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さ夜ふけて時をり道の自動車の音が聞こゆる宿場町の家/高橋良

2022年3月1日の「#短歌桜」の3首の1首目。「さくら」の「さ」で始めた短歌。

3首の始まりの一字はすべてひらがなにしたいと思い、ひらがなにしても違和感のない語を置いた。

「小夜」とも書くが、斎藤茂吉の『赤光』「死にたまふ母」の「其の三」の一首「さ夜ふかく母を葬りの火を見ればただ赤くもぞ燃えにけるかも」などにも見られるように、「さ夜」とした。ちなみに、「さ」は接頭語であり、「小夜」は夜と同じ意味だ。

宿場町の家は、妻の祖母の家。そこに住み始めて一週間足らずで作った歌である。前に暮らしたアパートの部屋は2階にあり、道路からは少し距離があった。しかし、夜は車通りの少ない旧道に面した一軒家に移り住み、発見があった。寝室で寝ていると、時折通り過ぎていく自動車の音が聞こえてくるのである。

この地に住む者としては、妻で十一代目となる。山形の羽州街道である。歴史ある場所に住むことができているという喜びと感動が一首を作らせた。


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