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中途半端なプロより熱狂的な素人になれ~後編~

前回の記事では、元NHKプロデューサーで今は株式会社小国士朗事務所でプロデューサーとして活躍される小国さんのお話を聞いての企画のヒントについて書きました。
後編では、数々のユニークなプロジェクトへの人の集め方、維持の仕方、小国さんが今後やりたいことなどについて書いていきます。最後に私の質問に対しての小国さんの回答も。

独立してから

社会課題と向き合い続けたNHK時代。その公共性、リソースの豊富さで数々の番組を世に送り出してきた小国さんですが、あるとき歯がゆさを感じたと言います。

「安全な場所にいて撮影していることがもどかしくなったんです。報道のスタンスに関わるかと思いますが、困っている人がいたら撮影して広く状況を知らせるスタンスがあり、一方で手を差し伸べるて助けるスタンスがある。後者は自ら介入して状況を変えることになる。そのジレンマに悩みました」

会社を出てもっとダイレクトに世の中を変えることに取り組みたい、と思ったそうです。
そして独立してからは、「やりたい仕事だけをやろう」と心に決めて。

やるかどうかの判断は、「心が動くかどうか」。心が動くとは、自分の貢献余地を見つけてスイッチが入ること。小国さんはお父様から言われた言葉で印象に残っていることがあると話していました。

「自分の心にだけは嘘はつけない」

自分の心を欺かず、心の声に耳を澄ませること。熱意を発揮できるかどうかとも密接に関係していそうです。

メンバーを集めるときに大事にしていること

プロデューサーとして、関わるメンバーを見つけて口説くのも小さんの仕事。人の集め方やチームの維持の仕方。ここにも金言がたくさんありました。

人を集めるときに大事にしている2つのこと

・この指とまれ、の「指」に込めるメッセージを十分に練る
・人を肩書ではなくエピソードで覚える

前者は、「企画の純度を上げる」と同義かもしれません。そして後者は「肩書がもたらすステレオタイプ」を排除してその人らしさを記憶するための手段かと。

どんな人を誘うか

①100%面白がってくれる人
②自分にできないことができる人
③自分の利益を捨てられる人

「持ち帰って検討します」という方はその時点で難しい、と言います。また、「自分の利益を捨てられる人」かどうかをどう見極めるのですか?という質問に対しては、「最初の印象でガツガツしすぎていないか。ただ見抜けなくて途中で自分の利益が捨てられない人だとわかったとしても、まわりと価値観がずれてくるのでその人自身が居づらくなって去ることが多いですね」と。

チームの維持の仕方

ルールではなく行動規範を提示すること。
例えば、「明るく 軽く 柔らかく」
社会課題を議論していると、眉間にしわが寄ってきて正義をうたって「〇〇しなければならない!」となってしまいがちですが、そうならないような行動規範を設けているそうです。

その中でのリーダーの小国さんの役割は「父になる」こと。(映画「そして、父になる」の福山雅治のイメージ)。よりハードな状況になった最近は、父を上回る祖父キャラが登場したそうです。メンバーのごたごたをニコニコして聞いて受け止める好々爺。まさに「明るく 軽く 柔らかく」を体現している存在です。

「悔しい。けど面白い!」と思われる企画を

今後については「過去に嫉妬されるが未来に真似される企画をやりたい」そうです。そして、「社会課題を楽しいものにしていきたい」と。
今まで手掛けてきている企画もまさしく社会課題を楽しい活動に変換しているもの。

「社会課題のほとんどは、社会受容の問題でもあるんですよね」

小国さんのこの言葉が腑に落ちたのは、「明るく 軽く 柔らかく」を聞いていたからだと思います。柔らかくなければ、受容ができない。

最後に、質問をしました。

企画がシャープにならなくて悩んでいます。何が不足しているのでしょうか?

小国さんの答えは、
素人の視点に立ちきれていないのだと思う。バカになりきれていないんじゃないですかね?と。
うーん、確かに。「Cを消してください」とクライアントに交渉に行くなんて、普通は「いやいや無理でしょ」と思ってしまいそうです。実際、企画を持ち込んだクライアントに苦笑されることもあったとか。それでも実現までこぎつけたのは、「自身が一番熱狂して、バカ(クレイジー)になっていた」から。

そうか、まずは自分がクレイジーになれるくらいの企画なのかな?と自分の心に聞いてみようと思いました。

社会課題に明るく取り組む小国さん。今後もどんなアイデアを咲かせてくれるのかめちゃくちゃ楽しみです。予定を大幅に延長した3時間にわたるトーク、とても実り多いものでした。ありがとうございました!

最後に、素敵なグラレコを描いてくださった、しゅずいさんの写真を。
3時間の話が1枚にまとまっています。グラレコできる人、ほんとすごい!


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