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「もふ」という猫の話①
埼玉県の奥武蔵にある山、官ノ倉山への登山道への道の途中で「もふ」という猫と出会った。
あとで別の名前もきいたけど忘れてしまった。わりと「もふ」に近かったように思う。
駅から登山道に入るまでに道は、家が点々と並ぶ道を行くことが多い。
官ノ倉山もそうで、わりとのんびりとした道を僕らは歩いていた。
気配に気づいて足を止めると、長毛種の猫が付いてきていた。
猫好きな僕らはその子を「もふ」と名づけてしばらくの間かわいがった。
木の枝なんかで遊ぼうとしても遊ばない、お腹がすいているのだろうか、しきりにすりすり攻撃をしてくる。
あげられるものはなかったし、無責任な餌付けはしたくなかったのでごはんはあげなかった。
そろそろいかなくては、とさよならをしてもなんだかすごく付いてくる。
こういう時、すごく好かれたような気がしてうれしくもなるけど、山の中まで一緒にいくわけにもいかず、振り切るようにして山道をいそいだ。時々振り返りながら、それでももし付いてきてたらうれしいな、なんて無責任に考えたりしながら。
その日の予定をなしにしてあの子を可愛がっててもよかったんじゃないか。そんなことさえ考えたりした。とても愛らしかった。
その後、無事登山を終え、家に帰り着いてもしばしば話題は「もふ」の話になった。
なぜだか毛並みの綺麗さが気になった。
人懐っこさが気になった。
お腹のすいた様子も気になった。
勝手な思い込みだけど、あの子は捨てられてあそこにいたんじゃないだろうか、そんな想像を僕らは完成させていた。
もしそうなら保護してあげたい。
経験も覚悟もないままそんなことを話していた。
それから数日が経っても、やっぱりあの子を連れて帰ったほうがよかったんじゃないかという思いが常に駆け巡るような日々だったので結局僕らはまた「もふ」に会いに行くことにした。
行くと決めたその日に急に決めて、その日に借りられるレンタカーを急いで借りて、車で3時間くらいかけて「もふ」に会いに行った。
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