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【書評】貨幣システムの世界史

現代に生きる我々は「貨幣の価値は一定である」と常識的に考えているが、
「19世紀まで、人類の大多数にとって、一国一通貨原則は自明のことではなかった」。
複数の通貨が併存しているとき、交換価値が多元的であるという事例は、歴史上、多くの地域・時代の存在した。
著者は、「本書の意図は、交換の多様性を根源とする貨幣の多元性はむしろ自然なことであり、それゆえに、20世紀初頭まで人類の過半は複数の貨幣とともに交換をなりたたせてきたのだ、ということを明らかにしようとすることにあった。」と述べている。
本書は世界史の中で、改めて謎に満ちた貨幣現象を根本から問い直した書だ。


本書の著者

黒田明伸著「貨幣システムの世界史」岩波書店刊
2020年2月14日発行(初版は2003年刊行)

本書の著者の黒田明伸氏は、1958年、北海道札幌市の生まれ。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪教育大学講師、名古屋大学助教授、東京大学東洋文化研究所助教授を経て、2002年から同研究所教授。

本書の章構成

本書の章構成は以下のとおり。

序 章 貨幣の非対称性
1 合算できない貨幣たち
2 手渡される貨幣の論理
3 還らない貨幣
4 多元的貨幣論へ

第一章 越境する回路――紅海のマリア・テレジア銀貨
1 マリア・テレジア銀貨の謎
2 英仏伊白による鋳造競争
3 銀貨流通の実態
4 回路としての貨幣
5 マリア・テレジア銀貨が語る貨幣論

第二章 貨幣システムの世界史
1 見えざる合意
2 地域流動性と支払協同体
3 銅貨の世界と金銀貨の世界――手交貨幣の二極面
4 分水嶺としての一三世紀
5 本位貨幣制と世界経済システム

第三章 競存する貨幣たち―― 一八世紀末ベンガル、そして中国
1 錯綜する貨幣
2 超零細額面貨幣、貝貨の世界
3 競存する銀貨
4 市場の重層性と通貨の競存
5 銀流入はインド・中国に何をもたらしたのか

第四章 中国貨幣の世界――画一性と多様性の均衡構造
1 時代を超越する枠組――「土銭」・「郷価」の世界
2 銅銭経済の論理
3 二つの紙製通貨――鈔と票
4 上下「不」通の構造――秤量銀制度創出の動機
5 自律的個別性と他律的画一性

第五章 海を越えた銅銭――環シナ海銭貨共同体とその解体
1 ジャワの万暦通宝
2 中国における基準銭
3 中世日本における基準銭の形成とその消失
4 中世日本における銭貨流通の特質
5 東南アジアにおける銭貨流通
6 環シナ海銭貨共同体の遠近

第六章 社会制度、市場、そして貨幣――地域流動性の比較史
1 貨幣と制度的枠組
2 自己組織化された地域流動性――伝統中国における小農と市場町
3 地域流動性の他律的調整――絶対王政期以前の西欧
4 地域流動性の座標
5 地域的信用と地方銀行
6 伝統市場の四類型

第七章 本位制の勝利――埋没する地域流動性
1 一国一通貨原則の歴史性
2 小農経済と在来通貨の変容
3 紙幣と兌換性
4 脱現地通貨化と恐慌

終 章 市場の非対称性
1 貨幣需要の季節性と通貨の非還流性
2 「財の交換」と「時の交換」
3 市場階層の不整合
4 市場の水平的連鎖と垂直的統合

補 論 東アジア貨幣史の中の中世後期日本
1 常識の非「常識」
2 明代私鋳の北宋銭、開元銭、そして永楽銭
3 階層化する環シナ海の銭貨――悪貨は良貨を駆逐せず
4 分岐する近世東アジア



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