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【研究手法】数回に分けて行う調査では、間隔をどう設定するべきか?(Dormann et al., 2015)

今回は趣向を変えて、研究手法の話題を。定量調査では、数回に分けて調査を行い、各回の設問による変数間の関連性を見ることが多くなっています。(縦断調査またはパネル調査といいます)本文献は、この調査の「間隔」について提言するものです。

(イラストはChat-GPTですが、なんだかよくわかりませんね・・・)

Dormann, C., & Griffin, M. A. (2015). Optimal time lags in panel studies. Psychological methods, 20(4), 489.


どんな論文?

この論文は、パネル調査における最適な時間間隔について研究したものです。パネル調査では、同じ対象から複数の時点でデータを収集しますが、どのくらいの間隔を空けるべきかは難しい問題とされてきたようです。

著者らは、変数の安定性に基づいて、最適な時間間隔を数学的に導き出しました。その結果、一般的に短い間隔でデータを収集する方が効果的であることが示されました。

補足:変数の安定性

  • 変数の安定性とは、変数が時間を通じてどれだけ一貫しているか、または同じ値を維持しているかを示すものです。具体的には、前回の測定値と今回の測定値の相関を指します。

  • 例えば、安定性が高い変数は、時間が経ってもその値があまり変わらないことを意味します。

  • 安定性が高い変数は、因果関係の解釈において信頼性が高いため、分析結果の精度を向上させるために不可欠です。

  • 安定性の低い変数は、変動が大きいため、因果関係の解釈が困難になる可能性があります。この研究では、安定性が時間間隔の選定に大きく影響することを示しています。


なぜ、間隔を空ける必要があるのか?

端的に言ってしまえば、コモンメソッド・バイアス、というバイアスの影響を防ぐのが1つの理由です。以下のサイトでわかりやすく記載されています。

該当箇所を引用させていただきました。

3つ目は「コモンメソッド・バイアス(common method bias)」です。これは、同一の回のアンケートで原因Xと結果Yを測定したことで、実際にその2つの変数の間に存在する以上の相関関係が出てしまうことです。例えば、会社への満足度や愛着と、上司との関係性の良さといったことについて知りたいとき、同じアンケートで、会社への満足度や愛着について質問し、上司との関係が良いかについても質問したとすると、「肯定傾向(yes tendency)」などのいろいろな影響から、どちらも高いスコアとなり、強い相関が出るということがよくあります。

これについては、アンケートの実施を2回に分けて、Xについては1回目で聞き、Yについては2回目で聞くというように、タイムラグを設けることで対処することができます。一般的には数週間から1カ月ほど時間を置くのがよいとされています。現実的には、アンケート調査を行う場合、同一の回でXとYの両方を測定せざるを得ないことが非常に多いのですが、出てきた相関関係を過大評価しないように、こういう傾向があることを理解しておく必要があります。

出典:HR総研コラム『人事による社員向け調査を成功させるためにー
第4回:測定の過誤 ~アンケート調査時に起こり得るさまざまなエラーと対処方法~』

要するに、XとYの関連を見る際に、同じタイミングで取ってしまうと、バイアスがかかってしまうので分けた方がよい、ということですね。
「では、分けるのであればどれくらいの間隔がよいの?」という問いに答えているのが本文献です。


結論:間隔は短い方がいい

この研究では、様々な統計手法や数式を利用し(クロスラグ回帰分析、パス解析、シミュレーション等)、分析が行われました。正直、数式が多すぎて分析内容は完ぺきに理解できておりません・・・泣。

分析の結果、一般的に短い間隔でデータを収集する方が効果的であることがわかりました。ただ、2時点調査の場合に何日空けるか、という結果は読み取れませんでした。少なくとも私の見た限りでは。。。

私にはなんのこっちゃでした

感じたこと

大変難しい論文でした、、、ただ、変数の安定性の観点から、なるべく間隔を空けずに調査したほうがよい、ということがわかりました。では、どれだけの間隔を空ければよいか、という点については、他の論文も参照してみたいと思います。






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