いちばんやさしい量子コンピューターの教本

 湊雄一郎著「いちばんやさしい量子コンピューターの教本」を読みました。著者は東大工学部を卒業し、株式会社隈研吾建築都市設計事務所に勤務後、量子コンピューターのベ¥ベンチャー企業・MDR株式会社を創業された方です。なんかすごい経歴に圧倒されます。何がきっかけで量子コンピューターに興味を持ったのか忘れてしまいましたが、Kindle Unlimitedで頂いて1年以上寝かせてしまいました。

 本書では現在のコンピューターを量子コンピューターと区別するために「従来式」と読んでいます。従来式コンピューターは同じ時間で実行できる計算回数を増やすことで高速化するのですが、理論上限界に近いとのことでした。量子コンピューターは内部で大量のデーターが重なり合った状態を作り出し、それを利用して従来式コンピューターで大量の計算を行うのと同等の計算を一気に行うとのことでした。これだけでは理解が出来ませんが、従来式のコンピューターが何百年、何千年とかかるような計算が量子コンピューターでは現実的にな時間で解けるのだそうです。

 まずは「量子」ですが、量子力学なんて言う言葉を聞いたことがあるくらいで意味は分かっておりません。化学で分子、原子なんていうのを習いましたが、原子や原子を構成する電子、中性子などをひとまとめに「量子」というのだそうです。原子より小さい世界では、我々の目に見える世界とは違った物理法則が働いているとありました。それは、「0であり1でもある」という状況が、量子の世界では成立するということです。一つの量子で「0か1」の二通りを同時に表すことが出来、2つの量子では4通り、4つなら16通りの状態を一度に表せるとのことでした。これでどの程度計算が速くなるのか想像がつきませんが、何百年単位が現実的になるとはまだ思えません。しかし、ずーっと後で、画像解析の話題になり、そこでは「2の2のN乗」の情報が扱えるとありました。Nは量子ビットの数ですが、量子ビットとは量子を見えるかしたもののこと。要は量子の数で良いと思いますので、これが従来型のCPUと同じ32ビットともなれば2の32乗が4294967296になりますから2の4294967296乗の情報を扱えるということになります。これは「べき乗の計算サイト」で計算してみましたが答えは「infinity」、つまり無限大ということでした。ここだけわかると何やらすごいことだということが理解できます。

 十数年前に立花隆がスーパーコンピューターについて「こうした計算が出来るようになったことで『ウイルスを原子レベルでシミュレートすることが可能になる。』ということです。小児麻痺ウイルスは一千万原子で構成されるということで、これをシミュレートしようとすると、1マイクロ秒の動きを追うために5テラマシーンで計算時間が500年かかるのだそうです。しかし10ペタマシーンなら三ヶ月程度で済むので現実的なのだとか。それが実現すると、抗ウイルス薬の開発や新しい免疫療法の発見などが容易になる」なんていうことを何かの雑誌に寄稿していましたが、量子コンピューターならさらに計算時間が短くなるのでしょう。

 他にも色々丁寧に説明してくれており、個別の説明はある程度理解できるのですが、それぞれがつながってこなくて、最終的には「なんかスゲェ」という感想にまとまりました。

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