国産ウイスキー 高値が続くワケ
世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは「国産ウイスキー 高値続くワケ』。芳醇な香りと様々な楽しみ方で広く愛されるウイスキー。日本産の世界的な評価が高まっています。毎年開かれている世界的な品評会「ワールド・ウイスキー・アワード」で今年3月に受賞銘柄の発表があり、日本産は3部門で金賞を受賞しました。評価の高まりで人気も急上昇。ここ数年、人気銘柄は品薄が続いています。
そもそも国産ウイスキーとは。日本洋酒酒造組合が2021年に国産ウイスキーの定義を決めました。4つの要件があります。
2010年ごろから国際的な評価が高まる中で「国産ウイスキー」のブランド毀損を防ぐのが狙いです。海外で製造されたウイスキーの原酒を、国内で瓶詰めした製品が「ジャパニーズウイスキー」を掲げて国内外で流通しているなどの問題があり、消費者の混乱を避ける狙いもあります。
オークション相場が高騰
店頭ではなかなか手に入りにくいので、ネットオークションなど2次流通市場の取引価格が高騰しています。こちらがネットオークション情報サイトのオークファンがまとめた数字です。
人気銘柄はどれも希望小売価格の2~3倍で取引されています。全体的に一時より下がっていますが、過熱気味だった相場がやや落ち着いているだけです。
メーカーも価格を引き上げています。サントリーは11品目のメーカー希望小売価格を7月出荷分から16〜20%引き上げると発表しました。2022年10月にはアサヒも値上げを発表しています。値上げの背景には原材料費や輸送費の高騰などがありますが、特徴的なのはサントリーの値上げで新たな設備投資を理由としています。滋賀県に貯蔵庫を増設するほか、山崎蒸溜所と白州蒸溜所の2拠点を改修します。
各地で新規参入相次ぐ
大手以外にも各地で続々と新規参入企業が出ています。去年、国産ウイスキーの販売を開始した茨城県の木内酒造を取材しました。創業200年を誇る酒造メーカーで日本酒にビール、梅酒に果実酒と数多くの商品を製造・販売しています。去年から販売を始めたのが、その名も「日の丸ウイスキー」です。
昨年販売を始め、ほぼ全て完売しました。今年の1月からは海外でも販売。アメリカと台湾で約3000本を出荷し、売れ行きは好調です。木内酒造洋酒製造部ゼネラルマネージャーの谷幸治さんは「日本のこの地にある蒸留所として地域の大麦、地域の原料を使って、製品を作っていきたい。最近の消費者は商品のその奥にあるストーリーを楽しみながら飲むのを意識している。しっかりと応えられるブランドを築き上げたいなと思っている」と話します。国内はもちろん、アメリカや台湾など複数の国や地域で「日の丸ウイスキー」の販売を今年中に展開していく予定です。木内酒造も原材料費の高騰の影響を受けており、原料となる大麦の値段は2020年と比べて1.8倍、熟成樽の値段は2倍にまで跳ね上がっているそうです。
値段の方程式です。
国産ウイスキーの値段=国産人気の高まり+原料費の高騰+熟成樽の取り合い
原酒不足の解消には数年かかる
今後の値段はどうなっていくのでしょうか。現在の品薄を招いている最大の要因は国産のウイスキーの原酒不足です。大手の設備増強や新規参入で今後は原酒生産量も増えていきます。ただ、ウイスキーは熟成に時間がかかるため原酒不足が解消されるのは数年かかる見通しです。品薄も続きそうで、オークション相場もなかなか下がりそうにありません。香り豊かで各メーカーのこだわりが詰まった国産ウイスキー、大事に味わっていきたいと思います。
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