高見もや

小説書きです。主に純文学を書きます。

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最近の記事

追い込まれた男の発想

たまに思うことがある。あの時のあの生活が、どれだけ尊いものだっただろうと。だけれども、親ともうまくやれず、結局仲たがいした嫁は最終的にグループホームに行くことを選んだ。 これはもうしょうがないことのように思う。 俺はどうか。とうとうリウマチであることがばれ、働き口をなくしたところである。追い込まれてる。だからebayでもやろうかと思ってる。資産が減っていくスピードは速い。同居するなら金をよこせと親は言う。リウマチ治療費だってある。車の維持費もある。そんな中で、生活保護以外に挽

    • 統失彼女の感想を書いてくれた人がいてくれて。でももっと書いてほしい

      統失彼女の感想を書いてくれた人がいてくれて、とてもありがたかった。 読んでくれた人がそれなりにいたというのにも驚いたけど、無反応だったから、需要なかったのかなと思ってしまったけど、意外と需要はあったらしいということもわかって、これからもかいていくモチベーションみたいなものが少し上がったのは事実と言えば事実。 自分は東京には住んでいないし、架空の話ではあるんだけど、A型事業所、B型事業所。漫画家、音楽家としての才能開花という形で現実に復帰していくという形での話にまとめたのは、本

      • 統失彼女の感想を聞きたい

        せっかく書いた統失彼女の感想を聞きたくてしょうがない。 これは単純に受け入れられるような作品なのか。 それを記事にして、表してほしいなって思った。 俺はどんな感情をもってそれを読むんだろうなって思う。 でもすごく興味深いです

        • 心の整理をつけるためには統失彼女が必要だった

          理解のある彼君だった自分から、理解のない彼君になるまでの自分を振り返り、もしあの時、共倒れしていたら、俺たちは二人とも生活保護になっていたのだろうか。 そんな気持ちで書いた。今は幸いにして別れることで難を逃れているけれど、もう俺だって後があるとはいいがたい。世の中はきつい。自立と金のなさが世界の序列を決めているといってもいい。年寄りが得をし、その一方で現役世代は死に瀕している。それもまた事実だ。 だが世を憂いていてもしょうがない。アメリカに比べればまし。他の国に比べればまし?

        追い込まれた男の発想

          統失彼女(8)

          目覚め そこで目が覚めた。俺のイラストは全く売れなかった。 ただ冬木さんに会いに行く日が続いた。リハビリに通い、冬木さんと話し、金を受け取り、礼を言って、酒を買う。体は一向に良くならなかった。酒を飲んでるからか?別に社会復帰したかったわけじゃない。社会復帰できるとも思ってはいなかった。もっと生産的なことがしたかった。だが俺にはそれを行うだけの体力も気力もなかった。 まずいことに生活保護沼という奴に落ちていた。働かなくていい。病院代もただ。住居もただ。食費も最低限はある。話

          統失彼女(8)

          統失彼女(7)

          生活保護 ある日、俺は貯水槽清掃の際、貯水槽から転落した。 そのまま救急車に運ばれたが、意識が戻ったのは2週間後だった。 あばらに左足の複雑骨折、なかなか、実社会に戻るには不便な体になりそうな状況だった。ビルメンに戻るのも難しいだろうと医者には告げられていた。 その時、駆けつけたのが、冬木さん一家だった。宗教家はうさん臭い。だが頼れるものはほかになかった。実家の母(父は他界していた)にも迷惑はかけたくなかった。 会社は労災を頑として認めなかったし、有給消化、傷病手当、障碍

          統失彼女(7)

          統失彼女(6)

          家系 「唐揚げさんは知ってる? 統合失調症の家系の遺伝率」 「いえ、知りません」 「まぁ、普通は知らないわよね」 「それがどうかしたんですか」 俺はその後ろのめりのいい方に少しいら立つように声を荒げてしまった。奥様は落ち着いた様子で。 「うちの旦那も統合失調症なの。当時は精神分裂症と呼ばれて差別の対象だったんだけど、それを信仰の対象に転嫁することで、ビジネス化することにしたの」 「でも旦那さんは今はあんなに元気じゃないですか?」 「あの人はああ見えて何もできない人なの。私

          統失彼女(6)

          統失彼女(5)

          再燃 「唐揚げさん、なんで最近来てくれないんですか?」 それは確かに冬木さんだった。だがその姿は以前のようにやせ細っていた。 「最近ご飯食べてる?」 「薬は飲んでるよ。」 だがその目の焦点は定まっていない。 「宇宙のチャネリングが合わないんですよ。ピアノが沈むんです」 あぁ、これは。 「再燃してるな」 再燃。それは、統合失調症の人が症状を悪化させ、症状を悪化させることを言う。 「困ったもんだな。とりあえずまた病院に行くしかないんだな」 「嫌だ。病院は嫌だ。FBIが電波で私

          統失彼女(5)

          統失彼女(4)

          A型事業所・B型事業所 さて翌日、休みになった俺は、いつものように冬木さんのもとに行った。まだまだ休養中のみではあったが、だいぶ歩けるようになり、肌つやもよくなったので、A型事業所、B型事業所の見学に行ってみようということになった。俺は詳しくはなかったのだが、A型事業所とは雇用契約を結んで働く福祉施設、B型事業所は雇用契約を結ばず働く福祉施設だ。正直に言って俺はどっちでもいいと思った。でも明確な違いがあるらしく、冬木さんはまだB型でしか働けないらしい。B型にもさまざまあり

          統失彼女(4)

          統失彼女(3)

          真里 真里とは編集プロダクションの待合室で出会った。 お互い持ち込みで、芽の出ないアマチュアだった。その当時、彼女はバイトをしながら漫画を描いていた。俺もそうだ。でもそんな生活は全然続かない。そこで俺はビルメンテナンスの職業訓練に行った。給料はコンビニのアルバイトよりもはるかに良かったし、休みも爆発的に増えて漫画を描く時間も増えた。そうしてアルバイトの真里とビルメンのたかひさは結婚した。 どっちみち就職氷河期だったし、真里はどこかの会社に就職できなかったようだしな。二人で3

          統失彼女(3)

          統失彼女(2)

          「いいですか?近所だけですからね?近所だけ」 そう奥様に告げられて、俺もそれがいいのではないかと考えながら、よたよたと歩く冬木さんを連れ、散歩に行くことにした。季節は春。新入生や新入社員が随分と東京に流れ込む時期だ。希望に満ちた時期。同時に絶望を叩き込まれる次期。 その時期のはざまで今、新たな一歩を歩もうとしている。 「じゃぁ、行こうか」 「唐揚げさん」 奥様から薬を手渡される。 「これは何ですか?」 「リスパダールの水薬です。頓服というやつで、調子が悪いときに追加で飲むもの

          統失彼女(2)

          統失彼女(1)

          訪れは唐突だった。  仕事帰り、俺の部屋の前に女が立っていた。金髪のギャルギャルしい女だった。  「何か用ですか?」  細身の女だ。  そういうと彼女は「マッチングアプリで知り合った唐揚げさんですよね?」といった。  私はぎょっとした。半年前に、マッチングアプリで何度か遊んだことがあったが、その中の女性のことなどとうに忘れていたからだ。  「なんで、俺の家のことを知ってるの?」  「今、支援が必要なんです」  要領を得ない。そう言って彼女は人の家に上がり込んでしまった。

          統失彼女(1)