英語コミュニケーションⅠ  場面設定を意識したリテリングの指導(CROWNⅠ Lesson1)

新学習指導要領のもと、英語コミュニケーションⅠが始まりはや1ヶ月。3観点の評価に伴いパフォーマンステストの重要性も高まり、これまで以上に授業の単元計画や指導と評価の一体化が大切になったとヒシヒシと感じています。ここでは自分の思考の整理も兼ねて、4、5月に行った音読テストに向けたリテリングの指導をまとめたいと思います。

使用教材: CROWN English communication Ⅰ (三省堂)
単元:Lesson 1 The Blue White Shirt

①指導計画

学習の見通しを立て、Pre-readingの活動を通して教科書内容に対する興味を掻き立てるために各単元の最初にLesson Planを配布します。

Lesson Plan

今回の単元の最後には全クラス共通のパフォーマンステストとして音読テストを設定しました。概要のみ説明すると、生徒は本文を(  )抜きされた文章を、CDのモデルと遜色ないスピードで読むことが求められるテストです。
このテストに向けて、以下のような指導が求められると考えました。

◯生徒が家で音読の練習を行うよう、効果的な音読の方法を伝える。
◯(  )抜きに対応できるよう、本文をintakeする。
◯音読に対するモチベーションを高める。

これらを実現できるのがまさにリテリングです。全3セクションのうち、セクション2、3でリテリング活動を行いました。


②リテリングに対する考え

個人的にリテリングを行う際に大切にしたいることは「場面設定」や「問い立て」です。伝える相手や、伝えるシチュエーションによって、文章からどの情報を選ぶか、主語や言葉遣いはどうするかなどが変わってきます。ここに生徒の思考・判断が働くと考えます。

何の場面も与えず「このセクションをリテリングしよう」では、生徒の意識は一字一句再生することばかり意識し、「自分の言葉で言い換えてもいいよ」と言われても分からない語句のパラフレーズに留まります。(もちろん、正確な再生も大きなインプット効果があると思います。)

それよりは、個人的には「伝えたい(伝えなければならない)内容があるが、今の自分の語彙ではうまく伝えられないから教科書の表現を覚えて使おう」という状況を作りたいと考えます。今回のレッスンでは、そのような場面設定を意識した音読活動を授業で取り入れました。

③教科書内容の理解

教科書内容理解は、TANABUモデルを参考に、

1時間目→ パラグラフチャート、TF問題、英問英答、word matching
2時間目→難解な英文の解説、簡単な音読

の手順で各パートを進めます。そして、3時間目に音読とリテリングを行います。


④音読指導とリテリング

セクション2では、以下のようなワークシートを活用してリテリングを行いました。

セクション2 リテリングシート

教科書本文では、主人公のSteveが日英でmansionという単語が異なるものを指すという内容でした。その内容を、「自分が他者にアドバイスする」という別の状況に当てはめた活動です。
授業の最初にワークシートを配布し、Q1まで取り組みます。こうすることで「トラブルを防ぐためにはこのような内容を伝えなければならない。そのためには教科書のどの表現が使えるだろうか」と、この後の音読によるintakeの動機付けが生まれます。

ここまでを踏まえ、以下の手順で音読を行いました。
①モデルのリピート
②individual practice
③overlapping×2
④read and look up
⑤blank reading
⑥shadowing
⑦sight translation

その後、生徒は何も見ずにワークシートのQ2でメッセージを書き、ペア、全体で口頭発表をしました。
実際の生徒のメッセージは以下の通りです。
教科書の語句を使っている割合は少ないものの、適切な文章を作ることができていた生徒がほとんどでした。

生徒の作品

 セクション3では、似たような活動を、少し難易度を上げて行いました。

セクション3 リテリングシート

セクション3本文では、Steveがレストランで英語と呼び名が異なる料理の存在を知ったことと、「混乱は悪いことではない、学びの第一歩だ」という生徒に大事にしてほしいメッセージが込められています。セクション2でKenにメッセージを送ったところ、もっと紛らわしい語を教えてほしいという依頼と、語学学習への自信を失ったというメールが来たという設定です。

紛らわしい語句の例はこれまでのセクションの内容を思い出さなければいけないという点において、セクション2より少し難易度が高くなっています。
セクション2と同じように、最初にタスクを明らかにし、動機付けを行い、同じ手順で音読活動を行いました。


セクション3 生徒の作品

上2つは教科書の表現はあまり引用していないものの、適切な内容になっています。下2つは教科書の表現を引用し、うまく繋げ合わせて適切な文章を作っています。


⑤反省と今後の展望

今回のリテリング活動は、教科書の文章がそこまで難解でなく、自分の簡単に言い換えられてしまうことと、場面設定を加えたことで本文にはないメッセージを自分で加える必要があることから、生徒は教科書本文をあまり引用せず、自由な表現活動に近くなってしまいました。内容をintakeするという意味では良かったものの、「表現をintakeする」という点においてはまだまだ不十分だと考えます。

一方で、生徒はイキイキと活動しており、音読への取り組みは印象的でした。Section2で各音読方法の指示したところ、section3では「overlapping」などというだけで生徒は何をするか理解できており、今後の指導の土台を作ることができました。次はこれらの手法を生徒が家庭学習で実施し、音読テストやその後の復習に活用できるように促したいと思います。

近々行われる音読テスト。うまく家庭学習にも繋げて、生徒の取り組みの成果を見るのを楽しみにしています。


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