スルガ銀行かぼちゃの馬車事件

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 大下英治著「スルガ銀行かぼちゃの馬車事件—四四〇億円の借金帳消しを勝ち取った男たち」を読みました。著者は週刊文春の記者を経て作家に転身、政財界や芸能、犯罪等、幅広く執筆されている方です。

 かぼちゃの馬車事件は記憶に新しいところで、私自身はこうした投資関連の詐欺まがいの件については、被害者とされる方には全く同情できずにいました。このブログにも、以前この事件について取り上げており「まったく同情できません。」と書いていました。本書は、被害者を5、6名ピックアップし、事件に至る経緯を書いてくれていますが、やっぱり同情できませんでした。一番違和感があったのは被害者の会のリーダー的役割を担った冨谷が事件に巻き込まれた経緯です。彼は伊能忠敬の子孫だったらしいのですが、このシェアハウス投資の話が来た時に「おれはまだ、伊能忠敬のように何事も成し得ていない。子どもに何もしてあげていない。ご先祖様と比べて、実にふがいない人生だ」と、50歳を節目に投資に踏み切ってしまうのです。いやいやいやいや、伊能忠敬の偉業と、楽して儲かる投資では、それが詐欺でもそうでなくても大きく意味が違うでしょう。そんなに自分の人生を卑下しなくても良いと思います。誰だって仕事をしていれば、間接的でもそれなりに成し遂げるものがあって、周囲の役に立っているはずですし、専業主婦なら仕事をしている夫のサポートになっているし、その逆もあるはずです。「ふがいない人生」なんて、そんなにないはずなんですよね。

 この手のもうけ話なんて言うのは、私が思いついたら、自分のお金でやりますし、人にわざわざ教えません。人から言われれば「じゃぁ、あなたがやれば?」という話ばかりです。あと、質が悪いのが、契約を急がせる姿勢ですね。億単位のお金が動くのに、急かされて契約書もろくに読まずに押印するなんて言うのもあり得ない話でしょう。

 被害者の会の方々はデモや総会屋のような手法でスルガ銀行をターゲットにして戦いますが、こうした手法は左側のそれというイメージが強くちょっとどうかなと思いました。しかしながら、本件に関しては、そうしたことも含めて、それ以上にスルガ銀行が悪いですね。先述した押印を急かすなんて言うのも、相手が銀行だから信用して押してしまうというところが多分にあったのだと思います。急かしただけでなく、融資を受ける側の資産を偽造して水増ししたなんていうこともありましたから最悪ですね。

 こうした案件の被害者がその後どうなったのかというのはあまり気にしたことはありませんでしたが、銀行にターゲットを絞って代物弁済という方法で融資取消に持って行ったのは凄いことだと思います。しかし、サブタイトルの「四四〇億円の借金帳消しを勝ち取った男たち」というのはどうにかならなかったのでしょうか。借金踏み倒して威張っているみたいな印象を受けてしまいます。私だったら「不正融資に正義の鉄槌を下した男たち」とかね。具体的な数字が入っていたほうが売れ行きも良いのかもしれませんね。違和感を持ちつつも、読み物としては面白かったです。そして、自らが引っ掛からないように自戒したいと思います。

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