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Lean Conference参加レポ:企業の力とは人の力と経営技術力の掛け合わせ

Lean Conference Japan 2022に参加してきました。カンファレンスの参加を通じて感じたテーマは、表題にある「企業の力 = 人の力 × 経営技術力」です。

人の力

企業とは、その名前でもなく、組織図でもなく、社員一人一人の行動が積み重なって成り立っています。当たり前の話ですが、そのことをしっかりと意識することがはじめの一歩です。そのことを理解していれば、一人一人の力を高めつつ最大限に引き出すことの重要性が見えてきます。

会社はどこに存在すると思うかね?
取締役会?本社?それとも組織図?
会社はそこ、ここに起こる会話にある

野中郁次郎 第1部 BPStudyラジオ〜アジャイル開発とスクラムの今を語ろう

ワークライフバランスやらダイバーシティやらが必要とされるようになってきた理由は、トレンドや権利意識の高まりだけではありません。それらが長期的に見て人の力を引き出せることを人々が理解し始めてきたからです。それに加える形でITの力を正しく活用して単純労働をITに任せ、人々をよりクリエイティブな仕事へシフトさせることで組織は新たなケイパビリティを獲得していけるのです。Google re:Workはこの話の好例でしょう。

人の力という文脈において、リーンは人の力を無駄にしないことなのかなと登壇内容を聞いて思うところがありました。それは単にリソース効率を追求することではなく、フロー効率だけを追求することでもなく、どちらが自分たちのケースに最適化を見極めながら両方のバランスを見極めていくことにあります。そのためには自分達の今の状態を歪みなく正視しなければなりません。

経営技術力

経営技術力とは、人々の力を育て、最大限に引き出し、良き方向へドライブする力です。人の持つポテンシャルを引き出したり、アイデアを考えられる余地を与えることが大切になります。そのために教育的な投資をして制度作りをする中で、Yahooの1on1制度が運用されていたり、トヨタの経営理念が練られ社員への浸透が徹底されていたりするわけです。

企業は労働と生産により売上をあげ事業継続性を保ち続けることが求められます。ただ、この文脈から目標を売上だけにしてしまうことは避けるべきです。ここについてはファレンスでも「両利きの経営」と同じ様な概念がいくつかの発表内容で触れられていたことからも、事業継続性を維持しカイゼンし続ける「知の進化」と新規事業開拓のように実験を続ける「知の探索」をいかにバランスよく経営の中でコントロールしていくかが鍵となっていくでしょう。

これらの経営技術はマクロな視点から適用され、それがいかにミクロな現場レベルにも良い影響を与えられるかが問われます。組織体が大きいと当然すべてを均一にコントロールするのは、それがすでに組織文化や哲学として根付いていない限り簡単ではありません。そういう意味でも、権限を移譲しながら自律的に行動できる枠組みを組織内で少しずつ増やしていきながら、横串で一本ビジョンやミッション等の浸透をしていくことが今後求められるのではないでしょうか。

まとめ

これまでの人の力と経営技術力を2軸に組織力のマトリクスを考えてみました。

組織力のマトリクス

このマトリクスを基にした私の考えは、経営技術力が高ければ人の力はあとからでも開花させていくチャンスがあるということです。そもそも、本当の天才でなくても人は良いアイデアを持っており、差異が生まれるのはそれをオープンにできるか実行できるかの環境の有無によっていると感じています。起業やスタートアップ等はそれを独力だったり周りを巻き込みながら進めていく力を有している人だったりが目立ちます。ですがその進めていく力を経営技術力で補うことができれば既存企業からメルカリやLINEが生まれても良かったはずです。

「人の力」のところで野中郁次郎先生の「会社はそこ、ここに起こる会話にある」という名言を引用していますが、結局ものごとはすべて会話から始まります。どうやってその会話を生み出すのか、会話から生み出されたアイデアを埋もれさせずにオープンにするのか、そのアイデアを実行できるようにするのか。これは新規事業やプロダクトだけの話だけではなく、会社の制度やイベントなど何でも同じことだと思います。

新たなアイデアとは既存のモノの延長線上にあったり、既存のモノ同士の掛け合わせで生まれます。そしてそのアイデアが生まれるのは解決すべき「課題」がきっかけになることが多いです。基調講演をされた岩尾俊兵先生の著書『日本"式"経営の逆襲』にある「潜在的な問題解決の連鎖」はまさにこのことで、人の力によるカイゼンの連鎖が起きるよう経営戦略そのものをカイゼンしていくことが、リーンで実現したいことなのではないかと思いました。

おわりに

この記事を書くに至ったのは、取締役常務とのDMでの会話がきっかけです。年度末社内イベントの挨拶のお願いをしたら会話の流れで「カンファレンス如何でした?当社としてとうしていくか。伊藤さんの意見も聞きたいです」と聞いてくださったんです。参加していたことを把握されていたことにも驚きましたが、それ以上に一社員にさらっと聞いてくれちゃうの、プレッシャーに感じる方もいるかもしれませんが私は嬉しかったです(笑)。結果的にこの記事を書きながら自分の考えを整理することができました。これも経営技術力のひとつかもしれませんね。

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Takahiro Ito
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