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土を焼く 薪窯の話

こんにちは。陶芸家の高橋燎です。
僕は滋賀県の陶芸の里 信楽で制作しています。信楽には薪窯が沢山あるんですよ。

今日は土を焼くこと、つまり窯についてのお話をしようと思います。
陶芸の窯の熱源は電気、ガス、灯油、そして古来からある薪です。僕は滋賀県立陶芸の森にあるイッテコイ窯という薪窯を借りて焼成しています。

イッテコイ窯ってどんな窯なの?って思う人もいるかもしれません。

薪窯もいろいろ種類がありますが、今日お話しするのはこの3つの窯。
1.登り窯
2.穴窯
3.イッテコイ窯
(トレインキルンについてはまた別の機会に!)

それぞれの断面図も描いてみました。
まずは皆さんたぶん見たことがある登り窯から・・・

1.登り窯

これは連房式登り窯

登り窯はとにかく大きい!一度にたくさん焼くことができます。たとえば信楽にある最も大きい登り窯は15連(15部屋)もあります。
下の部屋の熱が上の部屋に上がっていくので熱効率がいいと言われています。とは言え、とても大きい窯なので焼成に大量の薪と多くの人員が必要で、1週間近くの時間が焼成にかかります。

登り窯はまず一番下の部屋にあたる火袋(ひぶくろ)に薪を入れて温度を上げます。火袋の温度が十分上がったら蓋をして、次は一の間(幅が15mくらいある)の両側に二人で立って薪を投げ入れます。側面に空いている15㎝四方ほどの穴から数メートル先まで投げ込みます。僕も年に2回ほど手伝いにいきますが、投げ込むのがめっちゃ難しいです。長年の経験が必要です。一の間の昇温ができたら二の間、三の間と斜面を上がっていって薪を投げ込んでいきます。

信楽では現在、2基の登り窯が現役で稼働しています。

2.穴窯

一般的な穴窯

次に、穴窯について。穴窯の歴史はとても古いです。
穴窯という名前の通り、穴です。

三日三晩かけて焼きます。7日間焼く人もいます。寝ずに一人でやる人もいます。昔の人は山の斜面に穴をくり抜いて窯を作っていたそうです。
今は斜面にレンガを積んで作った窯がメジャーです。

画像の通り薪が燃焼するスペースである火床(ひどこ)が小さいため、温度を上げることが難しい窯です。ですが、穴窯でしかできない表現があるユニークな窯です。薪の灰と土の表面が溶け合って釉薬になります。これを自然釉と呼びます。緋色という発色現象も起きます。

信楽には穴窯をやる人が多くいます。僕もたまに手伝いに行きます。焚き口から作品が近いので薪は投げ込むというより落とす、という感じです。良く燃えてるところ、燃えてないところを見極めて薪を入れるのがなかなか難しい。1300℃の窯の中は赤い宇宙みたいに見えるんですよ。

3.イッテコイ窯

イッテコイ窯

そして最後に、僕が使っている陶芸の森にあるイッテコイ窯についてです。
イッテコイ窯は焚き口の上に煙突があります。つまり火が行って帰って来るので通称イッテコイ窯という名前になりました。灯油併用薪窯とか角窯とか呼ぶこともあります。

焼きの様子はこんな感じ。(YouTube)

特徴その① 火床が広い
穴窯に比べて火床がめちゃくちゃ広いです。火床が大きいということは熱源が大きいということなので昇温の効率が良い窯です。薪も少なくて済みます。

特徴その② 煙突が早く温まる
煙突が焚き口の下にあるので煙突を早く温めることができます。
煙突の温度が上がることで気流が生まれて火床からの熱が窯をめぐりやすくなります。この気流を「煙突の引き」という言葉で表現します。引きがいい、という風に言ったりします。

特徴その③ 窯詰めがやりやすい
他の薪窯よりもコンパクトなサイズのため窯詰めがやりやすいです。登り窯はそもそも大きな火鉢をたくさん焼いたりする窯なのでめっちゃでかいです。ちなみに穴窯は穴なので中腰で窯詰めします。こういった薪窯は何日もかけて窯詰めをするのが一般的です。
(窯詰めの仕方で火の流れを作るので薪窯は窯詰めが要だと僕は考えています。)詰め方を変えて何度も焼いていくと、ここに置けばこの雰囲気になる、なんていうのが分かっていきます。

①~③をまとめると・・・比較的短時間で焼くことができるということです。だいたい焼きは24時間以内で終了します。イッテコイ窯に入る量は少ないですが、その代わり焼きのサイクルをどんどん回すことができます。

特徴その④ 狙いが定めやすい
これは僕の経験上ですが、イッテコイ窯は焼き方のパターンが少ないと思います。イッテコイ窯で穴窯と同じ雰囲気の器が焼けることはありません。あくまで薪窯の雰囲気が得られる窯ということです。しかし、イッテコイ窯は焼き方のパターンが少ない代わりに、外的な要因での影響を受けにくいとも言えます。例えば・・・天候、薪の種類、焼く人のコンディションなどのことです。これは焼き上がりの想定がしやすいというメリットでもあります。

以上で薪窯の話はこんな感じです。今回お話しした薪窯を見てみたい人は、信楽にある陶芸の森で見ることができます。ぜひ行ってみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
ほな!

高橋燎


高橋燎 陶展 「inversion」
2023年12月23日(土)-12月31日(日)
13:00 - 19:00(最終日17:00まで)
会期中は全日営業しています

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