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『前庭疾患』について──16歳の柴犬の場合(その3)


ようやく食欲が戻る

2022年11月16日の夜、前庭疾患を発症した柴犬どんべえ。ようやく食欲が戻ってきたのは18日後の12月4日でした。

前回の記事にも書いたように、それまでは流動食「キドナ」を50グラム前後と犬用チュール、そして「馬肉おやつ」や「さつまいもボーロ」などのお菓子くらいしか口にできなかったのですが、この日は発症してから2度目のウンチを出したことで(しかも結構長めのやつ)、ちょっとお腹が空いたのかも知れない。

朝は蒸したサツマイモに牛乳を混ぜ、ブレンダーにかけてペースト状にした鶏肉と一緒に器に入れ、野菜と鶏肉の煮汁で雑炊のようにして出したところ、シリンジを使わず直接「経口摂取」してくれました。この時は本当にホッとしました。

夜になると、健康時の半分くらいは食べられるように。ただ、どういうわけか器から水を飲もうとしない。器を口元に近づけるとびっくりして顔を背けてしまいます。

長いことシリンジで水を与えていたせいで、口から水を飲む方法を忘れてしまったのでしょうか。この状態は結局今も続いており、「水分摂取をどのように行なうか?」は常に課題です。

食欲に関しては12月4日以降、決して右肩上がりに回復したわけではなく、一進一退を繰り返しながらちょっとずつ食べる量が増えていく感じでした。

しばらくは、先ほどの「雑炊」にお米を混ぜて与えていたのですが、食べるには食べるけど、食欲のギアがかかるまで結構時間がかかる。なので食餌の間は、時おりスプーンで器の中身をかき混ぜたり(香りで食欲を増進させるため)、煮汁をちょっとずつ足したりしながら付きっきりで見てあげなければなりません。

動物病院の先生には、「今は食べたいものを食べるだけ与えてください」と言われていたので、とにかく試行錯誤しながらどんべえの好物を見つけ直すことに。年齢とともに味覚が変わってきたらしく、以前好きだったものを食べなくなったり、以前はそんなに食べなかったものを、喜んで食べるようになったりしているのは興味深いです(人間も同じか)。

徘徊が始まる

ご飯が食べられるようになり力が湧いてきたのか、発症から20日が過ぎた頃になると、ふらつきながらもよく歩くようになってきました。

「歩く」というか……まるで認知症の老人のように、部屋の中をいつまでもぐるぐる徘徊する。放っておくと、椅子の下に潜り込んで出られなくなって大騒ぎしたり、電気ストーブに激突しそうになって慌てて方向転換させたり。それが昼夜問わず延々と繰り広げられるので、夜も断続的に起こされ常に寝不足状態。

いやー、これもきつかった。それまでのストレスに加え(詳細は前々回の記事に書きました)、年末で仕事も立て込んでいたのでもうぐったり。犬と比べるのはどうかと思いますが、老人介護の大変さをほんの少しは想像できるようになりました。

以降、徘徊は治るどころか激しくなる一方。あちこちに体をぶつけて生傷を作るようになってきたので、いろいろ検討した結果、アウトドア仕様にもなっている折りたたみ式の「八角形ペットサークル」を、12月半ばくらいに導入しました。

サイズは M、L、XLと3種類あり、XL(直径150センチ)にしたらかなりデカい……(笑)。でも、この中なら怪我をすることもなく好きなだけ歩き回ることができます。長時間の留守番も、以前よりは心配事が減りました。

ちなみにこのペットサークル、現在もめちゃくちゃ重宝しています。前庭疾患の後遺症で徘徊は続いているので、基本的にどんべえはこの中で生活するように。サイズは先日、XLからL(直径114センチ)にダウンサイズしましたが、この大きさでも今は充分です。

前庭疾患の発症から1ヶ月が経ち、ずいぶんまっすぐ歩けるようになり食欲もかなり回復しました。ご飯もブレンダーでペースト状にしなくても、普通に食べられるように(水分補給のため、煮汁は多めで雑炊状態で出しています)。水を飲むのもやっとだった1ヶ月前のことを思い返すと、感慨深いものがあります。

前庭疾患の後遺症

さて、現在(2024年1月)のどんべえは、前庭疾患を「完治」させたと言えるのか。

結論から言うと、完治はしていません。前述のとおり、今は「前庭疾患の後遺症が残った状態」です。

いっときは完治したと思いました。昨年の5月頃など、散歩中に小走りするくらいまで元気を取り戻し、散歩の距離も時間もめちゃくちゃ長かったんです。

ところが、7月くらいから徐々にふらつくことが増え、まっすぐ歩けなくなり、家の中では時おり火がついたようにグルグル旋回するように(そのうちバターになっちゃうんじゃないか?)。捻転斜頸も、以前ほどではないけど出てきている。2022年12月ごろに逆戻りです。

ただ、眼球が小刻みに動いていたり、目が回って立てなくなってしまったり、食欲が減退したりしているわけではなくて。「前庭疾患がぶり返した」というよりは、「後遺症がしっかり残ってしまった」という感じかも。後遺症だけでなく、老化による筋力の衰えも当然あると思います。なにせ17歳と7ヶ月、あと半年足らずで18歳ですから。

どんべえにとって、以前のように自由の効かない体はもどかしいかもしれないけど、彼が少しでも快適に過ごせるよう今後も試行錯誤を続けていきたいです。

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