こんなはずではなかった。首のコルセットと鎮痛剤が手放せない今の現状。
10月29日、日曜日の明け方。
今頃私は、長い付き合いのあるモデルさんと一緒に、琵琶湖のほとりで作品撮りをしているはずだった。
それなのに、実際の私は薄暗く散らかった部屋で、首にコルセットを巻きながら痛みに唸っている。
叩きつけるようにキーボードを打つ両手の傍には、ロキソニンSプレミアムの抜け殻が散乱している。
こんなはずではなかったのに。
どうしてこんなことになってしまったのか、順を追って筆を進めていきたい。
事の経緯
最初に首の違和感を覚えたのは、4日前(木曜日)の昼過ぎだった。
いつものように仕事でパソコンに向かっていた私は、首の後ろと右側の後頭部に突っ張ったような痛みを感じた。
以前、寝違えて首を痛めた時の感覚ととても似ていたので、今回も寝違えてしまった痛みが時間差で来たのかなくらいにしか思っていなかった。
翌日の金曜日、首と頭の痛みは更に激しくなった。
なんとか自分を誤魔化しながら仕事をしていたものの、夕方には我慢ができなくなり、夕方に職場を早退して近所の病院に駆け込んだ。
実際には30分ほどだっただろうが、永遠に思える時間を待合室で過ごしてから診察室に呼ばれたところ、診断はすぐに下され、緊張型頭痛ということだった。
緊張型頭痛とは何か、ということについては後述するが、要はデスクワークやストレスによって引き起こされる頭痛らしい。
変な病気ではなさそうだと安心して帰宅し、処方してもらった薬を飲んで首にコルセットを巻くと、少し楽になった気がした。
次の日には大切な作品撮りを控えていたため、「次の日には元通りになりますように」と願いながら眠りについた。
目が覚める直前まで見ていた夢の輪郭が薄れていく中、久しぶりに痛みから解放された感覚があった。
「もう治ったんだ、良かった」と安堵したのも束の間、後頭部に激痛を感じ、一気に現実に引き戻された。
ヒュッと息が止まり、体を微塵も動かすことができない。昨日よりも約5倍は痛い。治るどころか、悪化している。
痛みに支配される頭の中で、今後のスケジュールを整理した。
昼過ぎには家を出て夕方に京都入りし、それから滋賀まで足を伸ばして前泊し、日の出と同時くらいの時間に琵琶湖のほとりで撮影をする。・・・可能だろうか。
私には、どうしても今回の作品撮りを決行したい理由があった。
一緒に作品撮りをするのが、長い付き合いの、私が最も信頼を寄せる大好きなモデルさんであり、そのモデルさんと私の間のある共通点に焦点を当てた思い入れの深い作品を撮る予定だから、というだけではない。
実は先日家を購入し、12月に引っ越しをする予定なのだが、11月からは引っ越しの準備や後片付けに専念するため、当分作品撮りや仕事の撮影をお休みする予定だった。なので、今回の撮影は、活動休止前の最後の作品撮りという位置付けだった。
それに、最近は有難いことに仕事関係の撮影をさせていただくことが多く、純粋に私のためだけの作品撮りをするのは本当に久しぶりのことだった。
そのため、日曜日の早朝の作品撮りは私にとっては何としても実現させたい撮影だった。
鎮痛剤を飲めばきっと効いてくれると信じ、処方された鎮痛剤を2錠、水で流し込んだ。
数時間後、私は鎮痛剤が効かない現実に絶望していた。
医師からは、鎮痛剤を追加で飲む場合は5時間は間を空けてくださいと言われたが、もうそれどころではなかった。この痛みが治るのであれば何でも良いという気持ちになり、市販の鎮痛剤も服薬した。
家を出なければならないタイムリミットが迫る中、必死の思いで髪を洗い、眉毛を整えようと剃刀を眉毛に当て、首を僅かに傾けた。
その時、稲妻が落ちたような激痛が後頭部に走った。
剃刀が机の上に落ちて乾いた音を立て、ああもうこれは無理だと悟った。
モデルさんに撮影を延期したいことと、お詫びの言葉をLINEに打ち込みながら、涙が止まらなかった。
体調のことは予め伝えていたものの、処方された薬が効いてきているのできっと大丈夫と楽観的な予想を伝えてしまっていたため、きっと驚いて失望しているだろうと思ったが、私の体調を心から気遣う旨の返事がすぐに帰ってきた。
それから、宿泊する予定だった宿に電話をかけて平謝りし、キャンセル料の支払い方法について問い合わせると、「体調不良なのにむしろ申し訳ないです・・・またお泊まりに来てくださいね」と優しい言葉をかけていただき、また涙が溢れた。
泣いていることを悟られないように「年明けに改めて宿泊させていただきます」と言葉を絞り出して、逃げるように電話を切ってしまった。
キャンセル料として宿泊料の100%を振り込む手続きを終え、机に突っ伏して号泣した。
当日の直前キャンセルという、私が最も忌み嫌う行為をしてしまったこと。
仕事で忙しいモデルさんが貴重な2日間を空けてくれていたのに、台無しにしてしまったこと。
私が泊まる準備をしてくれていたであろう宿の方々に迷惑をかけてしまったこと。
2ヶ月間も頭の中に思い描いていた、大切な作品撮りを実現できなかったこと。
この時に感じた申し訳なさ、居た堪れなさ、悔しさは、物理的な痛みよりも辛いものだと痛感した。
緊張型頭痛とは
私が診断された「緊張型頭痛」という言葉は、これまでの人生であまり馴染みがなく、何となく聞いたことがあるくらいだった。
バファリンの公式ウェブサイトでは、緊張型頭痛が起こるきっかけがこう説明されている。
思い返せば、私は普段から1日の大半をデスクワークの仕事に費やしており、最近は写真の編集や執筆の仕事を職場の昼休み中にもこなしていた。
そして、家の購入に至るまでは本当に波瀾万丈な経緯があり、ローンの審査や引っ越し関係の諸々の手続きなどを通じ、精神的な負荷がかかっていたのだと思う。
発症する原因としては心当たりがありすぎる。
また、同サイトには緊張型頭痛の特徴について以下の通り記載されている。
この文章を読んでいて、あれ?と思った。
まず、私が痛みを感じているのは頭の両側ではなく、右側だけだ。
そして、脈動するようなズキズキした痛みが、体を少し動かすだけで襲ってくる。
緊張型頭痛について説明された他のサイトも読んでみたが、私の症状は典型的な緊張型頭痛には当てはまらない気がした。
もう少し調べていくと、偏頭痛と緊張型頭痛のハイブリッド型というものも存在するらしく、白か黒かで診断のつくようなものではないのだろうと理解した。
日常生活に及ぶ様々な影響
私は決して頭痛持ちではないのだが、前職で夜中まで働いていた時は、疲れのせいかこめかみの辺りが痛くなってしまうことがたまにあった。
それでも、今回襲ってきている頭痛は、これまでの人生で体感した頭痛の中でもトップクラスのものだと感じている。
この頭痛を抱えながら過ごす日常生活にどのような影響が出ているのか、具体的に書き連ねてみたい。
・家の階段を降りる時は頭の揺れを最小限に抑えるよう、1段につき3秒くらいかけて降りる
・一気に寝返りを打つと激痛なので、体の角度を少しずつ変えながら寝る姿勢を変える
・ゼリーの中のナタデココを食べるために口を開けると激痛なので、麺を啜るように息を吸い込みながら食べる
・白菜を包丁で切るために力を入れるだけで激痛(その後夫に切ってもらった)
・面白い動画を観て笑うと激痛(両足をバタバタさせて笑いたい気持ちを発散させる)
私が調べたサイトでは、緊張型頭痛の痛みは日常生活に支障が出るほどではないと書かれていることが多かったが、嘘だろ・・・と思ってしまった。
私が特別痛みに弱いのだろうかとも考えたが、私は毎月のように生理痛に苦しめられており、ベッドの中で体を丸めながらのたうち回ることも珍しくはないので、痛みにそこまで耐性が無いわけではないだろうとも思うのだが。
世の中には私が想像もつかないような痛みと闘っている人が大勢いるので、このくらいの痛みでは一般的に激痛とは呼べないのだろう。それでも、主観的に痛いものは痛いのだ。
病院で処方された薬の中に、筋肉の緊張を和らげる錠剤がある。
その薬を飲むと頭がぼーっとし、1時間も経たずに眠りに就いてしまう。そのせいか、昨日は寝たり起きたりを繰り返していた。
頭痛を最も辛く感じるのが、目が醒める瞬間だ。
意識が水底から浅瀬に浮かび上がっていくような感覚の中では、痛みをほとんど感じない。なので、もう治ったのではないかと淡い期待を抱いてしまう。
そこで、鎮痛剤の効果が切れた剥き出しの痛みが牙を剥き、私の期待を粉々に打ち砕く。
更に、首にコルセットを巻いているせいか、体の中の熱を上手く放出できず、身体中がガーッとサウナの中にいるかのように熱くなる。
痛みと暑さに呻きながら、少しでも楽な体制になろうと身を捩ると、更なる激痛が襲ってくる。
そして、「慢性型だとしたら、一生この痛みと付き合っていかなければいけないのか」「仕事や撮影を続けることはできるのかな」と、マイナスな方向に考えが引きずられていく。
今後の教訓
正直、今は痛みの真っ只中におり、今後のことをなかなか考えられる状態にはない。
それでも、自戒の念も込めて特にデスクワークをする読者の方に伝えたいのは、「根を詰めて机に向かいすぎないでください!」「机に向かう時は、まめにストレッチなど体を動かしてください!」ということだ。
具体的には、30分から40分の間に1回は席を立って体を動かすことを医者からアドバイスされたので、これからは意識的にストレッチ休憩を挟むよう心がけたいと思う。
それから、ストレスを溜めすぎない生活を送ることも、緊張型頭痛の予防になるだろう。
こうやってPCに向かってnoteを書くことも、長時間であれば推奨されないのだろうが、私にとっては文章を書くことがストレスの軽減に繋がるので、体調と相談しながら執筆は続けていきたい。
しっかりと休養をとって、今後の引っ越しと、その後の作品撮りのリベンジに備えたいと思う。
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