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押上〜曳舟、鐘ヶ淵、隅田川東岸を歩いてみた(押上「かつてのバイト同僚との再会」編)

27歳まで住んでいた街に唯一あった電車「都営浅草線」。旅の始まりは必ず都営浅草線だった。旅だけじゃない。学校も仕事もそうだ。嬉しい気分の時もあれば、辛い気分の時もあった。都営浅草線には様々な想いが詰まってる。そんな都営浅草線の始発駅が僕の最寄り駅だった。そしてその電車の終着駅は「押上」だった(押上の人にとっては僕の最寄り駅「西馬込」が終着駅だろうけど)。

「昔から名前は知っていたけど一度も行ったことのない街」押上に何となく行ってみたくなった。僕が今住んでいる井の頭線からは渋谷を経由で乗り換え一回で行くことができる。天気も良い。未知の街「押上」を見てこようではないか。そうして家を飛び出した。

押上駅は住所で言うと東京都墨田区押上というとこにある。2012年に東京スカイツリーが開業したことにより、飛躍的に知名度が上がったのではないだろうか。実際に押上駅の1日平均の乗降人員数を見ると、2011年まではだいたい18万人前後だったが、2013年以降は20万人を超え、しかも年々増えている。

押上駅に到着し、地上に出ると眼前にはスカイツリー。さすがにこの距離で見ると迫力ある。しかし、今回は押上を北上して曳舟、鐘ヶ淵の方面に行こうと思ってる。ということでスカイツリーを背に、四ツ目通りを北上。浅草通りとの交差点を渡ると北十間川(きたじっけんがわ)。きれいに護岸されていて、憩いの場に良さそうだ。ただの運河かと思ったら荒川水系の一級河川みたい。

旧知の人物との再会

しかしお腹がすいた。スマホで時間を確認すると12時をすぎていた。散策の前にまずはこの辺で何か食べることにした。「何かこの辺で美味しい店はないかな?」とおもむろに『食べログ』を開く。すると上位にどこかで見た名前の店が出てきた。

「押上猫庫…」

そうだ、思い出した。かつて(もう16,17年前になる)バイトしてた時の同僚が働いている店だ。2012年くらいに突然Twitterで「お店を開くことになったので、HPを作ってくれないか」とDMをもらった。その依頼は断ったのだが、それ以来、お店のTwitterアカウントをフォローし、たまにTLに流れてくるのを見て「まだやってるんだなぁ」とぼんやり存在は認識していた。

せっかくだから行ってみよう。下町っぽい食べ物を食べたかったが、せっかくだからその店に行ってみることにした。カフェっぽいけど、まぁいいか。

押上猫庫(おしあげにゃんこ)は、可愛い猫の雑貨に囲まれた空間で
猫をかたどった3Dラテアートや、自家焙煎珈琲が愉しめる「猫のいない猫カフェ」。
http://www.oshiagebunko.com/

押上を抜け、四ツ目通りをどんどん歩いていくとやがて東武の踏切にぶつかる。その直前の路地を入ったとこに押上猫庫があった。わかりにくい。わかりにくすぎる。入口からちらりと中をのぞくとお客さんであふれていた。大繁盛じゃねーか。席も空いてなさそうだし帰るかと一旦は背を向けたものの、せっかくだからと意を決して入口の扉を開けた。

「カウンターでよろしければどうぞ」

店主と思われる男性が声をかける。小さな厨房の前にあるカウンターに促され席についた。店内をちらちらと見回してみると、ほとんどが女性客。外国人の姿もある。満席だ。食べログによると、どうやら「猫の3Dラテアート」が人気のようだ。ちょうどその外国人のテーブルにラテアートが運ばれた。笑顔で、いろんな角度でカップの中の「猫」見て、写真を撮っていた。

自慢のラテアートを作っているのは、僕の目の前にいる女性スタッフのようだ。この女性スタッフこそかつての同僚Sさんだ。Sさんはテキパキとラテアートを作っていた。おそらく店内全てのお客さんが注文するであろうお店の看板メニュー。Sさんは手元を見ながら「いらっしゃいませ」と言った。「どうも」と小さく返事した。

ラテアートは時間がかかりそうだったので、ランチメニューを注文した。しばらくすると料理が運ばれてきたので、もくもくと食べていたら、Sさんがひと段落ついたのか話しかけてきた。店主と思われる男性もいろいろ話しかけてきたので、しばらく普通に会話をしていたが、そろそろ正体を明かそうと思い、「昔、バイトで一緒でした、僕」と言ってみた。Sさんは「えっ?」という表情で僕を改めて見てきた。そして「あ、大柴くんだ」と言った。どうやら覚えていたようだ。16,17年ぶりの再会である。

(謎のランチメニュー)

Sさんは「大柴くんはインターネットの業界で頭角をあらわした」とか「女性だけの職場に唯一の男性で変な人だった」とか「栗の模様の服を着ていた」などと店主と思われる男性に説明した。あぁそういえばあの頃『Laundry』の栗のキャラクターのついたスウェットを気に入ってよく着てたのを思い出した。Sさんから「大柴栗」って呼ばれてたんだった。今考えるとなんだよ「大柴栗」って(笑)。

ちなみに店主らしき男性は店主のようで、また、昼は「押上猫庫」というカフェ、夜は同じ場所で「押上文庫」という酒処をやってるようだ。文学などが好きで、「この辺を散策するならば」とお手製のガイドをもらった。

【次回予告:曳舟・鐘ヶ淵「荷風の記憶を探して」編】

街歩きで生計をたてて生きていきたい...