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【書評】インテリジェンス都市・江戸 江戸幕府の政治と情報システム

正確な情報をどれだけ自らの手に集めることができるかは、国家と政権の命運を左右する。
江戸幕府には、将軍直属の御庭番、老中配下の目付、勘定所所属の普請役、町奉行所の隠密廻り同心などのインテリジェンス集団が為政者が判断するための情報探索していた。

本書の著者

藤田覚著「インテリジェンス都市・江戸 江戸幕府の政治と情報システム」
朝日新聞出版刊行、2022年5月30日発行

本書の著者の藤田覚氏は、1946年、長野県に生まれ。1974年、千葉大学文理学部卒、東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。東京大学史料編纂所教授、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授を経て、東京大学名誉教授。

本書の章構成

本書の章構成は以下のとおり。

序章 幕藩体制の核心はインテリジェンスだった! ー情報と江戸時代の政治・交通
1 情報の江戸集中
2 全国に転換する江戸の出先機関
3 参勤交代制度と江戸藩邸
4 全国的な交通網
5 江戸幕府の情報収集組織
第一章 将軍直属の「スパイ」がいた! ―御庭番の情報収集と幕府政治
1 御庭番とは
2 三方領知替の撤回と御庭番
3 新潟湊上知と御庭番・小人目付情報
第二章 大名と幕臣を監察する将軍の「目」―小人目付の情報収集と幕政
1 徒目付・小人目付とは
2 政策の影響に関する情報収集
3 幕臣の素行・身辺調査
4 幕臣の身辺調査の具体例
第三章 「探検家」の真の任務とは?―勘定所普請役の情報収集
1 普請役の隠密探索
2 幕末の普請役の情報探索活動
第四章 犯罪捜査と経済調査のエキスパート―町奉行所隠密廻り同心の情報収集
1 町奉行所の同心
2 町奉行の都市政策と隠密廻り同心の情報探索
3 老中の都市政策の情報
第五章 異国船とアヘン戦争、鎖国下の情報戦―オランダ風説書と対外政策
1 異国打払令の発令と情報
2 異国打払令の撤回とオランダ情報
3 漏れる情報と隠される情報
第六章 「敗戦」という不都合な事実の拡散―文化露寇事件の情報と政治
1 文化露寇事件とは
2 文化露寇事件の情報
3 情報の開示と統制
4 ロシアの真意をつかむ情報収集
終章 インテリジェンスの大失策が幕府の命取りに!―天皇・朝廷情報の収集
1 横目付の情報収集
2 京都町奉行所の情報収集
3 情報収集・分析の誤りと幕府の敗北

本書のポイント

「江戸幕府の情報収集システム、情報収集能力の歴史を振り返ると、八代将軍徳川吉宗の役割が大きい」そうだ。
「江戸幕府か成立して約110年後に登場した八代将軍吉宗は、江戸時代の政治と社会の変化に対応できる幕府の法や制度の改良に努め、その中で御庭番、目安箱、普請役を創設し、情報収集能力を高め」ている。

江戸幕府が政策立案・判断を進める基となる情報収集・分析のための組織体制とそれぞれの役割がどのようなものであったか本書では語られている。

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