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YouTubeのファクトチェックはどこまで必要なのか。今の時代だからこそ求められるメディアの役割。

テレビスターが YouTubeで成功

 オリエンタルラジオ中田敦彦さんの YouTube大学が炎上している。中田さんは、現在教育YouTuberとしてチャンネル登録者数100万人以上を誇り、YouTube界に新たな風穴をあけた。私は中田さんをめちゃくちゃ尊敬しているし、憧れている。中田さんは毎日受験勉強のように、本を読み込み込み、動画にしている。政治などタブーにも切り込んでいる。原発や消費税増税などのテーマもあり、私の『政治の絵本』についてもご紹介してくださった。

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フェイクニュースが多いと大炎上

 そんな中、中田さんの動画はフェイクニュースが多いと炎上してしまった。とても残念だ。でも、私はいつかこうなってしまうなと予測していた。

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動画を拝見すると、私でも気づく間違いがちょくちょくあり、専門家からしたら、「ちょっとなんだよ、これ」と指摘したくなる気持ちも分かる。ただ、中田さんのファクトチェックを問題視する元記事を見たら、「悪意」を感じた。なぜなら、今 YouTube界はもっとひどい。少し規制がかかってきたが、いまだに差別やハラスメントを楽しむ動画や悪意のあるフェイクニュース動画に溢れている。中田さんの間違い動画よりも、悪意に満ちた動画や社会を悪くする動画がたくさんあるということを言いたい。twitterもそうだが、気軽に発信できる世の中において、SNSの負の側面から目を背けてはならない。評論家の宇野常寛さんとお話しした時に、「SNSは免許制にすべきでは」というご意見を伺ったが、皆が発信すれば万歳というのは、少し楽観視しすぎていたかもしれない。

新聞やテレビを見ないのが当たり前の若者たち

 私が YouTubeをはじめた理由。それは、私が普段学校に出張授業にいく中で、学生がテレビも見ない、新聞もとっていないという現状を知ったからだ。ニュースは見るけどラインニュースで芸能ニュースをよく見るという話を聞き、少しぞっとした。テレビが若者にアプローチしなかった、そして新聞はじめ、報道機関がニュースを知る大切さを伝えなかったことの罪は深い。そして、若者に数あるエンタメの中からニュースと接触する機会を増やしたいと思い YouTubeを始めた。そして今 YouTube上にある変な動画に惑わされないでほしかったからだ。

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SNSはフェイクニュースに溢れている

 先日、荻上チキさんに YouTubeにご出演いただいた。理由は、荻上さんがラジオで YouTubeを始めた理由を熱く語られており、私と志が同じだったからだ。今 YouTubeの動画はひどいものも多い。例えば、「セクハラ」で検索すると、セクハラドッキリしてみたというものや、テレビの過去の男性芸能人が女性タレントにセクハラしているものを違法アップロードしているケースが多く見られる。「セクハラの対処法」というような動画は上位50の動画には1本も含まれていない。このようなことに問題意識を持ち、YouTubeで良質なコンテンツや意義のある動画を届けたいという思いが荻上さんと一緒だった。

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そして、私は昨年の12月から TikTokの 事務局からニュースの解説動画をしないかとお声かけいただき、はじめたが、更に驚いた。1分で「ためになる」動画をあげている人の多くがエビデンスがなさそうだった。全部を見た訳ではないので、もちろん分からない。1つ例を挙げると、公式マークのついた男性が「卒論が間に合わない学生は、代行業者がある」というのを説明していた。これがためになっていいのだろうか。公式マークがついていいのか。すぐさま、事務局のスタッフさんに報告を私は入れた。フェイクニュースや倫理観がまるでない。テレビでも間違った情報が流れることはあるが、個人が作る世界観はもっとひどいと感じた。しかし、私が真面目に性教育の動画などを作っても、 YouTubeのアルゴリズムで広告不適切動画と警告が出たり、セクハラドッキリ動画の視聴回数に中々追いつかず、歯痒い思いをしていた。

教育、政治系の YouTubeに革命をおこした中田さん

 そんな中、オリエンタルラジオさんは1年もたたずして100万人を超えた。テレビで敬遠されがちなテーマにも挑み、タブーなどもなく素敵だった。私は中田さんが私の本『政治の絵本』をYouTubeでご紹介くださったので、御礼の連絡と思い切って「 YouTubeにご出演いただけませんか」とお願いしたところご了承いただいた。そこで、中田さんは社会をよくしたいという思いがめちゃくちゃおありなのかと期待していたが、中田さんは面白いからやっているということが分かった。 YouTubeはテレビの歴史をトレースしている。テレビもヘキサゴンや世界一受けたい授業などが後発で始まり、 YouTubeも教育が来ると思ったから始めたとおっしゃった。この人は分析力の天才だと思った。

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コンテンツ・プレゼン力で勝負している

 そして、今フォロワーを増やすために、コバンザメ感の強い人が多かったり、「あなたもお金を稼げる」と必要以上に訴える人が多かったり、後付けのニセのストーリーを仕立てるのが上手な人が多い中で輝いてうつった。池上彰さんの本を参照していると言いながらも、「コンテンツで勝負している」からだ。そして嘘をつかない。適当な美辞麗句を並べてストーリーを話すこともできるが、中田さんはそれをしない。生き方が下手な人なんじゃないかと、だから人とぶつかるのではないかと勝手に先輩のことだけど私は分析している。私のことを正義の人だからすごいとか言ってくださりながら、私のような付き合っても得しない後輩に対して、全力で向き合ってくださる。人格者だと思う。カジサックさんや、弱小ながら私のチャンネルもチームで動いているのに対し、中田さんのチャンネルは、めちゃくちゃ少ない人数で動いているのではないかと推測している。それは中田さんの能力と努力の賜物でしかない。それによって、政治に興味のない人が関心を示している。これは中田さんのプレゼン力があるからできることだ。毎日30分の授業を提供するなんて、尋常じゃない。こんな人がいる世界で私は戦っているのか。引退せねばならないと中田さんの動画を見るたびに思うのだ。

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ファクトチェックが甘い。しかし、それを認識している。

 しかし、ファクトチェックが甘いのは事実だろう。というか、そこまで本気でする意図が本人にはないと思う。「コメント欄も含め、皆で作る」ということを公言されているからだ。同じく芸人で社会派の問題を扱う「せやろがいおじさん」も、自分の作品が完成系ではなく、皆で作っていきたいとおっしゃっていた。せやろがいおじさんとも YouTubeで対談したので、近日動画を公開します。コメント欄で作品を作るのは、ある社会問題の解決策を探るという点では、私は有効だと思う。しかし、情報に間違いがあることをできるだけ減らす努力が必要だとも考える。

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ニュースキャスターを務める「ふかわりょう」さんの見解

 ちなみに、ニュース番組のコメンテーターやキャスターをつとめる、ふかわりょうさんはabema TVでこのテーマを扱った際に「一般論として、公の場で何かを話す時に、知ったかぶりや身の丈に合っていないような発言をしたために大怪我をするというのは、表現者が成熟する過程で学ぶものだと思う。ただ私の中では、少なくとも宗教を扱う場合は相当の覚悟を思って臨むべきだという感覚がある。そこで単純な間違いなどが出てしまっているとなると、楽しませたいと意図と覚悟とが釣り合っていないのではないかと思う」と厳し目のご発言をされていた。かなり慎重に普段は発言しているのかもしれない。テレビ出演と政治的発言をどうバランスをとっているのか、私はふかわさんに聞いてみたい。ので、今度の単独ライブで伺います。あとチケット30枚ほどなので、ぜひご来場下さい。

● 第12回たかまつなな単独ライブ
 https://takamatsunana12.peatix.com/view

スピードと質、どちらをとるか

 多分、YouTuber全員が抱える悩みであるスピードと質。これが政治や教育の場合、スピードを優先しすぎると情報のたしかさが危うくなってしまうから、他のジャンルとは少し違う。だから、私は政治や教育を YouTubeでやっても今のところ旨味はほとんどないのではないかと思う。正確さを追求できればもちろん別だが。

ファクトチェックに尋常じゃないコストをかけている

 私たかまつななチャンネルでは、一番ファクトチェックにコストをかけている。人もお金もだ。元報道局の記者の方やテレビ番組のディレクター、ボランティアの部隊、私がファクトチェックをしている。1本の動画を出すのに、最低でも、5人の目は通している。それでも、ニュース番組のファクトチェックと同じレベルでできているかと言ったら難しい。だから、そこにコストをさくべく、更に現在、組織化している段階だが、人手を増やしている。
 ゲスト出演の際も、ゲストが言ったことだからといってそのまま使わない。ゲストのコメントのファクトチェックもしている。この点はテレビよりもしっかりしていると思う。複数のソースがある時は、テロップで注釈などをいれたり、その部分をカットしたりしている。 YouTubeに詳しい方にアドバイスを求めたところ、ファクトチェックに時間がかかるから仕事術などに切り替えた方がいいと言われたが、それでは本末転倒だから、なんとかやりきる。若い子に届く政治のメディアをちゃんと作る。フェイクニュースなく。

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なぜファクトが大事なのか

  YouTubeの政治チャンネルを見た時に、1つ重大な点に気が付く。フェイクニュースとかよく言われている人を見ると、なんとそういうチャンネルでも情報がたくさん提示されていることがある。つまり、情報を自分のいいように編集しているのだ。悪意を持っているように見えたケースもある。(これはナチュラルな可能性もあるので真相は分からない。)中田さんのフェイクニュースだと言われている部分がわざとではないだろうが、恣意的だと言われたら、否定するのが難しい。だから、ファクトって大事だと思う。国会の場でファクトがないのに政策が進み、数年後にひどい状態になるケースを見たことがある。そして、ファクトを隠し、それを検証できないケースも見た。情報がより適切に管理されたり、開示されるというのは、私たちの想像以上に難しい。だから、情報には丁寧に向き合わないといけない。推測で議論するのではなく、ファクトに基づいた方が良い。情報を悪用する人を見て私は知った。権力も、強力なファクトには勝てないのである。

ファクトチェックなんて難しすぎる

 しかし、中田さんの気持ちもわかる。私はこの数年で様々な経験をしたが、この経験がなければ、おそらく中田さんと同じ気持ちで作っていたと思う。私は大学院に行ったことと、今の勤務先につとめたことが大きい。事実をもとに作っていく。意見と事実を切り分ける。この思考の積み重ねの必要がある。しかも、このコストは動画のクオリティがめちゃくちゃあがる訳ではないし、かなりかかるので、スピードも落ちる。その上、ファクトチェックできる人材なんてなかなかいない。時には専門家にもあてるから、その繋がりや取材力も必要だ。ビジネス的にやらないと考える人が多いだろう。専門家に頼むと、お金だけではなく、間違いの指摘のみならず、こだわりが強いからそもそもの動画の設計が崩れるからやりにくいということも考えられるだろう。白黒はっきりつけるものでもないと思うが、中田さんの間違いよりも、功績に注目すべきだと私は考える。そして、中田さんのファンの方も専門家の方の意見にもう少し耳を傾けてもいいと思う。間違いかもと指摘された場合は、その専門家をたたくのではなく、ありがたいと思い、建設的に質問したりすればいいだけじゃないか。すぐには、監修をつけたり、動画をとりなおしたり、訂正の謝罪動画を作るのは難しいだろうから、編集の段階で「●分●秒のところは正しくはこうです」というような訂正コメントを概要欄にいれたり、コメントに書いたりとかはどうだろうか。(視聴者も運営側も)

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 偉そうにいっていますが、私のチャンネルでも私が漢字を読み間違えたり、テロップの漢字変換ミスなどはある。追求していたら、1本も出せないのではないかというぐらい、粘り強さが必要な作業だ。しかし、私はお笑いジャーナリストとしてその点は妥協してはいけないと思う。そして、ライターさんはファクトチェックが甘い人が9割だと肌感覚では感じるし、やっぱりプロの報道に携わっている人はすごいなと思う。(今まで200回以上取材をうけているが新聞社とか基礎力がやっぱり違う。)
 中田さんの成功を面白くないと思い必要以上にたたく節も見られる。功績にしっかり目を向け、社会がよくなるために、どうしたらいいか。中田さんに足りない点、こうすればよくなるなど建設的に議論すればいいのに。あんなこと限りなく1人に近い状態でできる人、日本の YouTuberに他にいないと本当に思う。今後テレビで、中田さんの世界観を最高のチームで YouTube以上に発揮してほしい。

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今こそ、報道現場よ、立ち上がれ!

 情報があふれる中、またテレビや新聞が評価される日が来るといいなと私は願う。プロ集団、組織ジャーナリズムの力はやっぱりすごい。今までメディアの取材は200回以上は引き受けたことがあるし、自分も学生時代から含めると何百回も取材をした身としては、プロと素人に大きな隔たりを感じる。時代にうまくマッチせず、衰退しているように感じるが、こんな社会だからこそ、またメディアが求められている。むしろ、私が新聞社のデジタルチームの人間なら、中田さんにかつての自社の新聞記事をもとに授業を展開してもらい、宣伝もしてもらい、その代わり全動画のファクトチェックをして、最初と最後に数秒提供として社名をいれてもらう。やっぱり、あの会社が入ってから、クオリティがあがったなぁと言われたら、こっちのものだろう。宣伝効果が高い。そういうことが気軽にできるぐらい時代にマッチし、お高くとまるのではなく、フットワークが軽い報道機関であってほしいなと思う。両者win-winだと思う。
 私のたかまつななチャンネルは、情報提供してくださるメディアを募集します!私に余力があれば、中田さんのチャンネルのファクトチェックめちゃくちゃしたいが、無理だ…。その面ではご協力できないし、尊敬する先輩についてこんな勝手にかくのは失礼だと思ったが、なんか建設的な話が出ていないと思ったので思い切って書いた。
 私は、中田さんの功罪の功にも目を向けたい。そして、私は中田さんを批判する人ではなく、中田さんと一緒に世の中をよくしたい人間でありたいと思う。こういう時に外野で、叩きまくって行動しない人間を私はちゃんと見ている。あなたが一番挑戦を阻む壁で、社会の癌ではないか。

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 今のネット環境をめぐる議論や、ファクトが軽視されつつある政治のことなどをお笑いのネタにしました。またこのことを、ふかわりょうさんとガチ対談します。よろしければ、ぜひ単独ライブ観にいらしてください。取材を基に、ファクトをベースとした時事ネタ、社会風刺ネタをやります。

●ご予約・詳細はこちらから
https://takamatsunana12.peatix.com/view

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●中田敦彦さんとの対談動画はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=eTMVYgbWWLU&list=PLGIs2lskpIl0ED5X691C4PPf52PSGZH1W&index=1


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