アルタ前_3

何故このタイミングなのだろう。
もやもやした気持ちを抱えながら地下道をひた歩く。

(遥か彼方の記憶として、少しばかりの引っかかりをもって
蓄積されたものにすぎなくなった)
連絡を取ることが減り、互いのことを思い出すこともままならなくなった。
Kに限らずだが、多分そのようにしてかつての旧友を忘れていく。
結びつきのようなものが、気づいた時にはさびだらけになっている。

18:38。アルタ横の階段から地上に出る。細かな霧雨がほの白く辺りを覆いつ
くしている。電光掲示板やネオンの光が自らの存在を朧げにしている。

Kだ。アルタ前正面出口を背にしてやや左手、ガードレールに体をもたげるようにして、佇んでいる。

よれた黒いパーカーに灰色のスウェット。パーマを当てているのか、前髪の先端がややねじれている。おそらく使い古しているであろうサンダルのかかとが少し擦れている。



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