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5月に読んだ本📚

「スピン7」河出書房新社

スピンの素敵なところは小説だけではなくて(楽しみにしている連載も、もちろん好きだけど!)詩やエッセイや紙についてのお話や、絶版本についてなどなど、いろんな方向から物語の世界へのアプローチがあることだと思う。

今回の「本が物質として浮かび上がり輪郭が見えてくるまで」というデザイナーさんのお話もよかった。

私は本は文庫本よりも圧倒的に単行本が好きで、それはひとえに装丁を愛でるのが好きだからです。
装丁が語る物語の片鱗に触れるのが好きだから。
花布、扉、スピン、見返し、カバー…そこから立ち上がる物語の面影を見るのが好きなんです。
だから、装丁やデザインに関わった方のお話はとても興味があります。

デザイナーさんが原稿を読み終わった後に著者の既刊や書評、本文中に登場した事物を調べ、図書館で借りたり、購入して、原稿をいろんな角度から見つめ、考えて、用紙や色やデザインに思いを巡らせ1冊の本の形を作り上げていく…という2ページあまりの短いこのお話に引き込まれるように惹かれながら読みました。

「この本たちはきっと百年後の読者にも響くはずだという思いから、帯が外れてカバーが失われて表紙だけになったとしても、言葉の異なる国へ運ばれたとしても読者に届く造本を目指した」

こういう本がたまらなく好き。

「月の影 影の海(下)」小野 不由美さん

おもしろかったー!
少しでも隙間時間ができると夢中で読んでました。(10分とか15分とかでも!)

上巻での、これでもか!これでもか!と追い討ちをかけるように襲いかかる辛い出来事に、本当にどうなることかと思っていたら…現れましたよ…天使が!!
半獣のネズミ姿の楽俊…本当支えだった…

「おいらは陽子がどんな国を造るのか見てみたい」

心に灯火をもらえたような言葉だった。
楽俊だから、楽俊の言葉だから、楽俊だからこその混じり気のない気持ちの言葉だから、手のひらに大切に受け取って心に収めたくなる。
楽俊…ありがとう!

そして上巻からの謎が次々と解き明かされていく様に、何度、心の中で「おぉ〜!!!」「そういうことなのかー!!」と叫んだことか!
本当、おもしろかった〜!

私は何も知らない状態で本を読むのが1番好きなので、文庫本の裏のあらすじも読まないことが多いです。
この「十二国記」も前情報をいっさい入れずに読んでます。
ラストの方がちょっと駆け足気味になってて(景麒との再会とか、最後の文献を引用したみたいな文とか…)んん?となってます。
次巻「風の海 迷宮の岸」ではラストの文献(みたいな)で書かれていた部分は出てこないのかな…?
もしそうだったら残念だな。ガッツリ物語で読みたかったな〜
兎にも角にも!次巻が楽しみ!

「誰にも奪われたくない/凸撃」児玉雨子さん

どうしてこの2つの短編が並んでタイトルになっているのか、読了して、なるほど〜と思った。
2つで1つの作品なんだ。

共通する2人の登場人物がいる。だけど、その2人はどちらの世界でも重要人物…というわけではない。
わけではないけど、だけど、キーを握っている。
タイトルから想像していたのとはちょっと違った物語だった。
その違い具合が、とても児玉雨子さんだと思った。

理解できた…とは言えない。
言えないけど…マグマのように熱く、隔絶された冷たさでもある「存在」へ対する1つの思いを受け取った。

内面に渦巻く思いを閉じ込めていた蓋がずらされ、その深淵に触れた気がした。

「ビブリア古書堂の事件手帖IV 〜扉子たちと継がれる道〜」
三上 延さん

よかった…!!
2年ぶりに刊行された「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズの最新刊。

戦中、戦後の厳しい時代に鎌倉に住む文士たちが「人間には書物が必要」と自分達の貴重な蔵書を持ち寄り立ち上げだ貸本屋「鎌倉文庫」
智恵子さん、栞子さん、扉子ちゃん、三世代に渡る「本の虫」たちが失われた鎌倉文庫の謎を解き明かしていく物語です。

これ!これだよ!
あぁ、ビブリア古書堂の事件手帖だ…!と、高揚感に舞い上がるような気持ちで読み進みました。

「令和編」の高校生になった栞子さんの娘である扉子ちゃん
(もう高校生…大きくなったね…としみじみ)
「昭和編」の高校生(!)だった栞子さんのお母さんである智恵子さん
(智恵子さん!あの智恵子さんの高校生だった頃…!!)
そして「平成編」で高校生だった栞子さん
(スイッチが入って覚醒するのはここからだったんだ…)

3世代の親子が同じく高校生だった頃を軸に物語は進みます。
まさしく道は繋がっている。
1つの真相に向かって母と娘たちは時のバトンを継いで歩んでいきます。
このシリーズだからこそできる物語だと、胸が熱くなりました。

あとがきに「次の巻もよろしくお願いいたします」ってあったから、またビブリア古書堂の事件手帖が読めるんだ!
うれしい…!

本書で明かされた智恵子さんの複雑な家族の事情。
智恵子さんを形造る輪郭に触れた気がした。
そして、栞子さんのお父さんである登さんとの出会い。
2人はお互いをちゃんと大切に思い合っていたことがわかって、うれしかった。
智恵子さんのことをもっと知りたいな。

「はなとゆめ」冲方丁さん

大河ドラマ「光る君へ」の中関白家の描写があまりにも不当に貶められているようで、それが悲しくて、もう1度私の知っていた定子さまをはじめとするご家族の姿を取り戻したくて読み返した「はなとゆめ」でした。
数年ぶり…5年ぶりくらいの再読でした。

読み返して、本当によかった。
この物語に初めて出会った時の、心を丸ごと持って行かれた時の、あの気持ちが更に色彩を濃くして激しく胸に迫ってきました。
私も清少納言と気持ちを重ねて読み進めていました。

「わたしは、花を見ることができた己の人生を喜び続けます。花を愛しく思うことを決してやめません。花を通して夢見たもの全てが、そのときも今も、そしてこれからも、わたしをわたしでいさせてくれるのですから。」

気持ちを重ねた清少納言に伝えたい。
あなたの大切な「枕」は千年の後にも多くの人に読み継がれ、そして、はなとゆめを見せ続けてくれています、と。

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