note表紙_manisha

見えない恋の面影を『マチネの終わりに』

人形を作り、それをつかった写真作品を作っているサイトウタカヒコです。(Portfolio Website:http://saitotakahiko.strikingly.com

毎日新聞・note上で連載している平野啓一郎さんの新作小説『マチネの終わりに』との連動企画に参加しています。先週、自分が照明を担当した舞台の公演がぶじに終わりました。

…少し落ち着いたので、少し前になってしまいますが、『マチネの終わりに』の平野啓一郎さんとブランド経営ストラテジストの坂之上洋子さんの対談イベントに足を運んだことを書こうと思います。

坂之上さんはアメリカでデザインやコンサルタントの仕事を、また一方で留学生の中国系のアメリカ人の方と結婚され、現在はアメリカ・中国・東京を中心に活動されている女性です。かなり大まかな書き方をしていますが、「マチネの終わりに」のヒロインの洋子とも名前だけではない共通点を感じます。

対談では坂之上さん自身の馴れ初めや、海外と日本の夫婦関係のちがいなどを語りつつ、男女の関係が続いていくためには、お互いが理解し合って、受け止めてあげることが大切であるということや、その前にそういう関係をそもそも築ける人と出会うこと、また出会うために相手を見極めることについて語られました。

平野さんはまたそれぞれの男女が越えていく過去の恋愛経験。そしてそこでの過失や後悔、傷あとが教訓となって坂之上さんのいう関係や未来につながっていくのではないかということを語られました。


・・・私は蒔野の過去の恋愛経験がどんなものか前から気になっていました。
(・・・本当は洋子でも早苗でもない第三の女性がちらりと出てくるのでは!などとも思っていた時もありましたが、もうここにきて出てくることはないでしょうね…。)自分の命を捨ててもいいと洋子を全身で愛するようになるまでのそれまでの二、三十年を蒔野はどのような恋愛を経てきたんでしょうか?

国際コンクールで若くして優勝した後の華々しい20代。その後につづく30代では自分の周りにいる身を固めたりする友人や知人がいるであろう中で、蒔野はどんな女性と出会いつつ38四十歳を前にして洋子と出会えたのか…。物語の序盤には「モテるのにこの歳まで独身って人」と茶化される場面もあったり、それから洋子が帰国してしまった後にも早苗が蒔野の部屋で女性の名残を感じるシーンがでてきました。

ひょっとすると、沢山の女性に好かれることはあっても、愛する、愛されるところまでたどり着けなかった過去があったりするのでしょうか。そんなことをコンサートに来れなかった洋子のアパルトメントへ向かう道や早苗の送ったメールの後で洋子と連絡が取れなくなった時に蒔野は思い出したりしたのかもしれません。


・・・こんな風に悶々と考えてしまうのも先へ先へと結末へとページをめくれない連載小説の面白さなのではともう第八章に入っているのに、今更ながらそんなことを感じました。

「日暮れ前に思いつめるマニーシャ」
これは過去につくった作品で、ある恋愛の情景を描いた作品です。
今思えば、なんでこんな情景を作ったのか…とすこし思いますが、
お時間があれば想像してみてくださいませ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?