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「透明感、あるいは透明感」、および透明感

1.透明感

透明感、という単語から連想するなにかについて、我々は恐らくある程度の共通の感触を持っていると信じることから物事を始めたい。そういえば私にとってまずそれが降り掛かってきたのは、『限りなく透明に近いブルー』によってだったと記憶する。15歳か16歳の頃のことだ。

飛行機の音ではなかった。耳の後ろ側を飛んでいた虫の羽音だった。蠅よりも小さな虫は、目の前をしばらく旋回して暗い部屋の隅へと見えなくなった。(村上龍『限りなく透明に近いブルー』)

わからなかった、完璧に。でも普通透明と言われる何物かとは違うもの、「透明になりえないもの」こそが、恐らく透明感の本質なのだろう。自分自身でも何を言っているのか若干不分明だが、多分僕が言いたいことはこういうことだ。

透明であることを伝えるためには、透明であるということを放棄せねばならない。

透明とは何かが透き通っていることで、本当に透明な何物かを、人間は捉えることが出来ない。だから村上龍はそれを薄い薄いブルーで色付けることで、はじめてそれが透き通っていたことを示す。何かが色づいた瞬間、我々は「ああそうか、それはその一瞬前まで、何一つ色づいていなかったのだ!」と気づく。そう、透明感とはだから、喪失感だ!

ここで再び、また言葉がスライドしていく。透明感というマジックワードから、今度は喪失感というエモワードへ。

2.喪失感

喪失感という単語から連想するなにかについて、我々は恐らくある程度の共通の感触を持っていると信じることから物事を始めたい。そういえば私にとってまずそれが降り掛かってきたのは、『風の歌を聴け』によってだったと記憶する。15歳か16歳の頃のことだ。

そしてその時、象は平原に還り僕はより美しい言葉で世界を語り始めるだろう。(村上春樹『風の歌を聴け』)

わからなかった、完璧に。でもなんとなくそれは普通「象」と言われる何物かとは違うもの、「還っていく象」こそが、恐らく喪失感の本質なのだろう。自分自身でも何を言っているのか若干不分明だが、多分僕が言いたいことはこういうことだ。

還る前の象は、ただの象だ。

ただの象と、還った象は違う。それはいわば、飛べない豚とただの豚の違いのようなものだ。村上春樹は、我々に印象的に喪失感の本質を示唆する。それは、失われることの予感だ。その予感なしには、「美しい言葉」はもたらされない。美しい言葉は、喪失感のための長い供物に過ぎない。そう、喪失感とはだから、予感だ!

ここで再び、また言葉がスライドしていく。喪失感といエモワードから、今度は予感というスピリチュアルワードへ。

3.予感

予感という単語から連想するなにかについて、我々は恐らくある程度の共通の感触を持っていると信じることから物事を始めたい。そういえば私にとってまずそれが降り掛かってきたのは、『予告された殺人の記録』によってだったと記憶する。15歳か16歳の頃のことだ。

自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは、司教が船で着くのを待つために、朝、五時半に起きた。(ガブリエル・ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』)

その後私は、これと似た引用を、同じマルケスの『百年の孤独』の冒頭で見ることになる。高校3年生の頃だ。

長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ ブエンディア大佐は、父のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思い出したに違いない。(ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』)

ああっ!と電撃が走った。数年前に読んだものと、そこには同じ感覚。まるで過去と現在と未来とが、この作家の中では同じ場所に存在してすべてが見えてしまっているかのような、そんな濃密な重なりの感覚。予感とはつまり時間への反逆だ。未来を過去に引きずり下ろし、過去を来るべき未来へと投影して、現在はその真中で宙吊りになる。未来を見れば過去の自分が苦しんでいて、過去を見ればそこにはすでに未来の失敗が描かれる。自分自身でも何を言っているのか若干不分明だが、多分僕が言いたいことはこういうことだ。

予感とは、過去と未来の永遠の反響だ。

同じことがほんの少しだけ言葉を変えて繰り返される。時々大きく逸脱することもあれば、まったく同じパターンを再現するときもある。そのデジャブの感覚が強ければ強いほど、予感は強烈に響く確信となって、あなたの現在を支配する。前を見ても、後ろを見ても、そこにはすでに知っている自分がいる。恐ろしいほど透明な時空間の共鳴。そう、予感とはだから、透明感だ!

ここで再び、また言葉がスライドしていく。予感というスピリチュアルワードから、今度は透明感というマジックワードへ。

4.透明感

透明感、という単語から連想するなにかについて、我々は恐らくある程度の共通の感触を持っていると信じることから物事を始めたい。

5.喪失感

喪失感という単語から連想するなにかについて、我々は恐らくある程度の共通の感触を持っていると信じることから物事を始めたい。

6.予感

予感という単語から連想するなにかについて、我々は恐らくある程度の共通の感触を持っていると信じることから物事を始めたい。

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