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【パーセリング】パーセリングの懸念点と対応方法を具体的に示した文献!(Little et al., 2013)

さらにパーセリング文献の紹介です。この論文も2,024年10月5日時点で1700件の引用と、それなりの参照がなされている主要文献のようです。

Little, T. D., Rhemtulla, M., Gibson, K., & Schoemann, A. M. (2013). Why the items versus parcels controversy needn’t be one. Psychological methods, 18(3), 285.


どんな論文?

この論文は、心理学や教育学などで使われる統計手法である構造方程式モデリング(SEM)における「アイテムパーセル(Item Percels)」の使い方についての議論をまとめたものです。

アイテムパーセル、つまりパーセリングとは、複数の質問項目をまとめて一つの指標として扱う方法です。これについては、賛否両論があり、パーセルを使うことでモデルの精度が上がる一方、使い方を誤るとデータの誤りが隠されるリスクも指摘されています。

パーセリングの利点としては、データの信頼性が向上し、統計モデルが簡潔になることが挙げられます。具体的には、測定項目のばらつきを平均化することで、統計処理が安定しやすくなるという効果があります。
しかし、問題点として、元々のデータの細かな誤差や相関がパーセル化によって隠される可能性があるため、慎重に扱う必要があるとされています。

この論文の結論としては、パーセリングを使うべきかどうかは絶対的なものではなく、状況に応じて使い分けるべきだと述べています。
また、パーセルの作り方や使い方に関する注意点を押さえることで、この手法を有効に活用できる可能性があると提案しています。特に、構造パラメータへの影響を十分に理解し、適切にパーセルを作成することが重要です。

ちなみに、本論文でパーセリングの幾何学的なイメージとして紹介されていたのが以下の図です。大きな輪が、ある概念の構成要素が説明し得る指標の領域で、中心はその概念のど真ん中の項目になります。
パーセリングは、Cの縁の中の三角形を合成させることで、中心点と同様の意味合いを持つ、といったイメージのようです(たぶん)。

訳:パーセリングの仕組みを幾何学的に表現したもの。各円は、構成要素の可能な指標の領域を表 す。コンストラクトの「真の」重心は、各円の中心にある大きな点である。任意の2つの変数の平均は、 Bに描かれているように、直線の中点である(3つ以上の指標の平均は、それらが包含する領域の幾何学的 中心となる)。パーセルで示される潜在的な構成要素は、Cのように真のセントロイドとほぼ重なるグレ ーの中心点である。縦断的構造方程式モデリング(p.23)、T.D.リトル著、ニューヨーク、NY: ギルフォ ード出版。著作権2013年 Todd D. Little.許可を得て転載した。


パーセリングの懸念と対応方法

論文では、パーセリング使用時の影響や効果に対する理解が重要であると述べていますが、これを踏まえた懸念と対応策について以下のように説明されています。かなり具体的なので、研究者にとってありがたいものでした。(多少、意訳でわかりやすくしています)

■影響を十分に理解した上で使う

パーセリングは、使い方次第でモデルの適合性を良く見せることがあるが、それが本当にデータの正しい反映かどうかを注意深く確認する必要がある。
パーセル化が原因で、重要な誤差や隠れた相関関係が見逃されていないかを、慎重に評価しなければならない。
つまり、パーセルを作る前にアイテムレベルでの分析を行い、各アイテムがどのように変数に関連しているかを理解することが大切となる。

■モデルの構造や結果に対する慎重な解釈

パーセルを使用した後にモデルの適合性が向上した場合でも、その結果をすぐに信頼するのではなく、モデルの構造や推定されたパラメータに偏りが生じていないかを確認する。
特に、元のアイテムレベルで検出された潜在的なクロスロード(複数の因子に関連する項目)や残差の相関が無視されていないかを確認し、適切でないモデルフィットの改善が隠れていないかを見極めることが重要。

■理論的な裏付けと実践的なアプローチ

パーセル化を行う場合、単に統計的な目的でアイテムをまとめるのではなく、理論的な背景に基づいてアイテムをどのようにまとめるかを決めるべき。理論に基づいて選ばれたアイテムは、より堅実なパーセル化を可能にし、パーセルの妥当性が確保される。

■アイテムレベルの分析とパーセルモデルの併用

アイテムレベルでの分析とパーセルレベルでの分析を併用し、モデルにどのような違いが生じるかを比較することが推奨される。アイテムレベルで得られた問題点がパーセルレベルで解決されるか、あるいは無視されているかを確認します。
パーセル化の前後でモデルをチェックすることで、構造パラメータへの影響を把握し、モデルの信頼性を高めることができます。


先行研究に基づくパーセリングの利点

この論文では、他の先行研究で主張されているパーセリングに対する肯定的な面や利点も紹介されています。

1.タイプIIエラーの減少
パーセル化によって、測定モデル内で誤仕様(※1)があった場合に、誤って「クロスローディング(複数の因子に対して負荷される項目)が存在しない」と結論付けるリスク(※2)が減少する可能性がある。これにより、正しいモデルが見落とされるリスクが低下する。

※1 誤仕様:モデルで誤った関連性を導くこと
※2 タイプIIエラー:問題があるのに、問題がない、と誤った結論を出してしまうこと

2.慎重で知識のあるモデル作成者による誤仕様の発見
アイテムレベルの関連性を把握している経験豊富なモデル作成者であれば、構造パラメータに影響を与える重要な誤仕様を特定できる可能性が高くなる。誤仕様が生じた場合でも、これを正しく認識し、構造パラメータに与える影響を評価することが可能。


感じたこと

いくつか、パーセリングの文献をInput・Outputすることで、随分とパーセリングの良い面・悪い面・留意事項が頭に入ってきた気がします。どのような手法も、適切に使う必要があると痛感しました。(そのために、過去の同様の手法を用いた研究を参照する、その原典にあたる、など、また大変な道のりが待っているわけですが、、、)

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