耳が落ちそうな男
深夜の左京区の老舗のジャズバーで、知り合いの僧侶と「僧侶の名前として絶対にあり得ない名前」を捻り出そうとしていた時。
流石に「酒色」は無理なんじゃあないですか?
絶対ないとは言い切れないね。
じゃあ、「自慰」とか「手淫」は?
うん、それは流石にあり得ないな。絶対にない。言い切れるな。
いっそ「健太郎」とかどうですかね?本名は「健太郎」じゃないのに....
笑....そうだな、それはなかなかあり得ない気がするな。三文字だしなぁ。
そんな無意味なやりとりをしている最中、その僧侶の友人の肩越しにチラッと見えた男の様子が明らかにおかしかった。
まるで自分の耳が頭部から千切れ落ちるの防ごうとするように、懸命にそれを両手で支えている様子が刹那に目に入ったのだ。
危ない!
(インスタントフィクション Story 008)
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