見出し画像

「虹色のチョーク」を読んでみた~知的障害者の就労~

知的障害者の就労(というか人生)に興味がある今日この頃です。

と思っていたら、「虹色のチョーク」という本に出会いました。
https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2008/1103/
知的障害者をたくさん雇用しているチョーク会社の話です。昔カンブリア宮殿にも出ていたそうで、ご覧になった方もおられるかもしれません。
https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2008/1103/

社員の70%超が知的障害者~日本理化学工業株式会社~

川崎市にあるチョーク会社、「日本理化学工業株式会社」。

1937年創業と歴史は古く、今やチョークの国内シェアは50%以上とのこと。
1959年に都立青鳥養護学校(当時)の教員が「うちの生徒を雇用してくれ」「それがダメなら体験実習だけでもいい」と突撃してきたことから話は始まります。社長はあまり乗り気ではなかったようですが、実習を受け入れた現場のおばちゃん達の後押しもあり、知的障害者の雇用が決まりました。サポートする側からの不満など、様々なトラブルがありつつも、真面目によく働く彼女たちは職場での信頼を得ていきます。
その後この会社は知的障害者の雇用を増やし、現在では社員の70%超が知的障害者だそうです。もちろん、障害者雇用ではなく、最低賃金で正社員としての雇用です。

知的障害者の一般就労は可能か?~揺れる僕の考え~

僕自身、自分の診ている知的障害児のライフプランに日々頭を悩ませています。しかし、支援学校に進学している以上、福祉の枠組み以外での就労はあまり考えたことはありませんでした。
一般の高卒/専門学校卒の市場で戦うにはあまりにスペックに違いがありすぎて、キツいと感じることが多いからです。
また、知的にボーダーの患者さんが頑張って一般の高校に進学し、ハロワでなんとか仕事を見つけてきたものの、職場に適応できずに半年や1年足らずで退職してしまった経験があることも、その考えに拍車をかけていたと思います。

しかし、それでは知的障害者が「障害者」の枠からはみ出すことは難しい。
個人的には「障害者」と認定しながら「でもどっちでもいいよね」という見方でもって「まず人として扱う」というスタンスでいろんな仕事をやってきました。
実際に「障害者とかじゃないよね」と認定することはかなりのリスクを伴います。生活に必要な材料(経済的なことを含め)が揃わない、じゃあ支援を受けようか、となった時に「実際」と「気持ち」のズレを起こす気がしているからです。
そこを、設定と考え方をズラすことで解決してきたのが、今までの僕のやり方です。

実際には一般就労はかなり難しいと思ってはいますが、ただ「必ずしも障害者就労でなくても良い可能性がある」というのは一つの気づきでした。

役割があることの意義

この本では、前会長の話の中で「人の幸せとは、愛されること、褒められること、役に立つこと、必要とされること、である」というくだりが出てきます。これは大賛成です。
この中で障害者にとってハードルが高いのは「役に立つ」「必要とされる」でしょう。福祉や養育・療育の考え方でありがちなのは「かわいそうだから支援してあげなくては」というものです。そこには「彼らはできない」という前提が無意識的にあると思います。
でもこれは違う。

まず彼らを一人の人間として見つめるのであれば、そういう見方は非常に失礼であると思っています。
資本主義的な切り口以外で、彼らは非常に多くの役割を果たしています。もちろん、僕たちが彼らに学ぶこともたくさんある。

この本は、そういったことを考えさせてくれる気がします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?