宇宙の戦士


 ロバート・A・ハインライン著、矢野徹訳「宇宙の戦士」を読みました。坪内祐三×福田和也の対談で「ガンダムの元ネタ」として本書が紹介されていて手に取ったのがもう十年以上前だと思います。そのまま読まずに積読されており、先日、その対談を単行本化したものを読んでいて、同じところにぶつかったので、これは読まねばと使命感に駆られて読みました。

 主人公のジョニーが機動歩兵として、別な星に攻撃に行っているところから始まりますが、この機動歩兵がガンダムで言うところのモビルスーツなのでしょう。共通点があるようなないような、なんとも言えませんが、この設定を発想してしまうは著者はすさまじいです。

 この攻撃シーンは導入で、ジョニーが学生から地球連邦軍に志願するところに戻ります。ジョニーの父親は事業家でお金持ち、ジョニーを後継ぎにしようと考えており、また、軍隊に否定的です。そうしたところで悶着を起こすあたりの人間ドラマもいい感じでした。両親の反対を押し切って、入隊するもジョニーが配属された機動歩兵は軍の中でも最も過酷な部署でした。理不尽な軍のやり方や、母からの手紙で除隊を考えるジョニーと、そこから恩師の知られざる事実や、上官の本音などに触れて思いとどまるジョニー、心の変遷が上手く描かれているように思いました。

 設定としてすさまじいのは、この世界、兵役を終えないと選挙権がもらえないというところでした。著者自身も「全体主義だ」というような批判を受けるなどしたようです。そのあたりは、巻末の解説に、発刊当時の反響みたいなものが書かれていたのですが、非常に極端な反響もありました。しかしながら、本書が発刊されたのは1959年、日本では1967年と私の世代では理解できない時代背景ですから、そうした反響があってもおかしくないのかもしれません。

 最後は正直、「そんな終わり方??」って感じでしたが、読み進めていくにつれて、主人公の背景や、時代設定などが徐々に理解できてきて、その発想力に驚かされました。戦っている相手が、クモのような宇宙人だそうですが、大量のクモが移動している描写などはクモとか昆虫ダメな方には厳しいかもしれません。そうした描写も含めてなのでしょう、先述した対談の福田和也氏曰く「ハインラインはホント、狂ってますよ。」とのことです。しかしながら、そう言われてしまうと、またその狂気に触れてみたいと思ってしまいます。次は「夏への扉」だな。

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