではそうした、ラノベと文学の中間に位置する青春小説を映画化した作品だ。

タイムリープとか、登場人物が秘密を隠し持っているとか、どんでん返しがあるとか、その辺の“お約束”は一通り網羅している。

もっとも、彼氏が隠していた秘密というのが主人公に内緒でバイトをしていただけというのは弱すぎるとは思うが。

ただ、主人公(女子)はスクールカースト下層ではないし、彼氏を好きな女子がいたり、主人公を好きな男子がいたりして四角関係になっている(何故か、この関係に絡まない主人公の親友という女子キャラもいるが)ところなんかはキラキラ系の方がテイストは近いような気はする。

それにしても想像以上にツッコミどころだらけの作品だった。

おそらく、彼氏役のジャニーズメンバー、松田元太(Travis Japan/ジャニーズJr.)のファンは本作を全肯定し、大絶賛すると思う。
ジャニオタの間には推しのみならず、ジャニーズメンバーが出ている作品は批判してはいけないという掟があるみたいだしね。
何しろ、あの「大怪獣のあとしまつ」(Hey! Say! JUMP 山田涼介が一応主演)ですら、ジャニオタは絶賛しているようだし…。

でも、シネフィルのほぼ100%は本作を酷評すると思う。

まぁ、少なくとも30歳以上の男の映画ファンが本作に対して肯定的なコメントを言えるとしたら、福本莉子と莉子が可愛いからガマンして見られたという意見がほとんどになるのでは?

とりあえず、福本莉子と莉子のW莉子を親友役で起用するという発想には感心しました。

そういえば、途中から福本莉子が髪を結くようになるけれど、その結いた状態を見ると何か浜辺美波っぽいんだよね。

まぁ、2年前の実写版「思い、思われ、ふり、ふられ」では女子キャラ1番手を浜辺美波、2番手を福本莉子が演じていたが(原作やアニメではキャラの序列は逆のようだが)、この作品を最後に浜辺美波がキラキラ系映画には出なくなったので、福本莉子が昇格したって感じなのかな?そして、浜辺美波は恋愛スキャンダルみたいなのがあったのでアイドル女優ポジションから脱することになり、キラキラ系やこうしたラノベ風青春小説の映画化作品での需要がなくなったということなのだろうか。

とりあえず、エンドロールにスペシャル・サンクス「三木孝浩 月川翔」というクレジットがあったのは、こうしたジャンルの巨匠やヒットメーカーをリスペクトするという意味合いもあるのだろうということは理解できた。

三木孝浩は「思い、思われ、ふり、ふられ」の監督だし、月川翔は作中で主人公カップルが見たい映画として言及していた「キミスイ」の監督だしね。
まぁ、2人とも本作のYuki Saito監督と同じ所属事務所らしいから、色々と協力とかアドバイスはあったのかもしれないが。

とりあえず、本作で一番気になったのは日付的・時制的な部分かな。
 
しつこく何度も11月1日(月)と表示された目覚まし時計の画面が映し出されるので、途中で黒板に12月1日(月)と出た時に混乱してしまったが、どうやら、12月1日というのは主人公カップルが付き合うことに決めた日で、何度も繰り返すことになる日がそれから約2年後の11月1日だということは理解できた。

間に閏年がなければある年の12月1日(月)の約2年後の11月1日が月曜日になるので、この曜日配置はデタラメとは言い切れないということは分かった。ただ、作中にスマホが出てきたことを考えると、少なくとも高校生が普通にスマホを持てるようになったのは2010年代になってからだと思うので、少なくとも2022年までにはこういう曜日配置の年ってないんだよね。近未来の話か?

というか、主人公カップルは付き合うことを決めた日に「キミスイ」が見たいと言っていなかったか?
実写映画版の公開は2017年7月、アニメ映画版の公開は2018年9月だが、どちらの年も12月1日は月曜日じやないし、そもそも、12月1日はその辺のシネコンでは上映していないのではないか?
作中ではイオンシネマもどきのシネコンが出てきたが…。

あと、彼氏がこっそりバイトしていた理由は、“”付き合いはじめて1年目の記念日にプレゼントを渡せなかったから”とか言っていたけれど、付き合いはじめて1年目というのは付き合いはじめた日からカウントされるから、丸1年という意味で言っているなら2年目の記念日なんだよね。だから、1年目ではなく1周年の記念日と言うべきなんだよ。

小説とか脚本を書いている人でも○年目と○周年の違いが分かっていないのが多すぎる!

それから、作中でも言及されていたけれど、高校生カップルがわざわざ、毎月1日の映画ファン感謝デー(今はファーストデイと呼ばれている)のみに映画館へ行く必要なんてないんだよね。
というか、今の平均的な入場料金形態(TOHOシネマズ基準)だと、ファーストデイの入場料金は1200円、高校生は全日1000円だから、ファーストデイの料金で入場したら通常より高くなるんだよね。

オチに関しては、「ルル・オン・ザ・ブリッジ」や「ジェイコブス・ラダー」を思い出した。
要はタイムリープではなく生死の境目に見た走馬灯の一種ってことでしょ。
となると、ラストの回想シーンで、主人公が意識を失っていた期間に見た走馬灯のようなものが振り返られるってのはおかしくないか。しかも、彼氏目線の回想なのに、主人公の走馬灯が回想されるっておかしいだろ!

あと、実際はタイムリープではなかったけれど、タイムリープとかタイムスリップする際は時計台に雷が落ちるというの、いい加減やめろよ!
「ブレイブ -群青戦記-」の実写映画でもやっていたよね。
まぁ、それだけ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の印象が強いんだろうけれどさ。

主人公に密かに恋心を抱いている男子が登校時に、ひょっとこのお面を被っているのは、もしかすると、「ハッピー・デス・デイ」(これも同じ日を何度も繰り返す話)のお面をかぶった殺人鬼を意識している?

それと、タイムリープは関係ないけれど、英語の小テストが始まる時に終業チャイムが鳴るのはおかしい演出だし、英語教師がOh My Godをオー・マイ・ゴッドというのはおかしい。英語教師ならオー・マイ・ガッドと言うのでは?

まぁ、自分は福本莉子や莉子を可愛いと思っているので、そこまで腹は立たなかったけれど、この2人に興味がない人、ましてや、ジャニオタでない人だったら発狂するほどのクソ映画だと思うって感じかな。
 
ところで、頭に配給のハピネットのロゴが2回出たけれど上映ミスかな?
最近はそうでもなくなったけれど、TOHOシネマズ日本橋って、かつては上映ミスが多かったからな…。

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