國學院大學日本文化研究所編『歴史で読む国学』(ぺりかん社、2022年)を読んで①

この3月に国学史を語るために必須の入門書が世に出た。國學院大學日本文化研究所編『歴史で読む国学』(ぺりかん社、2022年)である。

私はこの意欲的な著作をtwitter上で知ることとなった。偶然にも、本著作の執筆者の御一人でいらっしゃる齋藤公太先生が、本著作について言及されているツイートをお見掛けした。実はこの3月に卒業論文を提出したばかりの私にとって本著作は、タイムリーなものだった。また改めて別な投稿で書こうと思うが、私は幕末期の国学者である大国隆正を卒論で扱った。まさしく本著作にも大国隆正は登場するのだが、どのように彼のことが叙述されているのか、最前線の国学史の叙述と合わせて勉強させていただくべく、早速書店へ向かった。

本著作は13章構成となっているのだが、この記事ではまず、「はじめに」とそれに続く第1章について取り上げる。第1章が、ご紹介いただいた齋藤先生のご担当ということで、取り急ぎ拝読した所感と、扱われた内容を私がどのように消化したのかを、僭越ながらお伝えしたいとの思いからである。

「はじめに」では、国学とは何か、そして国学が成立した時代背景について述べられている。勉強になったのは、国学とは何か、について述べられている箇所で端的に国学史研究を整理されていたところである。従来の国学に対する研究者の認識に対して、現在の研究水準ではこのように捉えているということをズバリ書いてくださっており、国学に対する私自身のイメージも改められた部分がある。「徳川の平和」と呼ばれる社会状況が、国学の成立のベースとなり、その上に当時まで受け継がれていた王朝文化や土着化を遂げた仏教、徳川政権の教学・儒学などの要素が互いに影響しあい、古代日本に目が向けられたことで国学が勃興したのだと理解した。

第1章では、「元禄期 徳川光圀と契沖」ということで、国学の黎明期が扱われていた。国学の成立について、まったく知らなかった私には勉強になるお話ばかりだった。どうやら、一つの画期が過ぎると人は歴史を検証したくなるらしい。「パクス・トクガワ―ナ」とも呼ばれる泰平の時代に突入した日本で、それを大々的に行ったのが徳川光圀であった。彼の先導による『大日本史』の編纂事業は、単に歴史叙述にとどまらず、過去の文芸を対象にして研究する下地を作った。その先駆者となるよう光圀から依頼を受けたのが契沖だったと理解した。また、この動きは庶民の学習熱の高まりや、神道と仏教・儒学との相克が繰り広げられた当時の世相と連動するものだったことが興味深い。そして、古典研究のセンターとして朝廷があり、その機能が地下にも開かれたことをきっかけに、大衆化してゆく様相が、これまた面白い。

以上、簡単にではあるが、おこがましくも22歳の未熟者が、先生の執筆された箇所を拝読し感じたことを書かせていただいた。先生にご一読いただければ幸いである。

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